第24話 家を建てる時には業界の闇に注意が必要なんだって③

「他にも気をつけた方がいいことってあるの?」


「そうだな。登記費用かな。」


「登記費用?」


「そう。登記費用だ。司法書士が行う土地や建物の登記費用や、住宅ローンを組んだ時の抵当権設定費用は住宅の取得において避けては通れない。」


「どう気をつけたらいいの?」


「もちろん、地域や手続き内容によって相場がある。ただ、司法書士の報酬というのは基本的に自由設定が可能なんだ。」


「ということは、司法書士によってかなり差があるってこと?」


自由設定が可能ということは、相場なんて関係ないんじゃないの? と感じてしまった。


「そうだな。例えば、Aという司法書士の抵当権設定登記費用が25万円だとすると、Bという司法書士は50万円ということがある。」


「え!?倍も違うの?」


「ああ。なぜ、こんなに差が出るかわかるか?」


「いや、わからないけど。普通なら明らかに高過ぎるから依頼しないよね。」


「紹介料が絡んでいるからだ。」


「紹介料?」


「そう。不動産屋や住宅メーカーの指定や、営業が紹介する司法書士の登記費用はおそろしく高い場合がある。その理由は、単にキックバック用に金額設定されているからということが多い。」


「キックバック・・・相場はあっても自由設定だとしたら、やりたい放題じゃないの?」


「ある不動産屋は自社でしか取り扱いのない土地を売る時に、指定の司法書士で登記してもらう必要があると条件を出すことがある。まあ、それも儲けのひとつだから違法行為というわけじゃない。ただ、客側からすれば、同じ登記手続きなのに金額負担が倍になる。」


「その差って、数十万円だよね?」


「そうだな。安くて数万、高くて数十万円という事例を聞いている。まあ、煩わしいし、どこに頼んでいいかよくわからないものだから、ちゃんと調べずに不動産屋や住宅営業に任せてしまうことが多いからな。ただ、もし数十万円の差額が出るなら家の設備をグレードアップしたり、新しい家具や家電を買う予算になり得るということだ。わかりやすくいえば、そこそこの冷蔵庫やエアコン、ベッドなどを買える。」


「本当だね。家を買ったら欲しいものばかりだし、単体でもそれなりに高い物だよね。そんな風に具体例を出されると、任せっきりにして大損しているとしか思えないよ。」


「皆が皆そうとは言わないけど、相見積はするべきだろうな。司法書士なんかいくらでもいるし。」


「そうなの?」


「まあ、資格取得は簡単じゃないが、探せば結構いる。司法書士会に紹介してもらってもいいし、何十人と司法書士を抱えている大手の事務所ならメールやFAXで見積もりしてくれるしな。」


「なるほど。」


「住宅にしても、同じ程度のメーカーやビルダー同士で似たような間取りや設備で相見積してもらえば、価格差や長所短所なんかがわかりやすい。場合によっては坪単価がはるかに高い大手住宅メーカーが、競合の中堅住宅メーカーに価格を合わせてくるディスカウントなんてこともあり得るしな。」


「マジで?それって、数百万円単位の値引きじゃないの?」


「そうだな。聞いた話では600万円の値引きだったらしい。」


「その人はどうしたの?大手メーカーがそれだけ値引きしてくれるって言ったら、気持ちは揺らぐよね?」


「実際にかなり迷ったらしい。競合の中堅住宅メーカーの営業はお客様が納得するまで何十枚という間取りを作ってくれたらしいし、土地探しの段階から親身になって対応してくれたそうだからな。」


「ああ、そりゃあ悩むよね。」


「結果的には中堅住宅メーカーで契約したそうだがな。」


「そうなの?」


「大手メーカーの方は中堅住宅メーカーの営業が作ったプランをお客様が気に入ってると聞いて、そのまま真似たそうだ。それにまだ未就学児のお子さんに土下座して、『パパとママにここがいいって言ってくれないかなぁ』とか言ったとか。」


「ええ!?プライドないのかな。」


「お客さんもそう思ったらしい。ただ、やはり有名なメーカーだし、設備も仕様もかなり良いからどうしていいかわからなくなったみたいだな。」


「でも、最終的には中堅住宅メーカーで決めたんだよね?」


「ああ。奥さんの方が中堅住宅メーカーの営業に電話して事情を話し、『どうしたらいいと思いますか?』と聞いたそうだ。」


「その中堅住宅メーカーの人は何て返答したの?」


「『大変残念ですが、値引きで勝負できません。○○さんにとって後悔のないように、ご主人とよく話し合って決めてください』と答えたそうだ。ご夫婦はそれまでの対応と、その言葉に誠実さを感じて決断したらしい。何十年と暮らす家だから、ずっとアフターフォローしてくれそうなのはどちらなのかというところが決め手だったみたいだな。」





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