「8時だョ!全員転生」⑤

 キミは「オデッセイ号」に乗り込み、魔王城へ続く大海原の航海が始まった。


 南周りの航路上、煌めく波間には鳥のように水面ギリギリを滑空する魚。それに並行して妖精が、ピンク色の鱗粉を波飛沫みたいに弾けさせ飛び回る。

 転生前の妖精は、どちらかと言うとインドア派っぽかったので、そうやってはしゃぐ姿は意外な一面を見るようで、良い。とキミは思う。


「気持ち良かったー!」


 甲板に戻って来た妖精は満面の笑みだ。


「キミも来たら良かったのに」

「いや、飛べませんからね?」

「えー勇者だしイケるんじゃない?」


 そう言いながら、セーラー服のスカートを持ち上げ海水を絞る妖精。

 キミは目のやり場に困って、誤魔化す様にステータス画面を開いた。


 STR ─ C

 INT  ─ C

 VIT  ─ C

 AGI  ─ C


「んー、だめだコリャ」

「ふふっ、でも見て見て」


 妖精がキミのステータス画面を操作すると、スキル一覧が表示される。


 スキル ─ チート


「説明が雑ですね」

「あはっ、チートだけよ♪」


 キミと妖精がそんな風に談笑していると、神妙な面持ちの乗組員が近づき、声をかけて来た。


 

 乗組員の説明では、少し先の海域に「セイレーン」という怪物が現れるらしい。

 羽根の生えた鳥の体に、女の顔を持つその怪物の歌声を聞くと、意識を操られる。ふらふらと誘われるように自ら怪物に近づき捕食されるそうだ。


「羽根の生えた、女の顔?」

「どうして、わたしの方を見るのかしら?」


 ジト目の妖精をよそに、キミは「セイレーン」の歌声対策に、あるものを用意しようと思う。

 キミが乗組員に用意を頼んだのは······


A.耳に詰めて歌を防ぐ毛の束。

https://kakuyomu.jp/works/16818093083469966727/episodes/16818093084254605653


B.頭から被って歌を防ぐタライ。

https://kakuyomu.jp/works/16818093083469966727/episodes/16818093084254640800

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