第5話 僕のイマジナリーフレンド様“変色”する。

以前までは僕の事をイジメていた連中がいた、けれどもそうした連中は(訳あって)僕の家に同居している『ヒルデガルド』―――さん…に、逆に目を付けられて大人しくさせられてしまいました、そうした事であの3人も僕の事をイジメなくなったか―――と言われれば、そうでなかったりするわけで…


「よぉよぉーーー健闘ォ~あいつ一体何なん?」 「あのスケお前の“番犬”みたいなことしてるようだけどよォーあんましいい気になんなよォ?」 「まあ不幸中の幸いてヤツは、あのあま同じクラスじゃなかったって事だな。」 「そこへ行くとオレ達とは一緒だもんなああ~~?まあ仲良くやって行こうや。」


HRホームルーム明けの合間に例の3人が僕の席に近寄って来て昨日あった事で因縁を付けて来た、結局はそう言う事なんだよな……いくらヒルダさんがこいつらをどうにかしてくれても肝心の僕自身がこいつらにおびえて何も出来ない、今も僕の事を小突きながら僕に対し―――


「よおよお、面白おもしれえ事やってんジャア~ン?私も仲間に入れてくれよォー。」


「(ヒいっ!)ひ―――ヒルダの姐さん!」 「なんだなんだあ~?私のケントを囲んで何しようってんだあ。」 「い、いえ―――お、おれ達は健闘と仲良くしようってんですよォ…な、そうだよな!」 「ま、それならいいけど、間違えてうちのケントに何かあったら―――タダじゃすまさんけえのお。」


ヒルダさんがこっちに来て判ったことが一つだけある……この人、自分の事『王后』なんて言ってるけれど絶対『ヤクザの大親分』でしょ!だって、王侯貴族とかあんなスゴ味のある殺し文句言えやしないし?まあ……確かに絡まれてた処に救いの手を差し伸べてくれたのは感謝はしているよ、だけどこうした手がいつまでも通用するか判ったものじゃない、僕達が通う学校はに進学率はいいけれど、その反面ではみ出し者もいくつかは存在している、まあこの3人は僕達1年生を代表する―――と言っていいだろう、そう…何が言いたいかと言うと『上級生』の存在だ、こうした者達は“横”の繋がりもることながらに“縦”の繋がりもしっかりとしている―――こいつらもそうしたのを当てにしていたに違いはない…


だが―――しかし…


その日の下校時、こんな事が―――瑠偉ちゃんは剣道部の活動があるから一緒に帰れないとはしても、ヒルダさんは僕の家に同居している―――と言う事から一緒に帰ろうとしていた処…


「手前ぇが最近転入してきたヒルダ―――っちゅうモンか…」 「ん~~?そうだけど―――だったとしたらどうだって?」


僕達の学年の…僕のクラスにいるあの3人より性質たちの悪そうなのが僕とヒルダさんの前に立ちはだかって来た―――いや、て言うより…これって『お礼参り』だよね?自分達のグループの下っが可愛がられたとかどうとか言って、更なる因縁を吹っかけて来るって言う―――これは“詰んだ”あああ~~~!同級生ならまだなんとか出来るにしても、上級生相手じゃ流石のヒルダさんでもおお~~~


―――なんて思ってましたら?


不思議と向うは何もしてきませんでした…と言うより、これ完全な『膠着こうちゃく状態』―――だよね?それに『何もしない』てことはある意味不気味でして…だってさ!何かアクションがあったらこっちも何かしらの対処が出来るもんじゃない?それが『何もしない』……て―――時間だけが刻々こくこくと過ぎき、無駄に浪費されている…僕もこの後帰ってネットの画像や動画をアップしなきゃいけないのにぃぃ~~すると、ヒルダさんが…痺れを切らし―――た?!


「(はああ~~…)なあに?私これからやんなきゃいけない事あるんだけど?あんたらからぁー突っかかって来て、何もせんのんじゃ時間の無駄遣いさせられとるっちゅうことじゃわいのう。」


明らかに…イラついた言動―――なんか、まずい事でも起こりそうな予感……


「こっ、この度は申し訳ありませんでしたあ!う、うちの総長も反省してるって事で、ここはどうかおひとつぅぅ~~~…」


「(え?)どうなってんの?というか…どう言う事?」 「んん~?なんか知らんけどさ、今こいつが言ってる『総長』?てのがこの学校シメてるヤツなんだって、でさあケントに因縁つけてたあの3バカいたじゃあーーーん、その内の緑の頭したヤツいたっしょ?どうやらそいつが『総長』とやらの弟―――だったみたいなのよお。 ん、で、可愛い弟を嬲られたお兄ちゃんにしてみたらを見つけ出してお礼参りしたかったんだと―――さ、だーけど知っちゃったんだわ~~私、“更なる力魔力”を手に入れた私にしてみれば、そんな陰謀なんざ捻り潰すのはお茶の子さいさいよおーーー私らを待ち伏せる前に私がそいつの居場所を把握して、実力で!理解らしちゃったまでよおお…」(クックック)


