5月でした。

5月

『前世が漆だとか言う工芸部の後輩がグイグイ来るが、職人たるもの顔色ひとつ変えない。』

『異世界でおじいさんの古箪笥だったわたしは、空き巣勇者が盗んだ物を探してる。』



「じゃあ、ふふっ、月ごとに見てこうか。細かく解説するとネタバレの事もあるからふふっ、うまく書けたかどうかに絞って」

「はい。あと時々笑い声入るのはタイトルのせいですか?」

「ふふっ、わたしは嫌いじゃないよ?」


 さて、初小説で処女作の『前世が漆だとか言う工芸部の後輩がグイグイ来るが、職人たるもの顔色ひとつ変えない。』を投稿し始めたのが5月、とは言うけれど27日。

 伝統的工芸をテーマにしたラブコメである。本職絡みの説明などはスラスラ書けた気がするが、そこはやはり初小説。毎日ウンウン言いながら書いた記憶がある。


「完結させる事と、毎日更新する事だけで手一杯って感じでしたね」

「ふうん。全55話の中でうまく書けたな、ってのはある?」

「これ、かな」


『第12話 可愛いカップルさん』

https://kakuyomu.jp/works/16818093078105917804/episodes/16818093078552736886


 ふむふむ、と部長が『前世が漆だとか言う工芸部の後輩がグイグイ来るが、職人たるもの顔色ひとつ変えない。』12話を開いたスマホを覗き込む。タイトルが長いと文字数が稼げて、良い。


「空気感が他と違う、かな?」


 さすがイマジナリー部長、自分では言いにくい事をさらっと代わりに言ってくれる。

 好きになってしまいそうだ、などと見惚れていると、眼鏡の奥で片眉を上げた部長に解説を促された。


 この回は、あまり肩肘張らずに書けたな、と思う。第2章が始まってすぐだったので、ストーリーとは直接関係ないラブ回にしようと思い、工芸の説明やものづくりへの想い、みたいのを抜く事ができてシンプルな構成にできたのかも。


「なんとなく描写みたいなのも出てきてるね」


 そうそう、夏休みの降って湧いた時間を、雰囲気いい場所で、気になる子と他愛もなく過ごす。こんな感じが書きたかったのだ。

 場所は実在する、ケヤキ並木がいい感じの大通り。地下鉄を降りて地上に出ると、もう通りの入口で、途中には雑貨屋さんやギャラリーなどが立ち並ぶ。ずっと先、通りの出口にはかき氷屋さんがあったはずだ。

 そこを特に流れは決めず、主人公達に歩かせる。書きながら一緒に歩いてる感じで、見えた物を素直に文章に起こす。

 一緒に歩くヒロインの後輩は「せんぱい、せんぱい♪」と事あるごとに振り返り、それはそれはめんこい。

 「先輩」より「せんぱい」の方がちょっと舌足らずな感じがして、すごく良い。

 特に「ぱ」のところ。

 声帯から発する音とは別に、少し湿り気のある上唇と下唇が、瞬間合わさり離れる時の小気味よい破裂音。良い。


「なるほど。キミは実は、先輩より後輩の方が好きなのかな?」

「そこじゃないですね。いい感じに書けたのは、舞台がそもそもいい感じだったって事でしょうか」

「良い印象の実在する場所だから、映像がよく見えたのかも。あと良い印象の可愛い後輩も一緒だったし?」


 部長は割と根に持つタイプのようである。

 そうこうしていたら『異世界でおじいさんの古箪笥だったわたしは、空き巣勇者が盗んだ物を探してる。』の前で文字数が収まったので次回に回そう。

 実はこっちの方が肝だったりするのだ。

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