「8時だョ!全員転生」④

 キミは「タイタニック号」に乗り込み、魔王城へ続く大海原の航海が始まった。


 キミと妖精は、見渡す限りの水平線を甲板で眺める。夕陽が丁度水平線に飲み込まれ、波が赤く染まるところだった。


「きれい······」


 キミの肩に止まった妖精がため息混じりで言うと、ピンク色の鱗粉が頬を擽った。良い、とキミは思う。


「ねえねえ! アレやろうよ!」

「アレとは?」

「ほら、後ろ後ろ」


 そう言って、妖精がキミの前で羽根の生えた背を向け、両手を水平線に上げた。

 キミはとある映画を思い出し、頭の中ではそのテーマソングが流れ出した。えんだーいやー?

 

 キミは妖精の広げた両腕の下に手を入れようとして悩んでしまった。

 このまま触ってもいいのだろうか? いや、そもそも妖精の体は小さすぎてタイタニックできないのでは?

 悩んだまま動けないでいると、そんなキミたちの様子を覗いていた水兵が、目の前に迫った「それ」を見つけて慌てて鐘を鳴らす音が聞こえる。


 「それ」はとてつもない大きさの流氷だった。

 船は大きく舵をとるが間に合わない。

 タイタニック号が流氷にぶつかった衝撃で、キミは海に投げ出された。


 海水はとても冷たく、あっという間にキミの体力を奪う。


 キミが薄れ行く意識の中で最後に見たのは、沈み行くタイタニック号と、海上を不安気に飛び回るピンク色に輝く光だった。

https://kakuyomu.jp/works/16818093083469966727/episodes/16818093084248433088

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