第14話 報酬は宴の席で。
(私の剣...!)
オリビアは長老から剣を受け取ると、嬉しそうに笑った。
吹き飛ばされた後に探した時には見つからなかったので、無くしたのかと思っていたが...。
「...はい。とても大切な物です。ありがとうございます」
と、深々とオリビアは長老に頭を下げたが、
「こちらこそ。自分の危険を顧みず、村を守る為に戦って下さって...本当にありがとうございました」
長老は微笑んで言った。
▶▶▶
若い男は二人のやり取りを見て、静かに立ち上がると「自分は、これで...」と、小さく会釈をして部屋から出て行ってしまった。
「あっ...」
閉まってしまった扉を、じーっとオリビアは見つめる。
(せめて、名前だけでも聞くんだった...)
「先程の方は、お医者様ですか?」
オリビアは長老に尋ねたが、
「あの方は旅をして居る方で、昨日「この村で休ませてください」と、たまたま私共の村に立ち寄っていただけなのですよ。お医者様だとは仰っていませんでしたよ」
「そうなんですね...」
長老もあまり詳しく知らないようだ。
うーん...と難しそうな顔をしていたんだろうか。
ユミトはオリビアを心配そうに見つめている。
「お姉さん、...どうかしたの?」
「さっきのお兄さんにちゃんとお礼がしたかったんだけど、お名前聞き忘れちゃったなって思って」
「じゃあ、あとで一緒にお兄さんのところ行こ!ユミトが連れてってあげる!」
「本当?ありがとうね」
オリビアがユミトに微笑むと、長老もユミトの頭を撫でて微笑んだ。
「孫のユミトも、大変お世話になりまして...」
「あ、長老さんのお孫さんなんですね」
「そう!ユミトのおばあちゃんなんだよ」
ユミトは笑って言った。
長老はまだまだ会話の続きそうなユミトに、
「オリビアさんと大切なお話をしたいから、むこうのお部屋で待ってて」
と言うと、
「わかった〜!」
パタパタッと小走りで、ユミトは部屋から出ていった。
ちゃんと扉が閉まるのを確認した長老は、オリビアに向き直った。
「オリビアさん。目覚めたばかりで申し訳ありませんが、今回の依頼の報酬についてお話したいのです」
「はい」
オリビアも何となく、姿勢を正して聞く。
「報酬は依頼した時にお聞きになっているかと思いますが、銀貨三枚用意していますのでこちらをお渡しします」
長老は懐から茶色い布の巾着を取り出して、オリビアに目の前に差し出した。
「ありがとうございます」と受け取ったものの、オリビアは考えを巡らせた。
(これを私は受け取っていいんだろうか...
壊れた家屋の再建は...?この村の食料は...?)
オリビアは昨日見た荒れた田畑や村人たち、壊された家屋を思い出す。
銀貨三枚あったら、この村全員の一週間分くらいの食料が買えてしまうんじゃないだろうか...と。
「オリビアさん?」
しばらく考え込んだオリビアは、
「長老さん。...これは私、受け取れません」
と、長老の手に巾着を握らせた。
「これは、村を再建させる資金に使ってください」
「そんな...。宜しいのですか...?」
長老は目に涙を浮かべ、「お優しい方...」と深々と頭を下げた。
「はい。私がそうしたいのです。だから、お金は要りません」
「ありがとう、ございます...」
深々と頭下げた長老の瞳から、ポロッポロッと涙が零れ落ちる。
(…これでいいんだ!)
そうオリビアは強く思った。
この村は家屋の再建もそうだが、荒れた田畑を元に戻し、種をまいてそれが実となるまで長い時間がかかるだろう。
それに村と周囲の森の間には、隔てるような境界がない。
対策を考える問題が、この村には多いんだ。
(あとで柵の提案しないとな...)
と、オリビアは思っていたが、長老は顔を上げて涙を拭いながら言った。
「オリビアさんのお気持ちは大変嬉しいのですが、村を守って頂いたのに無報酬というのは、私達の気持ちも収まりません。何かオリビアさんの欲しい物はありませんか?ご用意しますので」
「欲しい物、ですか...」
オリビアはまたしばらく考えると、ハッと思い付いた様に長老に言った。
「それなら、皆でプンジャオの肉を焼いてご飯を食べたいです!今回の報酬は、それでお願いします!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます