第23話 王都への強制連行


▶▶▶


ユリアの料理が運び込まれ、テーブルにハンバーグやパスタ、サンドイッチなどたくさんの料理が並んだ。


「お待たせ〜!どんどん食べてね〜ん!」


ユリアが足を引きずりながら、ヨタヨタと厨房に戻っていく。


美味しそうな匂いが食欲を誘い、三人は口々に「いただきます!」と言って、食事を始めた。


▶▶▶


食事が進み、オリビアとアキが一息ついた頃。


「二人は一緒に冒険してるんですか?」


ナナが二人に問い掛けると、オリビアは首を横に振って弁解した。


「いえ!アキさんには以前、クベル村で助けて頂いた事があって。たまたまこの街でまたお会いしたんですよ」


オリビアの説明にアキも頷いている。


「そうなんですか!?その話、聞きたいです!」


ナナは座ったまま前かがみになり、興奮した様子でオリビアに詰め寄る。


旅の話が聞きたくて仕方がないようだ。



オリビアは師匠に家から追い出され、冒険者になった事。


初めてのクエストで、ドスプンジャリオと戦った夜の事。


その戦いでの怪我をアキに治療してもらった事を細かく説明すると、ナナは目を輝かせて言った。



「すごーい!オリビアさんが強い事はもう分かっていたけど、アキさんは魔法が使えるんですか!?」


「魔法全部が使える訳ではなくて…。回復魔法だけは子供の時から使えたので、独学で…」


アキがおずおずと答えると、今度はオリビアが目を輝かせた。


「子供が独学で…!?凄いですね…!」


「いえいえ…。本で読んだだけなので、簡単な物しか出来なくて…」


「いやいや、それはもう才能ですよ!」


小さく会釈しながら否定するアキと、褒めちぎるオリビアを見ていたナナは、ふと二人に対して思いついた事を投げ掛けた。


「二人とも、一緒に旅に出てみたら良いんじゃないですか?」


「「…え?」」


驚きのあまり、オリビアとアキの言葉が重なる。



「オリビアさんはものすごく強いし、アキさんが怪我を治せるなら、めっちゃ良いパーティーじゃないですか?もはや、無敵すぎません?永遠に戦い続けられますよ(笑)」


「まぁそうかもですけど、永遠に戦いたくはないですね…!(笑)」


ナナとオリビアが笑い合っていると、


「…あー。それも良いかもな…」


アキの発言で、笑い合っていた二人の時が止まる。


二人の視線が集まっても、いつもなら戸惑ったり萎縮したりするアキが、今この瞬間だけは──


胸を張ったまま前を見ている。


「一緒に行こうかな。オリビアさんと」


「え、それって本当で─」


オリビアが聞き直そうとした瞬間。


急に酒場の扉が荒々しく開き、扉に付いているベルが忙しなく、強く鳴り響いた。


オリビア達も音に驚いて扉の方に振り返ると、店内にシルバーの装甲を付けた騎士が数人入ってきた。


肩には赤い十字の紋章──王都騎士団の証である。



王都騎士団には昨日嫌な思いをしたばかりだったオリビア達は、三人揃って怪訝な表情を浮かべていた。



(王都騎士団が朝から酒場に何の用が…。)


オリビアが考えを巡らせていると、真ん中に立っていた黒髪の若い騎士と思い切り目が合ってしまった。


若い騎士は手元の羊皮紙を確認すると、そのまま他の騎士を引き連れ、オリビアに近付いてきた。


(え…。え?…私なのか?


まさか、昨日の奴が王都に報告した…!?)



「貴方が、冒険者のオリビアさん?」


先程目が合った黒髪の若い騎士が、オリビアに問い掛けてきた。


重々しい騎士達の空気を感じながら、至って冷静にオリビアは「そうです」と頷くと、その若い騎士は羊皮紙を広げて、オリビアに見せた。


「先日、クベル村にて冒険者ランク適正外の魔物を討伐した疑いが掛かっています。よって、オリビアさんの冒険者登録が剥奪はくだつになる可能性がありますので、王都までご同行願えますか?」


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