第2話

「ピーポーパーポー……。」

「ウーウーウーウー……。」


救急車の音、パトカーの音が暗い街に響き渡る。

僕は死にたかった。

誰も傷つけることなく、独りで。

誰も傷つけないことが前提だった。

見知らぬ誰かに迷惑を掛けたくなかった。

もう、この世に心残りを遺したくなかった。

でも、それは叶わなかった。

僕のせいで君が怪我をしてしまった。

傷ついてしまった。

僕のせいで。僕のせいで。

――あぁ、悔しい。

申し訳ない。

僕が死にたいと思わなければ。

ここでの自殺を図らなければ。

今日、しようとしていなければ。

君が怪我をしてしまったなら、僕は死ねない。

本気で、君に尽くさなければ。

君のために、僕は生きよう。

だって、君は自分の身を張って僕の計画を阻害した――救世主すくいのてだから。


その後、僕は警察に事情聴取された。

嘘を言ったってしょうがない。

全てありのままのことを話した。

僕は、すぐに解放された。

――やっぱり、僕なんていらないんだよなぁ。

必要とされたことも、愛されたこともない。

ただの1回も。

――いや、違う。

たった一人には愛されて

僕の憧れの人。

光をくれた人。

大切に思って、大事にしたかった人。

何よりも、守りたかった人。

――僕の姉、朝宮あさみや 光葵みつきに。

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