―――うん…僕が間違ってた、この人『ヤクザの大親分』でもなかったあ!この人『大魔王』じゃん!『暴力チカラこそが総て!』と言ってるような人じゃあ~ん!え?その前にこの人エルフなんだよね?エルフでも魔王に成ったりする事なんてあるの?


「ま、反省してるって言うなら判るよ、反省してるって言うなら。 まあーーー若気わかげの至りと言うのもあるとは思うよ、実際私でもう若い頃にはヤンチャしてたもんだしねえ~実際今となっちゃ“まあるく”なったもんよ―――なあ?ハッハッハアー。」


ん?この調子で“まるく”なった方なの?だとしたらヒルダさんの若い頃―――つて、どんだけトンガッてたんだよ!


「まあ、よろしい―――本来なら本人が出て来て土下座するんが筋だけど…今回はあんたの面子メンツに免じて特別に許してやろう…」


「はっ、はいっ!ありがとうござ―――」「たあーだあーし、ケントやそれに連なる者に危害加えた場合―――判っちょるよのう?私ゃあー二度も言うてあげるほど人間は出来ちょらへんでえ?言うといたるけどなあーーーケントやそれに連なる者に危害を加えたなら、その時点で潰す。 そうした話しが私の耳に届いた時点でも、即座に潰す。 今回は私らを待ち伏せて奇襲を仕掛けようと思うちょったらしいけど、そいつを事前に察せられて潰されたんよのう?もう理解っとるやろ―――魔力を使えんあんたらにしてみたら、魔力使える私はあんたらの企みなんざ事前に知れて、それで潰せることが出来る…よう言うとき、今後は一切変な事は考えずに、真っ当に人生歩め―――つうて、な。」


そう言えば聞いた事がある…“闇”を消し去る為には“光”ではなく“闇”のみが為せれるのだと、確かにゲームやアニメの設定では“闇”に対抗する為には“光”ではないといけない―――と言うのはテッパンだけど、ある考えとすれば“光”は“闇”を色濃くするとも言われている…だとするなら、“闇”を消し去る為にはどうすればいいか、それは更なる強大な“闇”のみがその“闇”を呑み込めるのだ…と。

それにヒルダさんは言っていた―――彼女の王国に巣食う不正貴族達を自分一人が相手をしていると…この事を僕が最初に聞いた時、ヒルダさんが“光”―――つまりは聖なる存在だと思ってしまったのだ、だが実はそうではなくヒルダさん自身がとんでもない“悪”だったとしたら……それならそれで辻褄つじつまとおる気がしてきた、不正貴族と言うからにはこちらの世界で言う不正を行う政治家と同じ様なものだろう、『不正に政治資金を蓄え』たり、『不正に選挙の応援を依頼』したり、『自分の所為で選挙が負けたのに他人の所為に出来』たり、『答弁をすぐ変え』たり、『都合よく記憶が無くなっ』たり―――僕達国民の声を代表する身でありながら結局自分の利益になる事しか考えていない―――それが政治家だ、そして異世界から来たというヒルダさんは国を代表する為政者でもあると言う。


僕の知る、僕の国の代表言うのは色々と周囲に気を使って自分の意見を言わない―――そうした優柔不断な人だと思っている、そこへ行くとヒルダさんは強く濃いくらいに自分の意見を―――主張をしてくる、それらが総て正しいとは思えないけれども、僕から見てみればヒルダさんは自分に課せられた役目と言うものをしっかりと果たしていると見えたのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そんな―――ある日の事、僕は―――驚愕した……驚愕、するしかなかった……。 それというのも―――


「(ン?)ヒルダ…さん?なんだかーーー変わってなくない?」 「ん~?私のぉーーーなあにが変わってるってえ~?」

「(いや、変わってるでしょう!)ヒルダさんはさあ……エルフ、だよね?」 「ダーヨネー。」

「『エルフ』って…僕らのイメージでは色白だったんだけどさあ……」 「うィーす、やりらふぃ~☆ え、なんだってえー?」

「今のヒルダさんて明らかに“色黒”だよねえ?!え?いつから?いつからヒルダさんは『エルフ』から『ダークエルフ』に種属チェンジしちゃったの?!しかもなんだか口調も『ギャル風』になっちゃってるし!」 「あーこれえ~?キヤハハいやそれがさあ、『みっちょん』てヤツと気が合ってさ、んでそのみっちょんから色々手解てほどき受けたわけよ、そしたらこうなった―――と。」


