第二幕『銀幕まくり』
——
七割が海の青。
三割が陸の緑、茶。
北極点を基軸に、半時計周りに、重々しく、回転する。
それは……
火星人の
「ズズズ……うーむ…やはり地球産の緑茶というのは、美味いマーズ。この適度な苦みが、スパイスのような働きをするのだマーズ」
火星人の、偉そうな奴が、そう言った。
偉そう、と言うのも、彼は現に、この基地をはじめとする地球周辺地域を統べる、総督バレール・ノムリなのである。
地球を監視するこの『
一見すると、この『
今日は、一九六九年の七月二〇日。
月にいると体内時計が狂ってしまいそうなものだが、今は一応、夕刻だ。
総督の元に、部下らしき別の火星人が走ってきた。
「総督! 大変ですマーズ!
部下の顔は、
「なぁにぃいいいい!!?? それはとんでもなく大変だマーズ! 大至急、修理班全班を派遣するマーズ!!」
火星人たちは、その『銀幕』と呼ばれる得体の知れないものを、必死に修理しようとした。
だが、穴はなかなか塞がらず……
地球人、マイケル・コリンズに、見られてしまったのだ!!
「そう言わずに聞いてくれって! 明らかにおかしい! なんだろう、俺はワームホールでも見つけてしまったのだろうか? そうとなると、人類は同じ日に二つの偉業を成し遂げることになるぞ! 月面着陸と、ワームホールの発見! 素晴らしいじゃないか!」
コリンズは必死に訴える。
「うるさいな……仕方ない、しばらく
ヒューストンの管制官はそう言って……
\ピッ♪/
コリンズをミュートしてしまった。
「おいヒューストン、聞こえてるか! おい、もしもーし!」
コリンズの声は誰にも聞こえていない。
「仕方ない。大人しく観察しておくとするか。イーグルの月面着陸と、ワームホールの両方をな! って……なんだ!? あれは!!??」
コリンズは、
透明の球体から何本もの細長い金属の腕が伸びる『タコ型』の何か。
それが、穴からウジャウジャと湧いてくるではないか!!
「見間違いじゃないよな、あれは……奴らは……中に乗っているのは宇宙人だよな!?!?」
コリンズの言う通り、確かに球型のガラスの向こうに、これまたタコのような顔面をした生物が見えている。
しかも彼らの操るタコ型マシーンは、宇宙空間を漂っていると言うよりはむしろ……壁に這うような動きをしている!!
そう、彼らは『銀幕』とやらにしがみついて、開いた穴を塞いでいる途中なのである。
そして彼らは、月軌道のCSMと今にも着陸しそうな月着陸船イーグルとに、気づいてしまった。
次の瞬間……
「「「うわあああああああ!!!」」」
三人は、船もろとも、
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穴は無事塞がったようだが……
「ああああああああ!!!! 一三八億年かけて仕込んだドッキリがあああああ! 『【
よほど悔しいのか、子供のように泣き喚く、
「でもさ、総督さんよぉ。俺たち三人が、黙っていればいいんだよな? でもって、月面着陸の瞬間と同じ状況に、俺たちを戻してくれ。通信は切れたままだから、多分まだNASAにも、地球のみんなにも、俺たちが月の裏側で火星人に拘束されているだなんて、気づかれていない」
コリンズは、やけに物分かりが良い。
「いいのかマーズ? 協力してくれるのかマーズ?」
総督は、その
「ああ、いいぜ、ていうか……いいよな? 船長も、オルドリンも。このまま俺たち何もされずに生きて地球に帰してもらえるわけでも無いだろうし」
オルドリンは、
「まぁ、俺はいいよ」
承諾した。
アームストロングは、
「…………」
何か言いたげだが、言えずにいるようだ。仕方なく黙認、と言うことだろうか。
「地球人よ! 恩に着るマーズ! そうだ! それなら、ぜひお礼がしたい。何でも言ってくれ!」
総督は、意外にも義に厚く、そう申し出た。
「何でも、いいのか?」
間髪を容れず食いつくコリンズ。
「もちろんマーズ!」
「そうか、それなら……」
そこで、待った、が入った。
アームストロング
「おい待てコリンズ。緊急時の全決定権は船長である俺にある。よって、お礼に何をしてもらうかは、俺の意見が最優先とされる」
アームストロングはそう言って、腕組みをして仁王立ち。
「いやー船長、悪いが選択肢は一つしかないんだよなぁ……」
意味深長なコリンズ。
「何だと、どう言うことだ?」
「実は……」
コリンズは、
総督顔負けの、
必死の形相で、
こう懇願した。
「帰還用のCSMの燃料が足りないんだ!!!! 月軌道に乗るのに、使い過ぎちまってよぉ……。だからお願いだ、燃料を恵んでくれ!!!! このドッキリのことは、
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配給 ユニバーサル・スタジオ・マーズ
制作 ムーンエンターテインメント
撮影 前哨基地『
製作 軍神マルス・アレス・グラディウス
製作総指揮 『月の背』総督バレール・ノムリ
スペシャルサンクス マイケル・コリンズ
バズ・オルドリン
ニール・アームストロング
THIS DOKKIRI WAS DIRECTED BY KAGAKURA SOUSAKU.
〈完〉
疑惑の銀幕 加賀倉 創作 @sousakukagakura
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