第16話 想定外の再会に乾杯を。


▶▶▶


日も暮れてきた夕暮れの刻。


デリカリアの入口の門に到着したオリビアは、スーッと息を吸って深呼吸をした。


(帰ってきた…!)


無事に帰って来れた、という安堵感で胸がいっぱいになったオリビアがまず向かったのは、酒場アマリリスだった。


▶▶▶


「いらっしゃいませ〜!」


酒場の扉を開くと、活気のある甘い声が響いた。


「あら、オリビアちゃん!帰ってきたんだ〜!」


店主のユリアはスカートをひらめかせ、少し足を引きずりながら近付いてきた。


店内は多くの人で賑わっていて、忙しそうだ。


「はい!ついさっきです。あの、ユリアさんにお裾分けなんですが…」


と、オリビアは村から持ち帰った袋をユリアに手渡した。


「討伐したプンジャオの肉なんですけど…」


「え〜!いいのぉ?有難いわ〜!」


袋の中を覗き込んだユリアは嬉しそうに笑った。


「これ早速使ってもいい〜?すぐ用意するからね〜!まだ食べてないよね?」


「はい、まだ食べてないです」


と、答えると、


「適当な席に座って待ってて〜!あ、今日は踊り子のショーがあるから、楽しんでってね〜!」


と、ユリアは手をヒラヒラさせて厨房の方に消えていった。


「踊り子のショーなんて、初めて見るかもしれないなぁ…」


オリビアはワクワクしながら、空いている席についた。


踊り子というのは、音楽に合わせて踊りを舞う職業の事で男性よりも女性がなる事が多いらしい。


若い女性が華美に着飾ったり、透けた生地の服を身にまとって人々を魅了して踊るその姿を、貴族の中には「汚らわしい」と嫌がる人も居るようだが。


オリビアは初めて見るものには好奇心が働くため、すごく楽しみになっていた。


(どんな感じなんだろうなぁ…)


オリビアが頬杖をつきながら想像をしていると、近くに座っていたお客さんの会話が耳に入ってきた。



「楽しみだなぁ!まだ始まらねぇーな!」


「ナナちゃん可愛いんだよなぁー!」


「俺と結婚してほしい…」


三人の男性客が酒を片手に、楽しそうに踊り子の【ナナさん】について彼女のどこが良いか。を、熱く語り合っていた。


(そんなに人気なんだなぁ…)


オリビアはそう思いながら周りを見渡してみると、今日の店内は男性客が多い事に気が付いた。


若い男性から年配の男性まで、年齢幅の広さにオリビアは驚いたが…。


「ん…?」


オリビアは一点を見つめて、動きが止まった。


(あれは…)


一人の若い男性が隅の方のテーブルに腰掛け、食事を取っている。


ベージュ色のトップスに黒いズボン。


軽装備な装いなのに腰元に少し長めの剣を差していて、皿に乗ったパンを少し伏し目がちにかじって食べていた。


甘栗色の短髪。あの風貌は…。


オリビアは反射的に。何も考えずに。


勢い良く席をたち、その男性客がいるテーブルに足早に近付くと、


「…あの!」


テーブルにバッ!と両手をつき、大きな声で声を掛けた。


「あの!貴方は、今朝クベル村に居た旅人の方ではないですか…!?」



オリビアの勢いに驚いた顔をした男も、オリビアの方をパッと見ると「あっ…」と短く声を出して、気付いた様子だった。


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