【教えて、オリビア先生 】近年の情報統制事情 2
「さて、今日は先日の予告通り、動画共有サービスやSNSサービスで起きた情報統制の歴史について説明して行こう」
「オリビアに小説や映画のようと言わしめた歴史……気になる様な怖いような」
それからオリビアは、どういった経緯でそれらサービスで情報統制が行われて来たかを話し始めた。
某世界的動画共有サービスでは以前から一部ジャンルの情報を投稿すると動画を非公開にされたり広告をを取り下げられたりしていたのだが、ある時を境にそのやり方が過激になっていった。そのある時と言うのが……とある大国の大統領選挙。
その大統領選挙では数々の問題を起こし、多くの者が動画共有サービスやSNSサービスを使った情報配信していたのだ。
「この大統領選挙は本当に現実にこんなあからさまな事が起きていたのかと驚くような事のオンパレードだったからね。その後の展開についても可笑しいやら呆れるやらといった感じさ」
「具体的にどんな事があったんですか?」
「機会集計の結果、投票先が変わっている。外部から持ち込んだ投票用紙を混ぜて集計。集計会場の窓に目隠しを掛けて集計。二大候補の内の1人を応援していたインフルエンサーを逮捕し、もう1人の候補を応援していたインフルエンサーはほぼ同じ内容の投稿にも関わらずお咎めなし。これ以外にも一話ではとても纏められない程の事があったが、その中でも一番印象に残っているのは議会襲撃事件だね」
議会襲撃事件。日本国内の報道では一人の候補者がスピーチで支持者を煽った事により起きた事件とされているが、その事件はそんな単純な物では無かった。
まず大前提としてその一人の候補がスピーチしていた時間帯と、支持者が襲撃したとされる時間のタイムラインに無理があり、そもそも煽られて襲撃という理論が成り立たない事。
そしてその問題が起きてすぐ、その候補者は支持者達が事件に巻き込まれる事を危惧してSNSで「家に帰るんだ」と投稿したが、その投稿はそのSNS運営から何故か『危険な投稿』と判断されて削除される事に。
他にも様々な現地の者からの証言もSNSに投稿されたのだが、その襲撃事件や選挙の不審点について投稿したアカウントの多くが凍結処理されるという事件が発生。その所為で逆に現地SNSは更に大炎上する事になった。
その後、この襲撃事件について大きく状況が動く。……それまで提出を拒否し続けていた監視カメラの映像がリークされたのだ。
その映像では、本来であれば襲撃者を食い止めるべき警備の者が支持者達を誘導して議会施設内を歩く様子が映し出されており、支持者達は暴れる様子もなくその警備の者に付いて行っているだけだった。
更に、支持者の暴動によって死んだとされていた警備の者も一緒に居る様子が映し出されており、その者の死因が暴行によるものではなく病死であった事もその後に判明した。
ちなみにこのリーク映像を自身の番組で報道した司会者はその後番組を下ろされる事になり、現在は多くの支持者に支えられて自力でインタビューとSNS媒体を使っての独自報道活動を続けている。
日本国内のテレビや新聞、更には様々な大手ニュースサイトがこういった事実を隠し、現地の事実情報とは異なる情報を配信してこれらの大統領選挙に関する情報はデマとして処理をした。
特にこの時期のニュースサイトやアプリの動きが激しく、一部ニュースサイトでは記事へのコメント機能を一時凍結したり、ニュースアプリではその時期から完全にコメント機能を削除したりなどの手段をも執っている。
……そしてそれ以上に過激な展開を見せたのが某世界的動画共有サービスとSNSサービス達だ。
まず動画共有サービスは利用規約すらも変更し、この選挙の不審な部分について言及するアカウントを凍結処理すると明言し、そしてそれは実際に実行に移された。
そして世界的に利用者の多かった短文を気軽に呟く事が出来るSNSサービスも同じように大量凍結や、タイムラインに特定の投稿を表示させない通称『シャドウバン』という行動を行った。
「ここからの民衆の流れはその国と日本では少し異なっていてね。その国の者達は政府からの要請でユーザー情報を提供したり、投稿を規制する指示には従わないと明言したSNSサービス『テ〇グラム』に流れて行って、日本では流れるコメント機能付きの某動画共有サービスが多くのファンを抱える情報配信者達に営業を掛けて取り込んでいったんだ。……そして更に大きい変化は、とある人物によるSNSサービスの買収だね」
その人物は短文を気軽に呟く事が出来るSNSサービスを買収し、それまで起きていた過激な情報規制やトレンドランキング操作をある程度防止する事に成功した。
だが、その時期からその人物に対する情報源のはっきりしない噂やスキャンダルが飛び交うようになり、その者に対する評判と同時にその者が所有している会社の株価が大きく下落する事となる。
「色々問題も起きましたが、流れる先があったのは幸いでしたね。もし無ければ完全に情報が遮断されて、民衆が情報を得る手段が無くなってしまいますから」
「いや、事はそう上手く行っていないんだ。まず現地の者達が流れた先である『テ〇グラム』の創設者は、犯罪の温床となるアプリを作りだしたとして逮捕される事となった。そして営業を掛けて多くの情報配信者達を取り込んでいった日本の動画共有サービスは大規模なハッキングによる大打撃を受けた。そして、買収されたSNSサービスも『国民に自由な発言を許している』という意味の分からない理由から利用規制を掛ける国が出るなど現状厳しい状況に置かれている」
買収されたSNSサービスは日本でも利用者がかなり多いのだが、現在日本国内では運営サイドからではなく利用者サイドからトレンドワード操作をする集団や、タイムラインを荒らして必要情報をトレンド検索結果に表示させないようにするインプレゾンビという者達も出てきていた。
「情報は確実に手に入れづらくなっているんですね。……そんな状況でその大国の大統領選挙は大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫では無いだろうね。既に機械の誤作動によって投票先が変わっていたとか、印刷されているQRコードが入れ替わっているなどの問題が起きている。それに前回の機械集計での集計結果の誤りを受けて、今年は手集計を行うと明言した州が幾つかあるんだが……なんと激戦州と言われる州では、裁判所からこの手集計の差し止め命令が下される事となった」
「……何でですか?」
「手集計はスタッフへの負担が大きいからという理由らしいね。現地スタッフを労って態々裁判所が手集計を禁止してくるなんて、なんて優しいんだろうね。涙がちょちょ切れる思いさ」
「……」
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七瀬 莉々子「簡潔に纏めるつもりなのに文字数がどんどん長くなっていく(泣 ……そしてもうちょっとだけこのテーマは続きます」
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