【教えて、オリビア先生 】経済と税金 1

このコーナーは完全に本編とは独立した空間となっており、本編とは一切関係の無いコンテンツとなっておりますのでご注意ください!

※ご興味の無い人は飛ばして頂いて問題ありません


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「さて、よく分からないけど唐突に変なコーナーが始まったみたいだね。どうやらこのコーナーでは何となく作者が説明したくなった内容を、教師役の私と無知な生徒役の玲子で解説していくコーナーとなっている様だよ」

「はい、無知な生徒役の玲子です……無知である事は否定しませんが、何となくイラっとしてしまうのは若さ故でしょうか」

「自分で言うのは許容出来るけど、人から言われる事には許容出来ないというのはよくある話さ。それに前々から言おうと思ってはいたんだけど、玲子の言動には全く若さを感じないよ。少なくとも現役女子中学生というのは冗談だろう?」


 私はオリビアのそんな失礼なツッコミを華麗にスルーして、本題について話を進める事にした。


「えっと、今回のテーマは『経済と税金』ですね。そう言えば、オリビアは本編で『税金は政府の財源』が嘘の常識だと言ってましたけど、これはどういう意味なんですか? 税金って社会保障とか防衛費とかを賄う為に取ってるんだと思ってましたんですけど」

「確かに民から徴収した税を財源としていた時代はあった。けれどそれは、紙幣がまだ存在しない大昔の話さ。現代では貨幣を紙幣としていくらでも刷れる様になり、税の役割は大きく変わったんだよ。……そうだね、江戸時代の例を出せば分かりやすいだろう」


 経済において重要な要素な何か、オリビアはそれを【物流】と【貨幣の流通量】だと言う。

 そんな中、物の行き来が盛んになっていた江戸時代において、経済の巡りを悪くする要因があった。それが貨幣不足だ。

 当時、金銀の埋蔵量と製造速度に限度がある硬貨だけでは拡大していく物流を十分に満たす事が出来ず、更には土地を収める側としても貨幣不足は悩みの種であり、税によって民から貨幣をかき集めるにも限度があった。

 

 そうして頭を悩ませた結果生まれたのが【藩札】という物で、これは今で言う紙幣のはしりの様な物だった。

 これによって貨幣不足が解消され、経済の巡りを悪くする要因がなくなり好景気になるかと思われたが、結果を見ればそうはならなかった。

 金銀の様にその価値が裏打ちされておらず、更には当時の色々な事情もあり大量発行してしまったが為に藩札の価値が暴落、それによって物価の上昇が起きた。……つまりインフレだ。


「全ての藩札が失敗だった訳では無く、中には上手く通貨として動いていた事例もあるんだが、そこまで話すと面倒なので興味があるなら自分で調べてみると良い。でだ、重要なのは紙幣が存在しない環境においては必要な貨幣を確保するために税が必要になるが、紙幣によって貨幣不足の心配がなくなった現代において、税を取る理由が異なってくると言う事だ」

「つまりインフレを抑える為って事ですか?」

「そう、それも税の持つ機能の1つだ。他にも税の種類によっては自国の産業を守る為だったり、民衆の行動を制御する為だったり色々な機能を有しているが、それら税の持つ機能の中に『政府の財源』なんて物は存在しない。極端な事を言ってしまえば、取った税収より使われた金額が上回っていても良いんだ。だが、作られた常識によって、国家運営のイメージが家計簿のような感覚で多くの者が捉えてしまっている。……あぁ、ちなみにこれは通貨発行権を持つ政府に対しての話で、通貨発行権を持たない地方自治体に関しては地方税収が財源である事に間違はない」


 そこまで言い切った所で、私は少し疑問に思った事をぶつけてみる事にした。


「でも、取った税収より使う金額が多かったらハイパーインフレとか起きるんじゃないんですか?」

「ハイパーインフレか、それは国債の話でもよく出る話題だな。少なくとも今の日本であれば、国内の通貨流通量を加味しながらの適切な通貨発行の増加をすれば、逆に経済は活性化するだろう」


 世界の歴史を紐解いて行くと、幾つもの国でハイパーインフレが起きている。

 けれどその殆どの場合が国外への賠償金や借金を安易な通貨発行で補填しようとしたり、または経済制裁や貿易赤字による物らしい。

 あとは戦争や内戦によって国家経済が崩壊し、それを過剰な通貨発行で補填しようとした為に更に経済を混乱させてハイパーインフレを起こした例もあるそうだ。

 ちなみに、ハイパーインフレで有名な国であるジンバブエは、財政赤字を安易な通貨発行で凌ごうとした事が通貨暴落の切っ掛けであったが、その後行った白人の持つ農地強奪の合法化、外資系企業が保有するジンバブエ企業株式の強制徴収などが経済に止めを刺したらしい。


 そして今の日本の状況なのだが、日本は世界一の資産大国であり、国内通貨である円の信頼度も高く世界4位の流通量を誇っている。そういった理由もあり、日本円の持つハイパーインフレへの耐性はかなり強いとのこと。

 国内メディアでは大量の国債が招く経済危機について不安を煽るような事をよく言っているが、現在発行されている国債のほぼ9割が国内所有であり、最大の所有者が日本銀行である現状、更に大量の国債を発行して日本銀行が買う分にはそれが原因でハイパーインフレが起きる事は無いそうだ。

 

「国内を巡っている通貨が減少の一途を辿っている現状、多少通貨を多く国内に流した所でハイパーインフレは起きないが、もし起きるとしたらそれは戦争や経済制裁、もしくは日本が多額の資産を所有している米国の経済破綻による物になるだろうね」

 

 オリビアはそこまで言うと、瓶に入ったレモネードをゴクゴクと飲み干し一息ついた。


「ふぅ~、ちょっと喋り過ぎて疲れてしまったよ」

「今日はこのぐらいにしておきますか?」

「ん~、そうだね。今日はもう疲れたし、続きは明日の第二話に持ち越す事にしよう」


 そう言うとオリビアはニタリとした笑みを浮かべる。


「明日の話す内容は今回の講座のメイン『如何にして政府は日本経済を壊しているか』だ」


 

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 藩札については実を言うとその種類は多く、そして単純に貨幣不足への対応というだけでなく、他にもいくつか理由があったりするのですが、それを解説すると大変な事になってしまうので大幅に割愛しました(汗

 ご興味がある方は是非藩札の歴史について調べてみて下さい!

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