第5話 諮問委員会へ
「嫌だ。貴族連中は私の話、聞く気ないでしょ」
「それがそうでもないんですよ。エレナさんの技術で、王国軍に無人化部隊を作れないかと言う話が出てまして!」
トレースゴーレムのこと、宮廷にまで知れ渡っていたのか。まぁ、私が護身用に持ち歩くこともあるし、当然か。
「でもなぁ、依頼もたくさん抱えてるし……」
そんな嘘を言ってみる。大体の依頼は爆速で片付けているので、空き時間はある。ローデシアへの出張はレアケースだ。
「そこをなんとか! 日当も出ますから!」
「分かったわよ、そこまで言うなら出るわ。ただし、あんたも出なさい。私が困ったら助け舟を出すこと!」
「分かりました」
◇
そんなこんなで、各国務大臣、騎士団長、専門家を含めた諮問会議は終了した。
意外と私を責める者はいなかった。私がトレースゴーレムの量産に成功していることを伝えると、皆賛同してくれた。まぁ、実物をその場で見せればぐうの音も出まい。
私を推した王国魔法騎士団長のエルディも、面目が立ったようだ。
私は帰途に就いているのだが、エルディはついてくる。
「なんでいるの? 私、一人で帰れますけど?」
「え? これからお疲れ様会をやる流れでは?」
「嫌だ。私は一人で食事したい」
他人との食事はどうも疲れるので避けてきた。それは、年下幼馴染のエルディであっても同様だ。
「じゃあここで。さよなら」
私は無理やり話を打ち切る。
「あっ、はい、さようなら。また行きますね」
来なくていい、と言おうと思ったが、トレースゴーレム実装に向けて色々擦り合わせも必要だし、来るんだろうな。
細い路地に入ると、巨大な魔力が近づいてくるのを感じた。
敵襲か。久しぶりだな。
エルディと別れた後を狙ってきたあたり、魔法騎士団員か?
無人化で失業するのを恐れてのことだろう。
久々に、少し本気を出さないとな。
エレノア・ダンヴェールの魔術革新 川崎俊介 @viceminister
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