戦士オリビアの憂鬱 ～魔王を倒せる勇者のいない世界で、お前が倒してこいと師匠に家を追い出されたので、頑張って世界を救ってみせます！～でもまずはワンオペ戦闘は勘弁してくれませんか？～

第8話 想定外の緊急クエスト

(鳴かれる前に全頭討伐は一人ではやっぱり厳しかったか…！)

と、オリビアは思ったが五頭倒すまでに掛かった時間は約10秒。

初クエストにしては、健闘している方である。

「…っはぁ！」

オリビアは声を上げてニ本同時に剣を振り下ろし、鳴き声を上げたプンジャオを倒した。

ズシャッ！！

音を立てて倒れた仲間を見て怒り狂った残りのニ頭は、こちらに向かってまっすぐ突進してきたが、それをオリビアは真上に飛んでヒラリと華麗に躱（かわ）した。

そして、タンッ…と着地した足で地面を一気に踏み込んでプンジャオに距離を詰め、剣を振り抜く。

───ザンッ！ザンッ！

斬撃音が二回、辺りに響き渡り、残りの二頭もそのまま地面に倒れていった。

オリビアは剣を二本勢い良く振って返り血を払い、「ふぅー…」と息を吐きながら腰元の鞘（さや）に納めた。

すると、先程の鳴り響いた鳴き声に驚いたせいだろうか。

村の住人達が松明を持って大人も子供も関係なくゾロゾロと家からでてきた。

「さっきの鳴き声は一体何だ？」

「姉ちゃん、一人でこれ全部倒したのか？大したもんだな…！」

と、村人達はザワザワと騒いでいる。

顔に付いた返り血を腕で強く拭いながら、オリビアは近くに集まってきた村人に言った。

「すみません。鳴く前に倒そうと思ったのですが…。また此処に魔物が現れてしまう前に、皆さんは家の中に隠れてくださ─」

と、オリビアが言いかけている途中で、

「プギャアアアアオオオオオッ！！！」

先程よりも大きな魔物の声が森の中から聞こえてきた。

──ドッシン！ドッシン！

大きな何かが近付いてくる音がする。

地面は大きく揺れ、村人達は身を寄せ合い、戸惑いと恐怖の表情でその場から動く事が出来ない。

──ドックン！！…ドックン！！

オリビアの鼓動がだんだん早くなっていく。

(何か来る...！！)

「皆さん、…早く逃げて！！！」

オリビアはありったけの声で叫びながら、鞘から剣を二本抜いた。

音が響いてくる方向を凝視して剣を構えていると、森の木々の合間から灰色の大きな影が飛び出して来た。

その魔物は辺りに血塗れで倒れている仲間達を見つけると、怒りで目が血走り、フーッ、フーッと息が乱れて、また大きな鳴き声の咆哮をけたたましく響き渡らせた。

月明かりに照らされた大きな魔物は、灰色の毛並みの大きな猪で、二本の長い牙と額に一本の角がある。

大きさはパッと見ただけでも、三メートルを優に超えているようだ。

その魔物の名前は…。

「ドス、プンジャリオ…」

オリビアがそう名前を呟いた所で、ドスプンジャリオは怒りに任せてこちらに向かって突進してくるのだった。