夜の炎
あげあげぱん
第1話
昔、よく祖母の家に泊まりに行きました。山の中の静かなところで、なかなか過ごしやすかったのを覚えています。ただ、子供の頃の僕には、少々退屈な場所でもありましたね。
夏の、暑い夜でした。僕はなかなか眠れずに、扇風機の風を浴びながら、窓の外に見える遠くの景色を眺めていました。そうすると闇の中に明るく灯るものが見つかって、僕はその揺らめく明かりに興味を持ったんです。あれはなにかな? そんな風に考えながら明かりを眺めていました。
それが炎の揺めきだということは、すぐに分かりました。誰かがなにかを燃やしています。こんな夜中に、誰が何を燃やしているんだろう? 不思議でした。山のキャンプ場とは別方向でしたし、だいぶ遅い時間です。焚き火でしょうか? ゴミでも燃やしていたのでしょうか? 僕が子供の頃は、学校なんかでもゴミを焼却することは珍しくはありませんでした。
不思議だなあ。なんだろなあ。そう思いながら、夜の炎を眺めていました。
いつの間にか僕は寝てしまって、気づくと朝になっていました。窓から見ると、炎が揺らめいていた辺りに人が集まっているのが見えました。パトカーもやって来ていたと思います。それを見て、僕は何か不吉なものを感じました。
お昼にはニュースで、何があったか分かりました。ある人が焼身自殺をしたのです。僕が不思議だと感じながら見ていたものは人が燃える姿でした。現実感がなくて、そうなんだって思いつつも、人が死んだことが頭の中で結び付きませんでした。
幼い頃の夏の記憶です。
夜の炎 あげあげぱん @ageage2023
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