第6話 バレバレで草

グラス一行は村を出て王都へ向かっていた。

村人達から感謝の意を示され送り出された。


「下等種族とはいえ感謝されるのは悪い気はしないですね」

「駄目ですよ。他の種を見下すようなことを言っては。

今後もそのような態度ならしばらく地面に埋まってもらいます。」


草エルフは「すみまんせんっ、絶対しません」と許しを請う

「草エルフペコペコで草」


その間レイアは一人考えを巡らせていた

偉大なる存在であるグラス様は些事には疎い。

人間が食べる食物すら知らなかったのだ。

グラス様が知らずに間違って世界を更地にしてしまわぬように私が頑張らねば。そう決意を固めた。

「ぞいの構えで草」「頑張るぞいで草」


「というか、そのトカゲまだ連れて行くんですか」

草エルフは同行中愚痴愚痴と文句を言ってきた。

「だから私はトカゲでは、、、あれ?」

レイアを言い返そうと振り向くと草エルフはいなかった。

「埋まってもらうと言いましたからね」


草エルフは地中に埋まっていた。

「草」「草」「草」


「そういえば、向こうから来てる人たちは誰でしょうかね」

グラスは指を指す

「あれは、、、王国兵ですかね」




時は少しさかのぼる。

グラス達が向かおうとした王都の王城内。

この国の王は頭を抱えていた。

「なぜ、なぜ今更動いたのだ。かの神魔は」

宮廷魔術師が答える

「それは現在調査中です。ですが確実なのは神魔の強大な魔力が着実に王都に迫っているということだけです。」


側近の一人が問いただす。

「それは本当に神魔なのか。大魔やドラゴンと間違えているということはないのか」

「間違えるわけないでしょう。神魔の森全域を覆っていた魔力が移動してきているんだから」


「しかし、しかしじゃ。有史以来決して動くことのなかった不動の神魔が動くものか?」

「動けなかったのではなく。動かなかったのでしょう。なぜ動いたかはわかりかねますが」


王はしばし考え決断を下す

「調査団を派遣しろ。決して刺激するな。事態の重大さを理解できる賢き者を長に据えろ。」

王は急げと声を上げると側近達は慌てて部屋を出て行った。


「それと魔術師殿、草エルフ殿を呼んでいただけぬか。」




時は戻り。レイアは王国兵らの動きを注視していた。

「うーん、数も少ないし武装も少ない。争いに来たってわけではないですね。」

「では、お出迎えに来てくれたのですかね。親切ですね。」

「そうと決まったわけではないです。何かあった時のためにグラス様は後ろに控えててください。」

「そうだったら私がレイアさんを守りますよ。」

「いえ、そういうわけには、、、」


もちろん人間がグラスを害する事など不可能である。

だが、なにか不機嫌にしたり人間は不要と考えに至る行動をとってきたら。

次の瞬間人類が消える可能性すらあるのだ。

レイアは世界の観測者ドラゴンとしてそれは防がねばと決意を固める。


その間に王国兵は動きを止め。その中の一人が歩いてくる。

鎧と武器を外して両の手を挙げて近寄ってくる。


「あれは人間の挨拶でしょうか。私たちもやったほうがいいですかね。」

「いえ、ただ敵意がないことを示してるだけです」

「それならやったほうがいいですね。」

グラスはこちらに向かってくる王国兵を真似して両手をあげた

「草」「アリクイの威嚇みたいで草」「グラス様万歳で草」


王国兵は眼前に来ると膝をつき頭を下げる。

「私はグランベール王国より参りました。魔法兵団長アシモフと申します」


「これはご丁寧ありがとうございます」

グラスはぺこりと頭を下げた

「私は草の民の代表グラスです。こちらは護衛のレイアさん。あっちにもう一人埋まっててリーフィアという名前の子がいます」

「草エルフ埋まったままで草」


「偉大なる方にお聞きいたします。どのような御用件で王国にいらっしゃるのでしょうか。」

「はい、実は王国に戦争をするのを止めてもらいたくてお話ししに来ました。」


「なる、ほど、そういうことでしたら私の一存ではどうにもできません。王の元までお送りさせていただいてもよろしいでしょうか。」

「助かります。王様とお話がしたかったんです。」


「それでは」とアシモフは立ち上がり王国兵たちを一目見た。

「大変申し訳ないことなのですが、急ぎで来たため馬車の準備がありません。馬に乗っていただくことは可能でしょうか」


「馬ですか。乗ったことありませんね。上に乗ればいいのですか。」


「そういうことなら私が背中をお貸ししますよ」

今まで静観していたレイアが口を開いた。


「背中とは、、、」

「アシモフ殿、実は私はドラゴンなんですよ」


レイアは光り元ドラゴンの姿に戻る


「うぉっっ」

アシモフは驚き後ろに飛びのいた。

王国兵たちも大騒ぎである。


「私ならグラス様とアシモフ殿くらい乗せて飛べます。」




その後、アシモフは王国兵たちに帰還命令を出した後グラス達の元に戻ってきた。

「ではレイア様、よろしくお願いいたします。え、あの、よじ登ってもよろしいのでしょうか。

レイア様は女性ですのであまり、お身体をおさわりしてしまうのは」

するとアシモフの身体が宙に浮いた。

「なんとっ」

そしてドラゴンの背に降ろされる。


「アシモフさんはとても紳士的な方のようですね。好感が持てます。」

同じようにふわりと浮いてきたグラスも降り立つ。


「ふふふっ、そうですね。ドラゴン姿で人間に淑女扱いされたのは私も初めてですよ」

レイアも好意的に笑った。


「グラス様、そんな紳士なアシモフ殿のサポートをお願いします。人間はドラゴンの背に乗るのは大変だと思います。風で吹っ飛ばされたり足を踏み外して落ちてしまうかもしれませんから。」


「それは大変ですね。任せてください。」

するとドラゴンの背に光の幕のようなものが覆う。

足元にも床のようなものができる。先ほどまでいた、草木の生えた草原のような安心感まである。


「すさまじいですな、、、」

アシモフはぽつりとつぶやく


ドラゴンは飛び立ち王都に向かった。


「草エルフ埋まったままで草」





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