第4話 かざま小学校校長の正体


――千葉県船橋市。かざま小学校。

――応接室。




「暗黒MENが、うちに何の用ですか?」


かざま小学校校長の『風間』は、学年主任の『田中』と、薫君の担任『小泉』、そしてなぜか体育教師の『鈴木』と国語教師の『山田』を側に置き、立派な座椅子にふんぞり返って迷惑そうにした。


暗黒ブルーは、この対応にいち早くこの学校の『体質』を見極めた。


(数で対抗しているのが見え見えだ。この調子では、いじめ被害を訴えても揉み消されるのがオチだろう。まともな学校ではないな)


暗黒ブルーは、暗黒ブラックにアイコンタクトして『自分に任せて欲しい』と訴えた。

暗黒ブラックもこれに気付き、暗黒ブルーに舵を取らせる。


「風間校長、単刀直入にお伺いしますが、この生徒『山岡薫』君がいじめに遭っていることをご存知ですか?」


学校側は『いじめ』というキーワードに敏感に反応し、真っ向から否定した。


「うちでいじめ問題などあるはずがありません。いつ、誰がそんな事を言ったのですか?」


暗黒ブルーは、暗黒レインボーに目配せすると、暗黒レインボーは異空間からファイルを取り出した。


「これが全容です。ここには、何年何月何日、誰が、誰に、どのような事をしたのか全て記載されています」


ファイルを手渡す暗黒ブルーは、その直後、全身から青黒いオーラを吹き出し、フルフェイスマスク越しでもわかる凶悪な表情で呟いた。


「お前らが問題を揉み消してるのもお察しだ。発言には注意しろよ? うっかりマスコミに全部話しちゃうぜ?」


風間は、無言でファイルの内容を読み込み、数秒黙ってからファイルをテーブルに置いた。


「ハア、暗黒MENはこんな捏造をする組織なのですか? ここに書かれているのは何の証拠もない、いわば言いがかりですな」


この発言に、薫君は胸が苦しくなった。


思わず顔をしかめた少年の様子に、暗黒MENは静かに激怒した。


最初に立ち上がったのは暗黒ブラウン。


彼女はズンズンと風間に近づくと、奴の顔面を物凄い勢いで殴った。


バゴーーーーン!


「ぶはあ!」


風間は突然の出来事に無防備で鉄拳をまともに喰らい、座椅子ごと後ろにひっくり返った。


「な!? なにをする!?」

「あ? 何もしてねーよ。なんかした証拠でもあんのかよ?」


まるでヤンキーみたいな口調で風間を睨む暗黒ブラウンは、ドガッとソファの元の位置に腰掛けた。


「さーて、私も何の証拠もないことしちゃおっかなあ」


暗黒パープルが立ち上がると、暗黒レインボーがそれを制止した。


「お待ちくださいパープル。証拠が揃いました」


それを聞いた学校側は、顔を見合わせて「そんなはずはない」という表情を浮かべた。


(刃物などは使うなと言ってある。山岡の長男を苦しめろと指示したのも、盗聴などの恐れのない私の息が掛かった店。バレるはずがない)


暗黒レインボーは、空中にモニターを映し出し、風間と、ある男性との密会現場を表示した。


「この男性は国枝辰雄。指定暴力団『国枝組』の組長です。風間校長とは仲が良く、先日も2000万円の寄付があったそうですね。その見返りは……なんだったか覚えていらっしゃいますか?」


風間は黙った。全てを見透かされている。そう感じたのだ。


「覚えていらっしゃらないようですね。山岡家は地主です。薫君の自宅は『かざま幼稚園』の建設計画地に入っているそうですね」


そこまでは知らなかった学年主任達は、揃って風間の表情から、全て真実であると確信してしまった。


「山岡家を潰す。これが貴方の計画です。薫君のご両親も酷い目に遭っているそうですね。一家全滅させる心境はどのような心地ですか? 私はアンドロイドなので人の感情がわかりません。ですが、この胸が張り裂けそうな『熱』が、今にも爆発しそうなのはわかります」