今、ヒルダさんが言ってた『みっちょん』て、『三橋京子あいつ』の事かあ~! ボク達の間で『三橋京子』と言う女子生徒は、その見た目だけで『ギャル』と判る同級生だ、その女子生徒の(悪)影響をモロに受け、なんとヒルダさんが『ダークエルフ』顔負けの“色黒”になってるし、“ギャル風メイク”に“ファッション”の方もバッチリ決めて―――しかも口調もしっかりと『ギャル風』になってるしぃい~? ついていけない…急に変貌してしまえるだなんて―――僕には、ついていけない…


「なあーなあーケントぉーーーなにサゲちゃってんのよおーバリバリテンションアゲてこーぜいっ!☆」 「僕さあ…そんな“陽キャ”なキャラ苦手なんだよ―――以前僕の事をいじめていた三人組いただろ…?そいつらと同じ様に“陽キャ”なギャルも苦手なんだよおぉ~!」 「えーでもおーーーみっちょんいいヤツだよお?そりゃケントからしたら苦手かもしんないけどさあーーー他人を外見で決めつけてもいいもんじゃないと私は思うワケよおー。」


確かに―――言っている事は判る…他人を外見で判断するのは良くない事だと、けど―――けど僕は知っている!僕はギャルの他人の領域などお構いなしにずけずけと侵入してくるのが怖いんだああーーー!


「ねえーねえーがるどっちぃーそいつ誰ぇ?もしかしてがるどっちの“カレシ”ぃ~?キャハハハ☆」 「え?まあー一緒の家に住んではいるけど“カレシ”じゃねえよお?」 「えっ、がるどっちこいつと一緒に住んでんだあーウケルぅ~じゃあ同棲?」 「ンなんじゃあねえよぉみっちょーん、ちょーと私ワケありでさあ、棲むとこねーから居候させてもらってんだわ、ほらー私らみたいなか弱い婦女子が野宿しててみ?色んな『悪い虫』やら『野獣』やら寄って集って来て私らの純潔散らそうとすんだぜえー?」 「うへえーサーガール~★んじゃなにかあ?この冴えない男が、がるどっち匿ってあげてんだー中々の“をとこ”じゃあーン、キャハハハ☆」 「みっちょーん、『この冴えない男』じやなくて、『ケント』―――親しい中にも礼儀っつうもんがあるだろう、ま今回は許したげるけど次ゆったら許してやんないかんね。」


出たな!『三橋京子』……もはや“絶滅種”とさえ言われた『今世紀最後のギャル』―――性格は底抜けに明るく、制服も着崩きくずしスカート丈なんて膝上20cmの最早申し訳程度にしか穿いていない(目のやり場に困る!)、メイクもド派手で僕の人生上最も関わりたくない人種の一つだ、けれどなぜか―――ヒルダさんがこのギャルと関わってしまった、しかも僕がヒルダさんの『カレシ』だとか!知らないから言えるんだろう、この人『人妻』だぞ?んでもって本当はエルフなんだから僕達よりもずっとずっと、ずうううーーーっと年上なんだぞ!何が言いたいのかと言うと『年上』は僕の範囲外だああっ!寧ろ僕の範囲は『ちっちゃく』て僕の事を『お兄ちゃん』て呼んでくれる『幼女』が―――ま…まあ僕の『趣味』などはまた改めて話しをするとして、どうにかこうにか僕の家に帰って来たのだ。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


