3章:優越感の悪魔
14. 玲子の初仕事
「はぁ~、最近は本当に暑いね。脳みそが茹で上がってしまいそうだよ」
「だからと言って、最近ジュースの飲み過ぎですよ」
猛暑の中、何処かへと出かけていたオリビアが帰ってくると、早々に服を脱ぎ散らかして下着姿になり、ドスンとソファに身を預けて帰りに買ってきていたらしい炭酸飲料を凄い勢いで飲み始めた。
オリビアは炭酸飲料がとても好きな様で、常に色んな種類の炭酸飲料が冷蔵庫にストックされており、食事中も含めて飲む物は基本炭酸飲料だ。
「まぁまぁ、そう硬い事を言わないでおくれよ。それに、玲子だってよく飲んでるじゃないか」
「……オリビア程では無いです」
「はは、何とも都合の良い言い訳だね」
飲み過ぎだとオリビアに注意した手前言いづらいのだが、正直に言えば私も炭酸飲料は結構好きな方で、日常的によく飲んではいる……オリビア程ではないが。
けれど、これは反動のような物でもあるのだ。私の両親は炭酸飲料を全く飲まない人達で、お父さんは糖質の多い飲料は体に悪いという考えの持ち主であったし、お母さんは炭酸が痛くて飲めないらしかった。
炭酸が痛いという感覚は分からないが、友達にも1人痛くて飲めないという人が居たので恐らく体質なのだろう。
両親がそんな感じなので、当然私も炭酸飲料を飲む機会は必然的に少なかった。
飲む機会と言ったら、友達と遊びに出かけた時ぐらいだろう。そしてそんな状況が、オリビアに引き取られてからは一変した。
常に大量のストックがされている炭酸飲料。目の前で昼夜問わずゴクゴクと炭酸飲料を飲み続けるオリビア。飲み過ぎを咎める者が居ない環境。これはもう不可抗力だと言っても問題無いだろう。
炭酸飲料から両親との生活を思い出しその思い出に浸っていると、ふと気になる事が出て来た。
「そういえばオリビア、紙面上で私の養父となっている人とは今どうしているんですか?」
「ん? どうと言われても、どうともしてないよ? 結婚する事以外は不干渉の約束だったからね」
「不干渉の契約の元での結婚って、とんでもない話ですね……」
私のフルネームである水無 玲子の水無は父の姓だ。
そしてオリビアの養子になる際は当然オリビアの性を貰う事になるのだが、なんとオリビアは。
『父親から受け継いだ性を手放したくないだろう? だから私が水無になっておいたよ』
と言う理由で水無の性を持つ日本人男性と結婚していたのだ。
そして相手男性は紙面上の結婚だけでそれ以外は基本相互不干渉という契約を結んでいたようで、私も養子縁組をする際1度だけしか会った事が無い。
オリビアの行動は何もかもがメチャクチャだ。
「もし会いたいなら遠慮なく言ってくれ。あっちは嫌がるだろうけど、なに、ちょっと脅してやればどうとでもなる」
「いえ、結構です。止めてあげて下さい」
オリビアは「そうかい?」と一言言って炭酸飲料を飲み干していった。
……
…………
………………
「さてと、英気も養った事だし授業を始めようか」
炭酸飲料を飲み干したオリビアは、まだ暑いと冷凍庫から取り出したアイスを食べだし、その後体が冷えたと布団を被って昼寝を始めた。
きっと私は今後の人生においても、オリビア以上の自由人に会う事はないだろう。
「悪魔になる方法って言われてましたけど、具体的に何をやるんですか?」
「具体的に言うとね……玲子には私の方に来ている依頼をいくつか熟してもらおうと思っている」
「……いきなりですか」
最初の授業では両親を中傷した者達をターゲットとしたデモンストレーションを行い。その次は実際に情報の海の中で悪意を振りまく悪魔達を観察。そして今回は遂に実践を行うらしい。
オリビアが以前話していた仕事内容を思い出しながら、いきなり実践なのかと少し怯んでしまう。
そんな私の様子を見たオリビアは底意地の悪そうな笑顔を浮かべ、今回の依頼内容を告げた。
「そして今回、玲子にやってもらう仕事は『火消し』さ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます