第7話 草も生えない
ドラゴンの背に乗り王都に向かうなかアシモフは先ほどまでのことを思い返す。
まさかここまで穏便に事が進むとは思わなかった。
行軍中にあの広域な魔力を肉眼で見たときは最低でも自身の命が無くなることは覚悟していた。
かの存在が問題無用の場合は王都にそれを伝える。
調査団も志願者のみで編成されいた。命惜しくて不審な行動をとり、かの存在の気を悪くしてしまった場合、国が終わる可能性すらあった為だ。
魔力の中に入った先、魔力の主はエルフの少女の姿をしていた。
神魔はあらゆる物に変身できるという逸話を聞いていた為、この少女が神魔なのだろうとはすぐに理解できた。しかし理由はわからない。
擬態とは本来は弱い生き物がするものである。それも背景と一体化していたり、強者の姿を真似して身を守る行為だ。
では疑似餌だろうか。それもおかしな話だ。エルフはそこまで弱い存在ではない。
そもそもこの巨大すぎる魔力の中に理由もなく自ら入ってくる馬鹿な生き物などいるのだろうか。
「王都とはどのような所ですか」
その異質存在が日常会話をしてくる。
「ど、どのような、ですか。この国の首都であり、人も多く最も栄えた場所です。」
「それは楽しみですね。人間だ沢山いる場所は初めてですので」
まるで乗合馬車に乗った田舎者が言いそうなことを言うのだ。
王城の中、王は招いた草エルフに問いかける。
「草エルフ殿、かの方はどのような理由でここに来られるのだろう」
「我らの主は世界中から争いを無くすことを理念にされています。隣国との争いの準備しているのを知り止めにこられたのでしょう」
呼び出された草エルフは若い女性の姿をしていた。
草エルフは殆どが若者のような姿をしている。
だが、リーフィアより遥かに大人びた印象を受ける佇まいであった。
「そうか、物騒な理由ではないのだな」
王は胸を撫で下ろす。
「安心するのは早計かと思います。争いを止める最も簡単な方法は何だと思いますか。」
争いを止める最も簡単な方法。
争う相手がいないのなら争いは起きるわけもない。
「な、そ、そのようなことを、、、」
「そのようなことを簡単に出来る存在がこれから来られるのです。どうかご尽力ください人間の王よ。」
神魔大戦を生きのびて草 ♨浅 @yuasa1117
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