薫君は、自分が酷い目に遭っていたのが、学校関係者を取り巻く陰謀だった事を初めて知った。


「フッ、フッフッフ」


床に倒れ込んでいた風間校長が、邪悪な笑みを浮かべて立ち上がった。


「暗黒MENか。たかが元ニンゲンが調子に乗りおって。本物の異星人がどれだけ強いか見せてやるわ!」


すると、応接室は異次元空間と化し、風間校長の腕から飛び出した複数の暗黒寄生虫が、次々と学年主任達の体内に入っていった。


「もが! ぐごごごご!」

「いや! 来ないで! むぐ! おええ!」


彼らは自我を失い、風間校長の思念により暗黒MENに敵対した。


風間校長は肌が紫色に変色し、頭からは角が生え、まるで悪魔のような見た目に変化した。


「とうとう正体を現したな! 暗黒惑星『ダークサイド・ジ・アース』の暗黒星人め! 名を名乗れ!」

「フハハハ! 私はダークサイド・ジ・アースの四天王! ノリスケだ!」


この名乗りに、暗黒ブラックは思わず吹き出した。


「ブフッ! ノ、ノリスケだと!? テメーはカ〇オのおじさんかっ!」

「隊長! あれは歳は離れていますが従兄です!」

「プーーー! ノリスケだって! イ〇ラちゃんのパパじゃん!」


暗黒ブラウンも笑い出し、明らかに馬鹿にされたことがわかったノリスケは激昂した。


「うおおお! ノリスケを馬鹿にするなー!」


ノリスケは物凄い勢いで暗黒ブラックに突進した。これを皮切りにノリスケの手下と化した学年主任たちが、それぞれの暗黒MENに襲いかかる。


しかし、手下達は暗黒MENの強さには敵わず、次々と無力化されていった。




暗黒ブルーは異空間から『ジェノサイドブレード』を取り出し、学年主任に宿る暗黒寄生虫のみを切り裂いた。


ズバーーーン!


暗黒パープルは『ダークネススタッフ』をかざし、体育教師の暗黒寄生虫を蒸発させた。


ジョワーーー!


暗黒ブラウンは『ブラックガントレット』を装備し、自慢の体術で国語教師の腹を殴ると、口から飛び出した暗黒寄生虫を握りつぶした。


グチャッ!


暗黒レインボーは『マジョーラシールド』により摩訶不思議な光線を薫君の担任に照射し、暗黒寄生虫を焼き殺した。


シュボボボ!




その間、暗黒ブラックとノリスケの熾烈な肉弾戦が繰り広げられ、周囲には衝撃波が拡散していた。


ズガーーーン!

ドゴーーーン!


「ぬう! 元ニンゲンごときが生意気な! これでも食らえ!」


ノリスケが距離を取ると、ノリスケの背後に5つのビットが出現し、それぞれからビームが放出された。


暗黒ブラックは冷静だった。


異空間から『フルダークリボルバーMark.X』を取り出すと、ノリスケのビームを打ち消すダークマタービームを撃ち出した。


「くっ! なんだそれは!」

「これは俺の最新武器だ。この銃に撃ち抜けないものなどない。死ね」


暗黒ブラックはそう言い放つと、ノリスケの頭部に狙いを定め、ビームを放った。


ズキューーーン!


「ぐわあああああ!」


ノリスケは頭部を撃たれただけのはずなのに全身が爆発四散し、塵となった。


応接室は通常の空間に戻り、学年主任達は気を失って倒れていた。


「ふう、まさか風間校長がダークサイド・ジ・アースの暗黒星人だったとは」

「私の調査でも、そこまではわかりませんでした。申し訳ありません」

「いいんだレインボー、気にするな」


それは、今後の戦闘において、さらなる暗黒星人と敵対する可能性があることを示していた。


こののち、暗黒MENはダークサイド・ジ・アースの帝王『カマエラ』とあいまみえるのだが、それはまた別のお話。




第一章 ダークヒーロー、見参





次回、第二章 暗黒星人の野望




つづく


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暗黒MEN あんぽんタソ @anpontaso

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