第19話 彼は一体誰なんだ…… ※一部第三者視点
「大丈夫か?」
さっきのは夢なのか、それとも現実なのか頭が混乱して考えられない。
ただ、テーブルの上にお金が置いてあるってことは現実だと物語っている。
「あいつを知っているのか?」
勇者があの時に魔王を手にかけたはず。
私もそれの確認を含めて治療していたが、なぜ今頃姿を現したのだろうか。
それにどこかで見ていたかのような発言だった。
実はずっと夢を見させられていたと言われた方がしっくりくる。
町が壊れた様子や怪我をした人がいないのもその証拠だろう。
考えれば考えるほど謎が深まるばかり。
「おい、セレーナ!」
急に衝撃がきたと思ったら、レイヴンが肩を掴んで揺さぶっていた。
考えすぎて、彼の言葉が耳に入っていなかったのだろう。
「大丈夫よ。まずはしっかり営業しましょ」
さっきのことは忘れて残りの時間営業に集中することにした。
ただ、仕事にならず精霊たちが助けてくれなかったら、今頃お客さんに文句ばかり言われていただろう。
「それであの男は誰なんだ?」
営業が終わり毎日の日課であるお茶の準備をしていると、レイヴンはしつこく聞いてきた。
私が魔王のことを話せば、なぜ一般の人間が魔王の存在を知っているかの話になる。
あまり国の行事に参加するような人ではないし、普通であれば接点が見つからない。
レイヴンには魔王討伐隊にいたことを説明していない。
結局、私の中で人殺しに加担していたと思われるのが嫌なんだろう。
「言わないつもりか? それならあいつを殺す――」
「殺す!? なんでそうなるのよ……」
「あいつ絶対にセレーナを連れていく気だったぞ? 俺はセレーナがいなくなったら寝れなくなるからな」
どうしたら簡単に人を殺すという考えに至るのだろうか。
レイヴンにとってそれだけ安眠できることが大事のようだ。
呆れて悩んでいたのもばからしくなってきた。
「あの人はこの国の王ですね」
「王ってあの王か?」
「そうですね。私たちは彼に対して――」
話している途中で、レイヴンは再び胸を抑えて苦しみ出した。
はじめは冗談かと思ったが、苦痛の表情を浮かべている。
「大丈夫ですか?」
「ああ……」
彼には寝れない以外の何かがやっぱりあるのだろうか。
治癒の水属性魔法をかけると、どこか落ち着くがそれでも根本的な治療にはなっていない気がした。
さすがにここで倒れるのは困ると思い、手を止めてレイヴンを部屋に送る。
「もう行くのか?」
「少し片付けに行くだけですよ」
「そうか」
少し苦しそうな顔も戻ってくると聞いて安心したようだ。
その姿を見て、どこかドキッとしてしまう私もどこか調子が悪いのかな。
疲れているから考えすぎてしまうのだろう。
♢
「レヴィンは見つかったか?」
「申し訳ありません。魔王国付近まで追い詰めましたが、途中から消息不明になったままです」
「はぁー、お前らはいつになったら私の邪魔な兵器を処分してくれるんだ? 戦争に出してもあいつは生きて帰ってきたのは忘れたのか?」
玉座に座る男は鎧を着た男に圧を放つ。
ただ、兵器と対面した時に感じた肌にまとわりつく、ピリつき感や息苦しさは全くない。
これが嫉妬にまみれた王と才能に溢れた兵器との違いだろうか。
「申し訳ありません。ただ、致命傷を負わした――」
「ほぉ、それで死ぬまで確認したのか?」
「申し訳――」
「お前は謝るばかりだな。このままではお前の家族も生きてはいられないだろうな」
「それだけはどうにか……妻と息子だけは助けてくれ!」
「ならお前が再び兵器を処分してくるんだな。兵器の右腕……ガレス」
「はぁ!」
男は立ち上がり謁見の間から立ち去っていく。
今度こそ親友であり、ライバルの男を殺しに行くために……。
---------------------
【あとがき】
『ねね、あいつらを驚かそうぜ!』
『またイタズラするとセレちゃんに怒られるよ?』
『☆をあげたらあいつも喜ぶだろ?』
『それもそうだけ……あっ……』
『バレちゃったな』
どうやら精霊たちが☆を集めるために、イタズラをしているようだ。
ぜひ、☆を集めるお手伝いをしてあげよう。
次の更新予定
毎日 07:03 予定は変更される可能性があります
妹に全てを奪われた裏切り者の悪役聖女はひっそりとカフェ経営をする〜償いのために治療した兵器が溺愛してきます〜 k-ing@二作品書籍化 @k-ing
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。妹に全てを奪われた裏切り者の悪役聖女はひっそりとカフェ経営をする〜償いのために治療した兵器が溺愛してきます〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます