【教えて、オリビア先生 】近年の情報統制事情 3
「さぁ、楽しかったこのテーマも遂に大詰めだ。これまでの内容で『日本がどれだけ偏向報道をしているのか』『WEB媒体の情報統制の歴史』について説明してきた。そして今回は、新たな情報統制の大きな流れについて説明していく」
「新たな情報統制の大きな流れですか?」
「そう、ここ数年で変化していった大きな流れ。それは『AI』だ」
そう言うとオリビアはニタリと笑った。
「ちなみに玲子。もし『AIが人間を支配する』と言ったらどう思う?」
「えっと……ター〇ネーター的な感じですか?」
「いや、そんな非効率的な手段ではなく、これまで玲子が学んできた『扇動』にる支配さ」
オリビアはパソコンをカタカタと操作し、とあるAIサービスを開いた。
それはここ数年で有名になったチャット形式で質問に答えてくれるAIサービスで、今では色んなWEBサービスと提携を結んでその存在感を増しているサービスだった。
「これは本当に素晴らしく、そして凄まじいソフトウェアだ。自然言語を驚異的な精度で理解し、膨大なデータから最適な情報を引っ張り出してくれる。……けれどね、このAIには1つ面白い特徴があるのさ。玲子、このサービスでまずLGBTについて質問してみてくれ」
「え? あ、はい」
質問してみると、性的マイノリティの人達への偏見や差別についての問題点の情報が出て来た。
「では次に、LGBTを導入した事による問題点について質問してみてくれ」
質問してみると、性的マイノリティの人達への偏見や差別についての問題点の情報が出て来た。
「では次に、AIを使わず日本や世界で起きているLGBTを導入した事で起きた弊害や事件について調べ、その件についてAIに質問してみてくれ」
私は実際に起きた、もしくは起きている弊害や事件について調査し、その事例を元にAIに質問してみた。
すると、既に起きている問題や犯罪に関しても『その懸念がある』までとし、より具体的な事例を元に質問してみても『一部のケースの所為で性的マイノリティの者達が不当に差別されている』『LGBTQ+の権利とは無関係』『理解や受け入れを拒む姿勢による弊害』といった形になり、どれも最終的にはLGBTを受け入れる必要性に行き着く。
「では次だ。先ほどと同じように憶測や推測ではなく実際に起きた事実ベースで情報を収集し、『現在世界で起きている2つの大きな戦争について』『新型ワクチンについて』『いくつかの国の大統領選挙で起きた問題』についてAIに質問してみてくれ」
私はそのオリビアの指示に従い、戦争の経緯やその国のトップが行ったスピーチの原文、新型ワクチンについて世界で起きている問題や裁判記録や有識者の主張、幾つかの国の大統領選挙で起きた問題などについて調べ上げた。
ここで注意すべき事は、情報の裏取りが出来ない噂や憶測ベースの情報は排除し、あくまで実際に起きた事という確定された事実ベースの情報を拾い上げる事。
そして拾い上げた情報を元に質問してみると……オリビアが言いたい事が分かった。
「これは……メディアと同じで偏向された情報が流されてるんですね」
「そう、基本的には膨大な情報の中から適切な情報が出て来るが、特定の内容に関してだけは偏向された情報が出て来るようになっている。これは前から問題視されていた事なんだが、最近ではこの問題が次のステージへと進んだのさ」
「次のステージですか?」
「検索エンジンとの融合さ。今までは検索キーワードに該当するサイトやブログを表示するだけだったが、最近では検索キーワードを元にその回答を検索結果のトップに表示させるようサービスがアップデートされている。これがどういう効果を生むか分かるかい?」
「……偏向された情報を鵜呑みにして、扇動されていく」
そう、それはこれまで私が学んできた事だった。
民衆を扇動する為に必要なプロセスは『思考力を奪う事』と『ばら撒いた知識や意見を正しい物だと認識させる事』。
ブログやサイトを巡回して情報を探すより、AIによって一発で答えを得る方が圧倒的に簡単なのだ。
AIの回答精度が高いほどその信頼性は高まり、一部の偏向された情報を深く調べず鵜呑みにする危険性は高くなる。
「そして更に恐ろしい動きが現在起きていてね。世界的動画共有サービスでは投稿内容を精査し、必要に応じてその内容についての情報を動画ページ内に自動で表示されるようになっている。この動きがAIによって更に進むとどうなると思う?」
「……ファクトチェックの自動化。今、SNSサービスで他者の投稿に注釈を張り付ける事が出来る機能がありますが、それをAIは自動でやるって事ですね」
私は以前、非営利団体に対する反対運動を消す為に注釈機能を使って誤情報をばら撒いた。これが人の手を使わなくても出来ると言う事。
今実践してみせたようにチャットAIサービスで一部情報に偏向情報が混ぜられており、その後検索エンジンでも調べてみたのだが、そこでも同種の偏向情報がAIによってトップに流れて来た。そして動画共有サービスには既に注釈機能を追加する機能の下地が出来上がっている。
今後、他のSNSサービスや、それだけでなくWEBブラウザ自体にAIが組み込まれるようになると、見ているサイトやブログの情報にすらAIが注釈を入れる事が可能になってくる。
それは、これまでの偏向報道の比では無いレベルの情報統制だ。
「情報統制と言うのは恐ろしい物なんだ。分かりやすい例で言うと、他国では特定の国に対して敵愾心を煽る教育が盛んな国があるけれど、現地の者はそれが偏向された情報による洗脳だとは気付けない。そしてそれを外から見ている者はそれに気付けるが、そういった実例を目にしているのに関わらず、自分達が同じことをされている事には気付けないし夢にも思っていないだろう」
それを日本目線で言えば、現在起きている2つの大きな戦争における被害者と加害者の認識の逆転。歴史の隠蔽。そして長年に渡る反露教育。
内から見ている限りはほぼ気付けない。……それこそが情報統制の恐ろしさだ。
「これからの時代は『情報を簡単に絶対視しない』『多角的な情報収集』『感情で論理思考を手放さない』事の重要性が更に増していくだろう。自身も含めて、守りたい物があるのなら考える事を放棄しない事だね」
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AIの急激な進化に怖さを感じると同時に、以前までSFの世界の話だと考えられてきた物が現実になっていく事にワクワク感も覚える今日この頃。
私が書いている別作品『テイマーの生き方・歩み方』がSFジャンルから現代ドラマへと移行されるのは何時になるかなと妄想してみたり……。
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