第3話 いじめっ子に暗黒チョーーップ!
我らは暗黒MEN!
今日も地球の暗黒を駆逐するため、ダークネス・ファイナルアローを整備している。
「隊長。地球からのメッセージが届きました。作戦室へお願いします」
「了解だ! このボルトを締めたらすぐに行く!」
――作戦室。
「あの……これホントに暗黒MENに繋がってるのかな……」
モニターには、気弱そうな少年が『ダークサイドヒーローズ』のウェブサイトにアクセスし、メッセージを録音している様子が映った。
「ふむ。おどおどしているな」
「隊長、この少年はそういう性格なのです。個性ですから、それは尊重すべきですよ」
そう言う暗黒ブルーにも、似たような時期があった。暗黒ブルーは、かつて人間だった頃、同級生にいじめられていた過去があるのだ。
「あの……僕、いま学校でいじめられてて……何でこうなったんだろう。う、うう」
上手く状況を伝えられない少年に、暗黒ブラックは気長に確信的なメッセージが伝えられることを待ち望んだ。
「大丈夫だ。焦ることはない。さあ、話してくれ」
動画は、録画録音されたメッセージだったが、暗黒MENは優しく少年を見守る。
「もう自分が死ぬか……相手を殺すか……どちらかしかないんです。とても人を殺すことなんてできない……うぅ、こわい。つらい。いっそ消えてしまいたい」
とうとう暗黒ブラックが可哀想すぎて涙を流し始める。
「くっ! 緊急出勤だ! 今すぐこの少年を保護する!」
「隊長、少年が学校の屋上に登り始めました」
「!!! 総員走れーーー!」
暗黒レインボーが少年の監視映像を映し出すと、暗黒MENは全速力でダークネス・ファイナルアローに乗り込み、暗黒ブラックは躊躇なく最終兵器の暗黒レインボーに指示した。
「レインボー! 全速力だ! 機体は壊れてもいい! 1秒でも早く現地へ!」
「了解。最高出力。総員、高温に備えてください」
ダークネス・ファイナルアローは、その後部の推進装置を全力で稼働し、機体後部からは激しい熱が放出された。
シュゴオオオオオオオオ!
「ぬうううう!」
「くっ!」
「少年が屋上に到着。フェンスを登っています」
「うぐぐ! 絶対に間に合わせろ!」
ダークネス・ファイナルアローは、大気圏を1秒で通過し、その機体の3割を消失しながら千葉県船橋市の上空をとんでもないスピードで降下する。
すると、暗黒ブラックが雄叫びを上げ、コクピットのハッチを吹き飛ばし、少年に向かって飛び出した。
少年は流れるような動きで、何の躊躇もなくフェンスを乗り越えると、虚ろな目と力のない表情で崖っぷちに立った。
そこには何の感情もなく、最後の一歩を踏み出す。
「うおおおおああああ! させるかああああ!」
ズドオオオオオン!
少年が風に乗った時、黒い影が猛スピードで少年の体を受け止め、校庭のグラウンドに巨大なクレーターを作った。
その先の森には、ダークネス・ファイナルアローの残骸と、隊員達がふらふらになりながら着陸していた。
「はあ! はあ! はあ! 少年! しっかりしろ!」
暗黒ブラックは少年の体に衝撃を与えないよう、しっかりと抱きしめた。少年は何が起こったのかもわからず、虚ろな目で暗黒ブラックを見つめた。
「……暗黒MEN……?」
「そうだ! よく耐えたな! もう大丈夫だ!」
『耐えた』『大丈夫』この言葉を聞いた時、少年は顔をくしゃくしゃにして大泣きした。
「うわあああああ! もうダメだと思ったあああ! あああああん! ごめんなさい! ごめんなさい!」
暗黒ブラックは、少年を強く抱きしめた。
「いいんだ。お前は悪くない。悪くないんだ」
――6年3組。教室。
「わあ! 暗黒MENだ!」
「暗黒MEーーーN!」
「キャー! サインしてー!」
教室には、小柄な少年『山岡薫』を抱きかかえ、暗黒ブラックが先頭に立ち、ぞろぞろと暗黒MENが入って行った。
学校側は、暗黒MENの対応に慎重で、担任の『小泉』が彼らの訪問に応対した。
「どういったご用件でしょうか?」
「ああ、これから薫君にイタズラしていた加害者達を成敗する」
これを聞いた担任と生徒達は、一斉に押し黙った。それは、『いじめ』があったことを認めたも同然であり、特に3人の生徒達が下を向いて目を逸らしたことを、暗黒ブルーは見逃さなかった。
「そこの君。それから君と、そっちの君。ちょっと来なさい」
「わ、私も同席します!」
「いや、担任の先生はいいです。彼らから直接話を聞きますので」
小泉担任は気の弱そうな女性で、暗黒ブルーの拒否に何も反論できなかった。
午後の授業が始まった頃、薫と3人の生徒は音楽室に連れ出され、事情聴取が始まった。
3人の生徒に自己紹介をお願いすると、3人ともおどおどしながら、名前を名乗った。
この時点で、暗黒レインボーの証拠集めは終わっており、リーダー格が誰で何をしたのか、具体的な『いじめ』の実態を把握済みである。
『国枝春樹』
リーダー。自分では直接手を出さない。具体的な『攻撃』の手段を指示し、薫君から金品を巻き上げるカツアゲもしていた。ちなみにデブ。
『住田信彦』
空手で体を鍛えており、薫君に殴る蹴るの暴行を加えた。頭が悪く、国枝の口車に乗せられ、都合のいい暴力マシーンと化している。
『加賀山杏奈』
陰湿な工作が得意で、靴を隠す、椅子に工作用のノリを塗りたくる、ランドセルをボロボロにする等、薫君の精神にダメージを与えた。
「国枝君、君がリーダーだね?」
「…………何もしてない」
この発言に、薫君は何も言えなかった。ここで『こいつが犯人だ』と言えるなら、ここまで追い詰められてなどいない。
ここで国枝達3人の前に仁王立ちしたのが暗黒ブルーだった。
彼は優しい口調でこう告げる。
「本当のこと、言わないと、目を抉り出すぞ? 片方でも抉ってやれば、本当のこと、言うかな。それとも、両方とってやんないと、本当のこと、言えないかな。誰からやる?」
ドガッ!
暗黒ブルーは、1番体格が良く、頭が悪そうな住田の首を鷲掴みにして、椅子から引き摺り下ろし、床に叩きつけた。
「ひっ! 俺は! 国ちゃんの言う事聞いただけだよ! 山岡の奴、勉強してないくせに良い点取ってるって! きっと贔屓されてるんだって!」
「ふーん、それで? 何したの?」
「…………何もしてない」
「ほう、片目、いらないの?」
暗黒ブルーが住田の左目に指を近付けると、住田は恐怖のあまりウ〇コを漏らして嘔吐した。
「ぐおええええ!」
すると、吐瀉物に続き暗黒寄生虫が口から飛び出し、それに呼応するように、国枝と加賀山の口からも暗黒寄生虫が這い出てきた。
「ブルー! そっちの1匹をやれ! もう1匹はパープル!」
暗黒ブラックは国枝から這い出た暗黒寄生虫に狙いを定め、飛び掛かった。
「暗黒チョーーーップ!」
ビターーーーーン!
暗黒ブルーと暗黒パープルも、暗黒寄生虫を逃す事なく退治し、音楽室は静寂に包まれた。
「うえええええん! 俺、お父さんに山岡君をいじめろって命令されて! うわあああああん!」
暗黒ブラックは、彼らから事情を聞き、この問題は根が深いと確信した。
つづく
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