第22話 お礼に朝食をご一緒に。
▶▶▶
ナナが落ち着くまで待ってから、オリビアが「家は何処か?」と聞くと、なんとナナも同じ宿屋に泊まっているという。
「いつもは転々と近くの街で仕事を探したり、踊り子として依頼が来た時はまた街を移動してお金を稼いでいるんだ。この街に来る時はいつも、ベティさんの宿に泊まっているの」
と、オリビア達に教えてくれた。
「私達も同じ宿です」とナナに説明すると、少し驚いた顔をしていたが、すぐに「そうだよね。ベティさん優しいもんね!」と笑って納得していた。
オリビア達が宿に移動すると夜も深まってきた時間なのにも関わらず、ベティはまだ起きていて温かく迎えてくれた。
「この方は知り合い?」
アキの事を聞かれたのでオリビアは、
「はい。クエスト先で出会った方なんですけど、少し事情があるようで…」
と、アキに聞かれないように小声でベティに説明をした。
ベティは何かを察した様な顔をして頷くと、今度はアキに話し掛けた。
「お金は持ってる?」
「いえ…。今、無くて…」
「分かった。じゃあ、ツケにしておくから。稼げるようになったら、払ってくれればいいから。
「ありがとうございます…すみません」
ベティの言葉にアキは申し訳なさそうに、深々と頭を下げた。
(良かった…とりあえず今日の宿が決まって…)
隣で話を聞いていたオリビアも、内心ホッとしていたのであった。
▶▶▶
翌日の朝。
オリビアが宿屋の階段を降りると、カウンターの前にアキが立っていた。
「お待たせしてすみません。行きましょうか」
「いえ、全然。…行きますか」
オリビア達は宿屋を出て、酒場アマリリスへ向かった。
昨夜別れる時に「是非助けてくれたお礼をしたい」と、ナナから言われていたからだ。
酒場の扉を開けると、
「いらっしゃいませぇ〜!あら、オリビアちゃんとアキくん!どうぞ〜!」
ユリアが店内に招き入れてくれた。
店内は朝のせいか、お客さんの入りがまだ
「ナナさんいるかな…」
オリビアがキョロキョロとしていると、
「オリビアさーん!アキさーん!こっち!」
離れた席に座っていたナナが、笑顔でこちらに向かって手を振っている。
今日のナナは煌びやかな民族衣装ではなく、お腹が少し出るくらいの短さの白い半袖シャツに、民族模様の描かれたロングスカートを履いていて、そのスカートの隙間からサンダルを履いているのが見えた。
あの踊り子の時の衣装も目を引いたが、可愛らしい顔立ちのナナは、どの服装でも道行く人の目を引きそうなくらい似合っている。
オリビアも「あっ!」と手を振り返し、アキは小さく会釈すると二人はナナがいる席に向かって歩いて行った。
「昨日はありがとうございました!何でも食べて下さい!」
「いえいえ!こちらこそ、ありがとうございます!」
お礼を言い合いながら席につく。
「自分、何もしてないのに…。自分も頂いていいんですか?」
おずおずとアキはナナに問い掛けると、ナナは「何言ってるんですか!」と笑って言った。
「一緒に居てくれて、心強かったですよ。アキさんも何でも好きなの食べて下さい!」
「ありがとうございます…!…何食べようかな」
アキの声色が少し嬉しそうに聞こえ、オリビアとナナは顔を見合せてフフッと小さく笑い合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます