第10話 師の教え



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︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎オリビアがまだ子供だった頃の事。


早朝に師匠と森へ入り、プンジャオと戦う所を実際に見た事がある。


プンジャオと正面から対峙した状態で、アテナは腰に差した剣も抜かずにただ立っていた。


オリビアは木々の影に隠れたままその背中を見ていたが、アテナは後ろを一切振り返らずに呼び掛けた。


「いいか、...オリビア。猪型の魔物の弱点は、まずは...鼻だ。ここは他の皮膚より柔らかい」


突進してくるプンジャオの攻撃を涼しい顔をしてヒラリと避けながら、アテナは説明を続ける。


「次に首の付け根、首の骨をへし折る事。もしくは、目玉。または、正面から見て喉から心臓へ突き刺す事。大抵はこれで倒せる。だけど、まぁ...初心者には難しいかもしれねーな」


と、そう言ってアテナは軽く笑った。


なかなか攻撃を当てられない事にプンジャオは苛立ってきたのか、鼻息をフーッフーッと荒くして、力任せにまた突進してきた。


「難しい時にはー」


と、言葉を言いかけた途中でアテナは剣をそっと抜き、勢い良く体勢を低くして前足を切り付けた。


ギャアアアオオオオオッ!!


プンジャオは悲痛の叫びを上げながら、大きな音を立てて地面に倒れ込んだ。


「ー足を狙え。まずは相手を動けなくする事だ」


アテナは倒れ込んで暴れるプンジャオに近付くと、淡々と喉元から心臓に向かって一気に剣を突き刺した。


刺されたプンジャオは足をピンとさせ、身体をビクビクと痙攣させた後、完全に動かなくなってしまった。


▶▶▶


アテナとの記憶を掘り起こしたのはほんの数秒の事であったが、その間にもボロボロに半壊した家屋からドスプンジャリオが抜け出し、オリビアの匂いを嗅ぎ分けて執拗に探していた。


隠れた家屋の影からドスプンジャリオの様子を伺い、オリビアは額から伝った汗を拭った。


(ドスプンジャリオの位置はここ。で、東はあっちの方向だから...)


と、自分の向かうべき方向を確認したオリビアは、



「...よし!!」


剣を握り直し、家屋の影から飛び出した。


走り出したオリビアを見つけたドスプンジャリオも目を血走らせながら、ひづめで地面を何度か引っ掻くと大きな地響きを立てながら駆け出した。


東に向かって走っていると次第に家屋の数は少なくなってきて、荒らされた畑がある場所に出た。


東の森は、その奥に広がっている。


ドッシン!ドッシン!


迫る足音は、オリビアのすぐ後ろまで迫っていた。


(追い付かれる...!!)


このままでは追い付かれると悟ったオリビアは、意を決して立ち止まり、振り返った。


ドスプンジャリオとの距離は、わずか三メートル...!


(衝突も、覚悟の上...!!!)


剣を構えたオリビアは、迫り来る魔物の鼻を狙って横に大きく剣を振り払った。


ドスプンジャリオの鼻が深く横に裂け、ドス黒い血が吹き出した。


「ギャアアアオオオオオッ!!!」


「っああ!!」


迫り来るドスプンジャリオの巨体を避けきれずに、オリビアは剣を振り払った右手が後ろに吹き飛ばされる程勢い良くとぶつかり、その勢いで五メートル程大きく飛ばされ、地面に叩きつけられた。

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