【教えて、オリビア先生 】経済と税金 2
「さて今日は『如何にして政府は日本経済を壊しているか』について説明するが、その前に景気についてイメージを共有しようじゃないか。玲子は景気と聞いて何を想像する?」
「景気ですか? 改めて聞かれると漠然としたイメージしか出て来ませんが……株価とかですかね?」
「そういうイメージを抱いている者は多いね。よくニュースでも株価が上がっただの下がっただのと流し、総理大臣もが株価上昇を理由に景気が回復しているなどと言っている事も原因だろう。……だが、実際には株価と景気に直接的な関係はない」
そう言うとオリビアはパソコンをカタカタを操作し、過去から現在までの株価推移を表示した。
「確かにバブル時期は株価の上昇が凄まじく、あの時期は何の下調べもせずとも適当に株を購入していれば儲かっていたし、実際に景気もかなり良かった。そしてその後バブルは弾け株価も急落、多くの企業が倒産に追い込まれた」
「えっと、今の話を聞くと株価と景気が関係ないとは思えないんですけど……」
「じゃあこのグラフを見てみるといい。バブルが弾けた後の株価急落後と比べれば、現在の株価は大きく上昇している。……玲子、この株価上昇率に見合うだけの景気の良さを今の日本に感じるかい?」
「……」
まず大前提として、未だに景気とは何なのかを理解出来ていない私だが、現状日本がこの株価上昇率に相応する程の好景気だとは思えなかった。
少なくとも、人口が減少している能登半島の復興の為にお金を出す気は無いと財務省が言い切ってしまうような状況で、この国が好景気だとは言えないだろう。
「さて、現状認識を共有出来た所で結論を述べさせてもらおう。景気とは『国内で巡るお金の速度』だ。つまり、多くの者が沢山稼いで沢山使えば景気は良くなり、多くの者の収入が下がり支出も減少すれば景気は悪くなる。……そして現在日本で株価が上昇しているのにも関わらず、景気が悪くなっているのにはカラクリがあるのさ」
「カラクリですか?」
「株主の違いだよ。バブルの時は多くの自国民がそのバブル経済に乗る為に自国の株を大量購入していた。その為、企業の利益は株主である自国民に還元されていたんだ。……けれどね、現在日本の株を大量に購入しているのは海外資金になっている。だから、企業が儲かろうと、その利益の内かなりの割合は日本国民に渡るのではなく海外に流出してしまうのさ」
現在総理は各国を巡り日本への投資を勧めているそうだ。そして総理は日本に投資特区を幾つも作り、海外投資家に対して多くの優遇処置を設けると世界的に公言してしまっている。
元々投資額に応じて永住権付与などの特典があった国でも、近年では移民問題等の理由により廃止している国が出てきているのだが、日本はその真逆をひた走っているそうだ。
「SNSなどではよく『給与が上がらないのは企業が悪い』『安月給しか払えない企業は潰れた方が全体的な生活水準は上昇する』なんて事を言っている者達が居るが、これは経営と政府が行っている政策に関する見識が圧倒的に不足している意見だ。実際に他国では考え無しに最低賃金を上昇させた為に多くの企業が廃業し、景気が更に落ち込んでいる国も存在している」
「それじゃあ、景気を良くする為には日本国民が自国の株式に投資して、海外の投資家を追い出せば良いんですか?」
「いや、それだけじゃ今の日本の景気は良くならないし、海外投資家からの侵食が深い今の日本でそれをやれば多くの企業が廃業に追い込まれるだろう。まずは日本国民の投資先を海外ではなく国内に向けさせる事からだね。そして、今日本の景気回復に最も効果的なのは減税だ」
そう言うとオリビアはこれが本題とばかりに話を進めた。
「前の話でも言った様に、経済で重用なのは【物流】と【貨幣の流通量】なんだ。度重なる法改正で政府は見事に物流も壊してみせているが、より深刻なのが国内で巡っているお金の量が減少している事なんだよ。そりゃそうさ、海外勢による企業買収を促進させている上に『財源の為に』などと理由を付けて国民からお金を搾り取っているのだからね」
オリビアは呆れるように、小馬鹿にしたように話を続ける。
「税には国内を巡るお金を吸い取り、景気を調整する機能が備わっている。巡っているお金の総量が増えすぎても江戸時代の藩札の二の舞になるからね、税によってその総量を調整する事は間違いじゃない。けれど、その総量が圧倒的に不足している現状で『財源確保』を理由に更に増税して絞り取るのは理屈に合わない。完全に国民を舐め腐っているのさ」
「……それで、今の日本の景気回復に効果的なのが減税なんですね」
「そうだね。具体的には消費税を含むいくつかの不要な税制度を廃止し、その他の税率も現在の経済状況を鑑みて適切に調整する事だ。勿論他にも派遣社員制度の廃止だったり、農業畜産に対しての大規模な支援制度だったりと出来る事は色々あるが、まず真っ先にしなければならない事は税制度の大幅変革だろうね」
そう言い終わるのと同時に、オリビアは何かを思い出したような顔をする。
「そう言えば、株式関連で面白い話があるよ」
「面白い話ですか?」
「どうやら日本政府は政府所有のNTT株の売却を考えているらしい。それも『防衛費の財源確保』の為にね」
「それは……どうなんですか?」
「土地を売国し、水を売国し、漁業権を売国し、電気を売国し、そして遂には通信インフラまで。防衛とはいったい何なのだろうね」
「……」
こうして今回の講座は一区切りついた。
オリビアはやっと終わったとばかりに息を吐く。
「ふぅ~、やっとこの講座も終わりだ。このテーマは全体像を理解する為に話す必要のある内容の範囲が広くて疲れる」
「でもお陰で色々分かりました。……今の日本の景気が良くなり様がない事も含めて」
「そりゃあ良かった。けど分かってると思うが、今手に入った情報も鵜呑みにしてはいけないよ。情報というのは酷く曖昧で、不定形で、時にその真偽すら変わっていくものだからね。重要なのは自分で調べる事と、そして自分の頭で考える事さ」
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皆で学んで考えよう、レッツ経済学(。+・`ω・´)シャキーン
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