第6話 僕の イマジナリーフレンド“様” と『プレイ』をする
今日も僕は学校を休んだ、いくら瑠偉ちゃんやヒルダさんがフォローしてくれていたとしても辛いものは辛いのだ。
で、学校を休んで何をしているかと言うと、『ネットゲーム』です―――しかも現在僕がプレイしているゲームと言うのが『VRMMORPG』と言うジャンルで、一時期はそれをネタにアニメが作られたほどだった、それに『
そんな世界での僕は、“
現実世界では友人の少ない僕―――でもネットゲームの世界では“フレンド”は有に200人を越えている、それはなぜか…それは僕のネットゲームの世界での“
「よお『トラビアータ』 これからひと狩りいかねえか?」
「ふむ 狩りか…獲物はなんじゃ?」
「ふふん―――『スパイクドラゴン』 あいつの素材で新しい装備を作りたくてな」
「ヤツか…まあよかろう 例えヤツの角とてワシの装備は貫けんでな」
「フフ…頼りにしてるぜ【アルテッツア】」
この『トラビアータ』こそ僕の“
* * * * * * * * * *
しかし…………そんな僕に―――ネットゲームの世界で我が世の春を謳歌していた僕に一大転機が訪れようとは、それは例え僕であったとしても予測がつかなかった事だろう、それというのもネットの中だけが僕の居場所と思っていたのに―――ネットの中こそは現実社会で生き
「ケントぉ~おめー昨日どうしてガッコこなかったんだよー私もだけどみっちょんや嫁ちゃんが心配してたんだずぇ~?それに朝起きた時には『うん必ず後で行くよ』てゆってたからさー私ゃ信用して待ってたんだけど…おめ、お蔭で私ゃ信用失っちまったよー、どーしてくれんだよ~。」
昨日、僕がズル休みをした事で居候しているヒルダさんから追及を喰らってしまった…うん、そりゃ確かに無断で―――ズルして休んじゃったのは悪かったよ、それに今まではそんな事をしててもこんな風にはならなかったのに…そう言えばヒルダさん僕の家に居候してたんだったあぁぁ~~!余りに常態化してしまってたお蔭ですっかり忘れてしまってましたよ、だからお蔭で追及されてるワケでして……
「あ~~~その事に関してはゴメン…僕も急に学校に行きたくなくなっちゃって……」
「そーだったんかーーーイヤぁ~判るよお~?私もさあ何度も重要な会議をほっぼりだしたくなるもーん、だあってさあーすぐにちゃっちゃと決めりゃいいものを、なんだかうだうだ、うだうだと時間ばっかり浪費させやがって―――あんなあ、時間てのはさ無限じゃなくて有限なんだぜ?それをあいつらの権力闘争?みたいなことで浪費されてみ?こっちもやりたい事たぁーくさんあるのに『ニコヤカ笑顔』の表情作ってまで耐えなきゃなんないんだづえ~?地獄だろ―――こんなんもう。」
どうしよう……
「でさあーケント、学校休んでまで何やってたん?なんか面白い事でもしてたん?」
まあ、気になりますよね、同じ屋根の下に住んでるんだから気にならないと言うのが不思議なんです、それに僕―――嘘が吐けないんだよなあ…だから正直に言っちゃったんです。
「へええ…ゲーム?それも『オンライン』の?てかなにそれ―――」
「ヒルダさんもこっちに転移して来て色々知った事があるでしょ?その中に僕が『インターネット』をしている事も知ったでしょ。」
「あーーーうんうん、何だか知らんけど買い物なんざすぐに出来て、頼んだ品物が次の日に届いてたり、ケントの世界の世界各国の情報なんか一目で判ったり出来て、そんで私が一番重宝したのが『wiki』!私らの世界じゃ知らなかった事がすぐに調べられたお蔭で私もすぐにこっちの世界観にも馴染めたもんさ!でーーー
「うん、ネットゲームと言っても一口に一杯あるけれど、今ボクがプレイしているのは〖プログレッシブ・オンライン〗て言う『VRMMORPG』と言うジャンルのものでさ―――」
「へえ~…なになにそれ、『ぶい・あーる』?『エムエム…』『あーるじーぴー』?」
「『VRMMORPG』!『VR』て言うのは『ヴァーチャル・リアリティ』の事で、用意された仮想世界のプログラムの中に入って実体験が出来るってモノの事で―――」
「へええ…何だか面白そう!私もやらせてよ!」
『オタク』や『ヒキコモリ』の悪い癖で、他人の知らない様な知識をひけらかす時に得意になって喋り過ぎる事がある―――そうした“アルアル”を僕はやってしまったのだ、『ネットゲーム』が僕の唯一の現実世界からの避難場所だと思っていたのにぃいい!しかも一番厄介な人に目を付けられたというしか―――しかも?