「(はあぁ~…)なんだか疲れたあ~それよりヒルダさんその肌の色塗ってんの?それとも―――」 「ン~?なんかーーー『陽サロ』?て言うのをみっちょんから紹介されてさあー、焼いた。」 「(焼いて、その色なんですか…)それにしてもホント、ヒルダさん『ダークエルフ』になっちゃったよ。」 「そーそー、そう言えば思い出したわあー、丁度私が以前までいた世界にな、私が后になってた国の『隣国』が丁度『ダークエルフの王国』だったんよー。」 「(…)へええ……それで?その国とはどう言った関係だったの?」 「なんだあ?ケント、興味持っちゃったってワケえ?」 「興味は、あるよ―――だって僕そう言った異世界モノの小説ラノベとかをよく読んでいるからね!そして作品毎によってエルフとダークエルフの関係には違いがある、ある作品では同じエルフ種として仲が好いけど、また別の作品では“闇”の属性に堕ちてしまっているダークエルフがエルフと敵対関係にある…とかね。」 「へえええーーーヤケに詳しいじゃんかあ、逆にウケるぅ~☆ まーマジな話しをするとさあ、ケントは『隣国』ってどう捉えてる?」 「え、『隣国』?字面じづらや言葉のイメージだけだと“隣”の“国”だからーーー割と関係よくないといけないんじゃない?」 「そっかあーーーそう言う風に捉えてんだねーーー。 私の世界での『隣国』は割とシビアだよ、表面上は仲好くしていても裏面では結構ギスギスしててね、こっちの隙あらば領土を削り取って来る、そうした緊張感に包まれてるって言った処かな。」 「な…なんだか油断も隙もないね。」 「まー実際、私の夫はちょー凡愚でね、あいつがあのまま王位に就いてたら私らの国なんざ“あッ”と言う間に無くなっちまってたことだろう、そこを―――私が国王の代理として外交の席に立った事であいつらのいいようにはさせなかった―――てとこかな。」


うわーーーこの人こう見えて実は“辣腕ゆうしゅう”?うだつの上がらない国王に成り代わって自国の舵取りをするなんて…ついさっきまでギャルの言葉を連発させていたけど“やる”時は“やる”―――それに異世界では一つの国の王の后だったと言うのも満更嘘でもなさそうだ、それに…


「まー今は王后そうじゃないってことだしぃー難っ苦しい事言うのはヤメヤメ―――そぉーれに私だけが『次元転移』喰らったって事は、神様が『お前は存分に働いた、その褒美としてしばらく休むがよいいぃぃ…』と言ってくれたって事で!」


い、いい―――の、か?なんだか軽々しく神様引き合いに出しちゃってるけど…それに僕は以前の―――ヒルダさんの事なんか知っちゃいない、今は奔放ほんぽう放埓ほうらつを絵に描いたような彼女だけど、一つの国の王の后だった頃のヒルデガルドの事なんか知る由もない…今はちょっと“今風のギャル”のようになっちゃっているけど、いつかはお后様姿の彼女をみてみたいなあ―――


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


それとはまた、別の話しで―――


「うわっ!どうしたの健くん、どうして健くんちにギャルが?」 「あ、あのーーー高坂さん、これには深い事情が……」 「ギャーッハハハ!ウ・ケ・るぅ~☆ケントの嫁も私が“色黒”なっちゃってビックらこいたあ~?」 「ビックら…そりゃするでしょう、だって私あなたのことは“色白”な美人ひとで捉えちゃってたから―――それに、私はまだ健くんのお嫁さんじゃありません!」 「えっ?でもおーケントんちに足繁あししげく通ってくるのって今んとこあんたしかいない訳なんだがあ?」 「それはっ!そのうーーーそう、なん、だけど…それよりあなたの方が一部の女子生徒から健くんの『彼女』って言われてるんだよ?」 「はあ~?なにそれウケるぅ~☆大体私には夫に―――あと子供もいるんだぜえ?」


「は?」「え?」


「ん?なに―――」 「そのお話し…初めて聞きます。」 「『その話し』って―――娘が一人いる事?あれ?前に言わなかったっけかなあ?」

「僕は―――初めて聞きます…。」「わ、私も…」

「そっかあ~んじゃ私、ウッカリさんしてたんだーちょーウケる☆ それじゃ、まあーーー娘が出来た経緯など話してしんぜよう…あれは、私が夫と結婚して50年過ぎた頃の事でした、いくら長命とはいえここら辺で子供の一人となりとも作っとかなければいかんかなあーと言う使命感の下に、嫌がる夫に無理矢理乗っかり出来た子供が娘でした―――終わり。」


ちょっと、待ってえ?なんだか色々ツッコみ所がありそうなエピソードだったけど、取り敢えず言わせて?『軽っる!』娘さんを作ろうとした動機もそうだけど、旦那さん嫌がるのに乗っかっちゃうなんて―――それって最早『逆レイプ』だよ?あわよくば『性犯罪』だよ?それにそんなんで子供を作っちゃって問題無い訳ぇ?


