明日key

 高級ゼリーを口に含んで転がした喫茶店でのお話。

 スマイリーな君は僕を見ていたね。

 ペイズリー柄の壁を見つめ、君はため息を吐く。

 プレーリードッグが君の好きな動物らしい。

 デリカテッセンで販売しながら、僕は君と出会ったことを思い出す。

 デイリーワークでそれがルーティンになっていた。

 シェリー酒を香りづけに使った料理は絶賛したね。

 フェアリーが舞い降りてきたんだ、それで何が起こったかって。

 パーリーナイト、君はまさに妖精でこれは悪夢の始まりなのかもしれない。

 ミリセカンドに満たない思いが沈黙に落ちた。

 ゲリラ豪雨に迎えられ、外に出た途端に僕らは篠突かれて濡れネズミだったよ。

 ゴリラのドラミングのごとく雷雨に脅された気分だった。

 マリアが現れてくれたなら、どれだけ良かっただろう。

 スリジャヤワルダナプラコッテから来たのだろうか、この雨雲はいったい。

 ドリアのようにぬたぬたになった土の地面って、どうしてこんなたとえをしなくてはならないのか、気持ちが悪い。

 バリアを仕掛けて雨をしのげればとか言えば、この話はおとぎ話に落ちる。

 アリアをワイヤレスイヤホンから聞きながら、僕はそっと君の肩に手をやった。

 グロリア、君との出会いに栄光を。

 メモリアルとしてアルバムに想い出を落とすことができたならな。

 エアリアルすでに澄み渡る空が町から見える。

 シリアルナンバーを解くように僕は君に接近していく。

 アンリアルな現実はもう消してしまいたい。

 ……。

「さん、にぃ、いち……時間切れね。千里の道も一歩から……あなたに面白い無理難題を思いついたんだけど、予想通り無理だったわね」

「なんてゲームを思いつくんだ」

 君川千里(きみかわ せんり)はからかった。付き合いたければその千里に近づくために、千里の「里」つまり「り」のつく言葉をだぶりなく答えて千里(せんり)に辿りつけと。つまり千個の『リ』を絡めて、この場で愛を語れなんて。

 しかも、それをカタカナ語に限定するものだから、厄介なことだ。

「まぁ、諦めがついたでしょ。あなたが私と付き合うなんて無理よ」

「わかったよ、じゃあ君のお姉さんの、マリさんと付き合わせてくれ」

 だが直後、千里はマリさんの名前が「万里(まり)」であることを言った。

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