「んーーーなんなん?コレ、眼鏡みたいな形してるけど…」
「それがこのゲームをやる上で必要な『インターフェース』ってヤツ、このゴーグル型のインターフェイスを介してでないとこのゲームはプレイできないんだよ。」
「ふうーん…でもなんでケントはもう一つ持ってんの?」
そこは、まだ知られたくないと言うか…というか僕ほどの上級プレイヤーともなれば“メイン”の『アカウント』の外にも“サブ”の『アカウント』で違ったプレイを愉しんでいる―――と言う訳なんだけれども、ここは敢えて……
「まあ万が一の緊急用だね、こう言った精密機械は壊れやすい事もあるからこうしてもう一つを用意しておけばプレイが途切れる事なんてないんだよ。」
「へええ…んでどうすりゃいいわけ?」
「まずは装着してゲームにログインしてみよう、そこから僕がナビゲートしてあげるから。」
取り敢えずは…まあ―――『お試し期間』を利用して貰ってヒルダさんに合うか合わないか判断して貰おう、それで『キャラ作成』から『チュートリアル』まで行けば御の字かな。
* * * * * * * * * *
こうした『VRMMORPG』の醍醐味は、作り込まれた世界観にストーリー性もあるけれども、僕から言わせてもらえれば『キャラ作成時』の“作りこみ”にあるとも言える、それにこのゲーム各アニメや他のゲームとの『コラボ』もあり、作りこみ様によっては好きなアニメのキャラクターとかに“寄せ”れる事も出来る、僕も勿論そうしたキャラクターを作っていた時期があるけれども、やはり何と言っても“オリジナル”を追求していく―――そうした果てに行き着いた先と言うのが、現在僕が『メイン』で実働させている『トラビアータ』と言うキャラクターなのだ。
で…ヒルダさんが作成したキャラクターを見せてもらうと―――『まんま』やん!そりゃまあヒルダさんエルフなんだけどもさあ…けど現実にはエルフなんていないんだから、これはこれで“アリ”なのか?
「よっす!お待ちーーーって…アレ?ケントどこいった? おーーーい ケントぉーーー!」
「大きい声出さんでも聞こえとるわい それにわしの本名を連呼するでない」
「(……)あれえ?ケント縮こんだあ? てか―――『幼女』!? ケント…あんたにそんな趣味があったとは……」
「今となってはお主に知られてしもうて『しまった!』としておる じゃがこのゲーム内での
「うん 判った……とは言ってもまさかケントが『幼女』好きだったなんてなあ けどゲームの世界じゃ意外とお喋りだなあ?」
「ふっふっ―――それこそがネットゲームの最大の特徴よ まあお主とわしとは知らぬ間柄ではない だからこの『トラビアータ』と言うのがお主でも知っておる『山本健闘』と結びつきやすくなるものよ しかし…“わし”の事を知らん赤の他人からしてみればあ?」
「あんたがケントだと判り様もない―――はあ~なるほどなあ よく考えられたもんだわ。」
「だからこれから本格的にゲーム内でわしの“本名”を連呼するのは止めるのじゃあ~!」
「判ったーーーけど もしバレたらどうなっちやうの?」
「お主 わしの現実での姿は知っておるじゃろう―――そう イジメられやすい…けどもな 現実内は限られた空間でもある じゃがしかしネットと言うのは広大でな この日本だけに拘わらず世界各国にもこのゲームのプレイヤーが居る…と 言う事はあ?」
「『いぢめ』がまさかの世界規模にぃ!? うへぇ…やべえな―――私も王国の不正貴族共だけだったからなんとかなってたけど…それが魔界全土を敵に回すって いくら私でもそりゃ無理だぜ?!」
「想像は ついたようじゃな―――と言う事で呉々も気を付けてくれよ? それより えーーーと“
「“
「お主は……先程の説明を聞いておったのか? 『ネットでリアルを割られたら即地獄堕ち』…その為の簡易的で最初の措置として“本名”とは違う“
「あ そーいうことかあ? 現にケン……トラビアータはちっさくて可愛い女の子だしなあ?」
ホント…“
それにしても驚いた―――こうしたゲームはこれが初めてだとヒルダさんは言っていたけど、『昔取った杵柄』―――こちらへと転移する前は冒険者として鳴らしたという“腕”…それにこのゲームは『アップデート』が進むにつれ、そうした身体能力―――いわゆるところの『プレイヤースキル』の方にも手を入れて来て、運動神経が優れた者はその優れた能力そのままに動ける、つまり何が言いたいのかと言うと―――
「ヒィィイヤッハア~!オラオラオラぁ~!逃げるヤツは盗賊だあー! 逃げないヤツはちょっとデキル盗賊だぁぁ~ 盗賊は『悪・即・斬』!せめて私の血となり肉となり そして経験値―――金に成って果てるがいい~!」
