第56話 時には手を止めることも必要である

健一はため息をつき、匙を投げている様子だった。その姿を見たゴルフが近づき、「ダメそう?」と尋ねる。健一はゆっくりと首を縦に振り、答えた。


宇宙空間での魔法の使用が不可能になったこと、そして太陽フレアの残滓が原因であるという研究結果は彼の予想を裏切るものではなかったが、それでも対策を見出すことは難しかった。何度も試行錯誤を繰り返し、あらゆる方法を試みたが、いずれも失敗に終わった。太陽フレアの残滓によって魔力が焼き切られる現象を防ぐ手立ては、現時点では見つかっていない。


「やっぱり、宇宙で魔法を使うのは無理だな」と健一は嘆いた。ゴルフはそれを聞いてしばらく考え込んだ後、「別の方法を考えるしかないな」と呟いた。


健一は一瞬、何かを思い出したかのように目を見開いた。「そうだ、クリスタルパワーエネルギーがまだある」と彼は言った。しかし、それでも宇宙空間での攻撃や防衛には限界があることは明らかだった。「もっと根本的な解決策が必要だ」と健一は自分に言い聞かせた。


ゴルフは健一の肩に手を置き、「でも、ケンイチならきっと解決策を見つけられるさ」と励ました。健一はその言葉に少しだけ元気を取り戻し、再び作戦の見直しを始める決意を固めた。


健一は疲れた様子で部屋の片隅に座っていたが、ゴルフが話しかけてきた。「そんなことよりもさ、ケンイチ、3か月くらい留守にしてもいい?」


健一は少し驚いた表情を浮かべ、「旅行にでも出かけるのか?」と尋ねた。


ゴルフはニコリと笑って言った。「あのね、なんでも考古学者のチームがものすごく深いダンジョンを見つけたらしいんだ。」


健一は興味をそそられながらも疑問を抱いて、「深いって、どのくらい?」と聞いた。


ゴルフはちょっと得意げに答えた。「地下300階くらい。」


健一は驚愕の表情を見せ、すかさず突っ込んだ。「それ3か月で調査が済むわけないだろ!」


ゴルフは落ち着いた様子で言い返した。「大丈夫だよ、探知魔法で調べた結果、特にトラップとか障害になるようなモンスターが配備されてるわけじゃないんだって。えらい人が言ってたよ。」


健一は少し呆れた表情で、「でも、そんな深いダンジョンを3か月で調査するなんて…」と呟いたが、ゴルフの自信に満ちた表情に少しだけ安心感を覚えた。「わかった、気をつけて行ってこいよ。」


ゴルフはニッコリと微笑んで、「ありがとう、ケンイチ。お土産話を楽しみにしててね!」と答えた。

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2024年10月18日 12:00
2024年10月19日 12:00
2024年10月20日 12:00

人間嫌いの男、雷に打たれて異世界魔王に転生す、ゴブリンと一緒に宇宙へ旅立つ物語 芸州天邪鬼久時 @koma2masao

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