7話 初体験、巧のお友達

「あっ……なんか、ごめん……!」

「な、なんで謝るんですのっ?」


 俺も何が悪いのか、分からない。ただ癖で謝ってしまった。女心というものを理解していれば、こんな変な空気にはならなかっただろう。


「……なんか嫌なこと、言っちゃった?」

「別に、嫌なんかでは……」


 良かった。この状況で目の前で嫌なんて言われたら俺が傷付いてしまう。


「ああいう言葉は、恋人とかに言うものではないんですの?」

「えっ! そ、そうなの……?」


 なんという失態だ。クラスメイトの女子に「2人なら楽しめる」なんて言っちゃった……。今の俺は多分、顔を真赤にしているんだろう……。なんだか体が熱くなってきた……!


「なんか、恥ずかしい…な」

「さっきの私がまさにアナタと同じ気持ちでしたわ」


 腕を組みながら、そっぽを向く。


「ま、まぁ…嬉しかった……ですわ」

「え……」

「私にもこういう友達が出来たんだなって……そう考えると嬉しいです」

「とも、だち……か」


 俺、友達だったんだ。自分ではただのクラスメイト、ただの部活仲間だと思っていた。だが、彼女からしたら俺は『友達』らしい。

 それに、今思えば俺は下の名前で呼ばれているではないか。なぜ名前で読んでいるのかは分からない。なんせ友達ができたことないからな。友達だからそう呼んでいるのか、何も考えずにそう呼んでいるのか。俺は前者の方だと考えよう。

 友達がいない俺からしたらどのラインからが友達で友達じゃないかなんて分からん。でも、この人なら友達にしたいと思える。ちょっと変なところはあるが、愛嬌はある。男子受けも女子受けも良い。俺みたいな陰キャでは到底仲良く出来ないような人だ。

 友達なら名前で呼んでみろ、高城巧! 今こそ男気を見せるんだ。


「あ、ま…ままま」

「なんですの?」


 彼女の少し呆れたような顔が、余計に俺を焦らせる。


「ま、真昼……」

「きゅ、急になんです…!」

「俺と、友達になってください!」


 教室のざわついた声に、俺の声は埋もれてしまう。彼女は俺が何を言ったのか理解できているのか。そこが心配であったが、彼女は少し間を開けた後、答える。


「ほんっとうに、なんですの!?」

「え、いや。俺と友達に……」

「私とアナタはもう友達でしょ? 当たり前なこと言わないでください」


 思ってた反応と違ってた……。そうか、めっちゃ恥ずかしいな……俺。恥ずかしすぎて、もう泣きそうだよ……。


「今日の巧さんは変ですわ。変なこと言ったり、急に名前で呼んだりして……」


 髪を右手で梳かしながら、頬を赤らめる。


「もう…………わ」


 小さい声で何かを言う。その言葉はうまく聞き取れなかった。彼女は頬と耳を赤くし、俺に横顔を見せる。チラチラと横目で俺を見つめ、唇をゆっくりと動かす。


「は、早く遠足の計画を考えますわよ。巧さん!」

「う、うん…! そうだね、真昼……!」


 自分は人として、なにか成長したような気がした。


ーーーつづくーーー

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帰宅部には女子が多すぎる! @chen-hirai

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