続、5月でした。

 前回までのあらすじ。

 再びいい感じの小説が書けるように奮闘するぬりやと部長。ふたりの距離感もいい感じに。ところが、突然現れた前世が漆だとか言う後輩にぬりやの心が揺れる。どうする部長、どうなるイマジナリー文芸部。


「ノリだけでそういうの、やめた方が良いと部長さんは思います」


 

 さて、5月のもう一本、『異世界でおじいさんの古箪笥だったわたしは、空き巣勇者が盗んだ物を探してる。』これも割とスラスラ書けた。


 連載のラブコメは明るい雰囲気。

 あまり暗くならないように。

 それに少し疲れていた。


 なので思うまま、丁寧に書いた。


 テンプレは気にしない。

 箪笥に対し思い入れも深い。

 淡々とした語りは書きやすかった。


 タイポグラフィまではいかないけど、のような文字の配置みたいなのも意識してみたり。事実が徐々に収束して行き、真ん中の一文を境に今度は思いが拡大して行く、みたいな。みたいな。


「キミ自身は文字の大きさ『小』にしてるからそう見えるけど······」

「ええ、ええ。でも傍点の所、最初『上記』って書いたんですよ。縦読みの時『上記』もないかなっと思って書き直したくらいには成長してるかと」

「まあ、そういう事にしておこうかな」


 『異世界でおじいさんの古箪笥だったわたしは、空き巣勇者が盗んだ物を探してる。』を書いた後は、ひたすら『前世が漆だとか言う工芸部の後輩がグイグイ来るが、職人たるもの顔色ひとつ変えない。』の連載を続けた6月。


 そして7月に入りすぐ大きな転換期が訪れる。


 某賞付き自主企画異世界でおじいさんの古箪笥だったわたしは、空き巣勇者が盗んだ物を探してる。』を応募させて頂いたのだ。


「ねえねえ、企画内容に『異世界ファンタジー苦手』って書いてあるよ?」

「ええ」

「キミの性格が垣間見れるよね」


 あまり経緯など書くと趣旨から外れるので、ここで頂いた丁寧なコメントと、綺羅星のような作品群との出会いが、小説にのめり込むきっかけとなった事をお伝えします。



「5月はこんなところですね」

「なるほど。じゃあ、次回はここまでを踏まえて課外活動にします」

「課外活動?」

「そうそ。『可愛いカップルさん』のケヤキ並木にわたしと出かけて、それで一本書いてみて?」


 そう言うと部長はそそくさ、机の上のノートやスマホをしまう。それを黙って見ていると、部長は肩から前に出した髪を、白い指にくるくる巻きつけ落ち着かない。


「キ、キミのリハビリのためだよ。別に、後輩ちゃんがずるいとか、そういうんじゃないからっ」


 これはさすが、と唸るしかない。

 回想禄に傾きつつある流れを戻しつつの恋愛展開。しかも、ツンデレを挟んでくるあたり、さすが文芸部の部長だ。


「3ヶ月前からどのくらい成長したか楽しみだね」


 部長は眼鏡越し、三日月みたいな目をして笑った。

 

 ちなみに、第1話「入部しました。」の冒頭、「部長の私服姿はいつか見られると良い。」を回収する事が出来そうなのは偶然だけど、すごく良い。

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