少し軽めのミッションで『盗賊討伐』を
「のーーーうお主 ちとモノを訪ねるが 本当にお偉いさんじゃったのか?」
「はあ?ナニゆってんだか これでも“現役”よ“現役”」
「“現役”―――て えらい手慣れとるよのう?」
「あーーーそりゃまあそうだろうさ なんたって私の国は『小国』でねえ 目立つような産業はないし だーから私が率先して魔獣狩ったり 盗賊連中が盗って来たお宝狙って襲撃駆けたもんさ」
「(ん?)今―――聞き違いじゃなかったら『盗賊共のお宝目当てに襲撃かけた』とな?」
「ああ―――とは言っても闇雲じゃないよ?ちゃあんとギルドに討伐依頼された
うわあ~この人悪どい―――と言うより要領いい…確かに盗賊と言う連中は他の者達からしてみたら悪い奴らだ、自分達は働きもせず善良な住民達を食い物にするばかりで同情する余地なんてこれっぽっちもない―――と、今まではそう思っていましたが…居ましたよ、ここに―――その盗賊達を食い物にしてる人、しかもお宝を溜め込むまで待つって―――悪どいなぁ…このエルフの王后様。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そしてその後プレイ時間を重ねるに従いリーゼロッテも“ベテラン”の域になってきた時、ひとつの事件に巻き込まれたのだ(参考までに、このゲームに見事
「よお トラビアータ ここんとこ ご無沙汰だったじゃねえか。」
「おお そう言うお主は『マクドガル』 まあ仕方なかろう わしはこやつに付きっきりじゃったからしてのう」
「んー?誰だこの筋肉ダルマ」
「これ失礼な事を言うな こやつこそここ最近わしがよくつるんでおった『マクドガル』じゃ わしも
「まあー
この日僕達がひとつのミッションを達成した時、偶然にもヒルダさんを引率する前によく組んでいた『マクドガル』という男性プレイヤーと会った、しかもこのプレイヤーは割と本当に頼りになる、“
「へへーーー見てみろよ この前お前サンと協力して狩った『スパイクドラゴン』 そいつの素材を利用して作った装備を」
「まあ腐ってもドラゴンじゃからのう…その『防御力』は言うまでもない それに『耐久力』も見逃せんしなあ」
「へえーーーそれドラゴンを利用して作ってんだ いいよなあドラゴン 『鱗』や『骨』『牙』や『爪』なんか優れた素材だしね 中でも『にく』はさああーーーもぉほっぺたとろけ堕ちそうになるくらい絶品でさあ!」
「(…)なあトラビアータ このエルフの新人まだ『駆け出し』なんだよな? なんでそんな上級冒険者並の事を知ってるんだ?」
「ああ~いや これはじゃのう……」
「はあ~?そんなん知ってるに決まってんだろ 私ゃこう見えて“向こう”の世界で冒険者やってたしぃ~」
「わあ~っ バカちょっと待てお主!」
『あ?な、なにしたんだ?なんか急に申請がされたけど―――』
『全くお主の
『おいおい重要な事…って待てよ それじゃ何か?そのエルフの新人―――』
『はあ~すまんのう こやつは以前いた処でこうした事を割と“ガチ”でやってた事があるらしくてのう…』
『『以前いた処』…に 『こうした事を割と“ガチ”で』??けどオレ達と同じ様な危険な冒険者稼業なんざそうそうリアルでは―――』
『おい マクドガル 他人の事情に深く関わろうとするな リーゼロッテもそう言うのは嫌がるじゃろうしな』
『あ ああ―――そうだったな すまねえ…』
ネットゲームの世界では、基本親しくしつつも“深く”―――つまり、リアルの事まで知ろうとするな、これも不文律の一つだ、現にこの僕もマクドガルのリアルの事までは知らない…
―――そう、ここまでは……
だが……………
『ったくケントぉー何であんたが私の事を勝手に決めてんだよ 私はよ?別にリアル…?な事を知られても嫌じゃないよ だってさあーーー』
『わわっ!バカバカ いくらPTチャットと言っても言っていい事と悪い事があるだろう!ダメだよ~“僕”のリアルを特定しちゃうような呼び方しちゃ…』
その時は、僕も少々
『健くん…? もしかしてその幼女って健くんなの?』
事情を知らなければ筋骨隆々のマッチョな男性プレイヤーから何とも可愛らしい口調が飛び出てくる事に驚きを禁じ得ないだろう、だけど僕が驚愕したのはそんな処にはない―――僕の事を『健くん』と呼ぶ存在を、僕は
『瑠偉…ちゃん―――?』
僕のイマジナリーフレンド“様” はじかみ @nirvana_2020
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