第5話 勝手に受理されたDクエスト


「えぇ!?」


アテナの言葉に驚いたオリビアは、反射的に腕輪を外そうとしたがビクともしない。


本当に腕から抜けないのだ。


戸惑うオリビアを見て、ユリアが可笑しそうにフフッと笑った。


「オリビアちゃん、大丈夫よ〜!そういう仕様なだけだからぁ!何でも、遺体の判別を分かりやすくする為の制度らしいよぉ〜?ほらぁ。その人の体全てが帰ってくるかなんて分からないでしょ〜?」


「ああ、なるほど…」


落ち着いてきた様子のオリビアを見て、


「死んでも取れないものだけど、登録を解除すれば外れるから。私みたいにね」


と、アテナが左手をヒラヒラと揺らして見せた。


(師匠に遊ばれたのか…!!)


「アテナさんも有名な元冒険者ですもんねぇ!?私も初めて話した時は感動しちゃったぁ〜!」


「…そうかい」


興奮しているユリアを横目で見るアテナの表情は、全くもって冷め切っていた。


「…師匠はそんなに有名なんですか?」


「そりゃあ、もう〜!皆知ってるんだからぁ〜!生ける伝説 【剣聖のアテナ】って!」


「剣聖のアテナ、ですか…」


(師匠から昔は冒険者だったとは聞いてはいたけど、そんなに有名な人だったんだ…)


オリビアはチラッとアテナの表情を盗み見たが、表情を変える事はなく飄々ひょうひょうとした感じだ。


時間が経っても興奮の冷めないユリアの話を、


「老人の話はもういいから!」


と、アテナは遮った。


「全く。話が進まねーじゃねぇか」


しかめっ面のアテナは次に、羊皮紙を一枚テーブルの上に置いた。


「ん…?Dクエストって?」


「ああ、受理してきた。オリビア、これから準備してこれに行ってこい」


「え!…今からですか!?」


「ああ、一人でな」

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