「あの…ひとつご質問が―――いいですか?」 「ん、なんだね―――嫁ちゃん。」 「『瑠偉』、私『高坂瑠偉』と言う名前ですので以後はそう呼んでください。」 「んっ、承知した―――では、ならば以降は私の事も『ヒルデガルド』とそう呼んでもらう事にしよう…で、質問とはなんじゃね?」 「ヒルダさんのお話しを聞いていると無理矢理に子供を作ったと聞こえるんですが、ならば出来た子供は幸せだったのかと―――」 「『幸せ』?だったんじゃない、まあ私はあの子本人じゃないからさ、あの子が幸せだったかどうかは判らないよ、だけど…可愛かったよ―――産みの苦しみもあったけど、いざそう言うのを乗り越えて産んだらそれはもう愛おしくてね、その時には思ったもんだよ…『私はこの子の為に頑張らなきゃいけない』ってね、母親とはそういうもん―――だろうと私は思ってる、とは言っても母親としては1年生も同然なんだから『何を偉そうに』って事はあるんだけどね。」


ここでひょんな事からヒルダさんの『母親』としての顔が出て来た、いつもは軽めの言動で僕達をやきもきさせている彼女なんだけど、娘さんを産んだ―――まあ…経緯は置いておくとして、産んだら産んだらで可愛がっている、我が日本ではここ最近少子化の問題がニュースなどでスポットを浴びる事があるけれど、これは一時期に対して子供を産む率が下がってきている―――そうした一面もある中で若い母親が『親』となる認識のないままに子供を産んでしまって子育てを放棄する―――子供はまだ自分の確立のないままに日々を過ごしていくから割と我が儘に育って行き、好きな時に泣くし、好きな時に寝るし、好きな時に食べるし好き嫌いもある、お行儀なんてしないし夜中に泣いたりするし…そうしたストレスが積み重なって若いお母さん方は心を病み、虐待をしたり食事や水を与えなかったり挙句は炎天下の中で狭い車の中に何時間と放置してしまえる、その結果折角産んだ自分の子供を殺してしまうのだ。(それに母親だけのケースを書いたけれど父親のケースもひどいものだ)


『大人に成る』―――って、何なんだろう…法律上では近年18歳から『成人』とは認められるようになったけれど、その成人を祝う『成人式』で新・成人達の横暴が目に余る、法律が改正される前までは『成人』でなければ『未成人』とか『未成年』と言う理由だけで割と狂悪犯罪者でも実名報道されてこなかった、だからと言ってこの度法律が改正されて18歳で『成人』となったとしても実名報道はされないし顔などもボカシを入れて報道する等制度の粗さが目立っている…世の中の偉い大人達はなにをしているんだ―――あんた達がしっかりしてくれないとこれから日本の未来を背負う僕達はどうしていけばいいんだ、けれど“ネクラ”で“オタク”で“引き篭もり”な僕が彼らの事を批判する資格などない、何も言わない…やらないのは加害者も同然なのだ。


しかし僕が真面目に悩んでいたとしても―――


「オイイイ~なにシケた顔してんだよーーーケント、あんたのそんな顔見てっちゃ私らまで辛気臭くなるってぇ。」 「い、痛い痛いよヒルダさん…何もそんなに小突かなくても―――」 「そうですよ、健くんはそうした理不尽な暴力が苦手なんです。」 「『暴力』~?はああ?なにゆってんだか―――私はケントとスキンシップしてるだけだしぃ。」 「それ…イジメる側の常套文句―――あの三バカも僕と『ジャレ合ってる』だの『スキンシップ図ってる』だの言ってくるけど内容としてはイジメなんだよ…それに先生達も親達の目があるから積極的に関与してこないし。」 「はあ~?なんだそりゃーこの世界の大人ってヤツぁ割りとクソだな。」


この現実世界は僕にとっては過酷な世界だ、僕を取り巻く環境もそうだし、合っているだなんて思っちゃいない…だから僕は逃避にげた、『現実』から―――現実から逃避にげて『二次元世界』に馴染んでいくのにそんなに時間はかからなかった、だって画面の向こうは顔の知らない“誰か”さんだし、向うも“こちら”の事を知っているわけじゃない、それにまたネット向こうの世界での僕は、僕が“僕”だと判り難いようにしている、“性別”はもちろんだし“体格”や“性格”までも―――ひょっとしたら僕の周りの人達もネット社会での僕の身近にいるのかもしれない、僕と同じ様な『仮面』を被り、本当の自分を偽っているのかもしれない、けれどそれは個人の自由であって基本『身バレ』しなければ僕が“僕”である事は判りはしないのだ。



けれど……それは僕の―――僕だけの淡い期待、ネットは僕の独壇場どくだんじょうだからと、多寡たかを括っていた僕への、『罰』




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