第24話 昨夜の顛末
「で、その後どうなったの?」
スーパーカツナリの裏手、トラックが荷物を吐き出す横にある従業員用の休憩スペースで、俺は万里華さんに昨夜の顛末を話している。
曇り空でも7月末の昼前ならば蒸し暑い。
「その後はですね、説明が難しいんですが、2人は見なしプレイを始めたんです」
俺の説明に興味深そうに頷く万里華さん。
「その…玄関横の1.5mくらいの幅の姿見をですね、マジックミラーだと見なしまして……」
万里華さんが「うわー」と軽い悲鳴をあげる。
「これは一見鏡みたいだけど、このマジックミラーの裏には支店長の奥さんと娘さんがいて、冷めた目でこっちを見てるからねと……」
話しながらも、入行2年目の窓口担当早ひな子の吐息混じりの声が俺の耳に蘇ってくる。
「その後、命令された支店長は自分で下を全部脱ぎまして、その……彼女の手で…」
「後ろから?」
万里華さんは遠慮なく訊いてきた。俺は頷く。
「後ろから抱きしめたまま、前に手を回して……」
支店長は、入行2年目早川ひな子の手で果てた。鏡の向こうには、家族に加えて同じ銀行で働く同僚や、支店長と同期のライバルが覗いている設定になっている。娘ほどの年齢の女子行員から、焦らしプレイをされた後、恥ずかしい懇願をさせられる支店長は自分の父親と同年輩である。
何とも言えない気分になった。
「おっぱい大きかった?」
万里華さんの問いに俺は「あっ」と思わず声が出た。入行2年目早川ひな子の裸を見てないわ。下着姿さえ見ていない。
あの場所で脱いでいたのは、野田支店長のズボンとボクサーパンツの2枚だけ。見たのはおっさんの脚と股間だけですよ。
事情を聞いて、万里華さんがぶふって麦茶を吹き出す。
「幸運なんだか、不幸なんだか」
と万里華さんは俺に言う。
よくわからないという気持ちが俺の顔に表れていたのだろう。
「そんな恵まれたドラマ、中々見れないと思うよ」
休憩を終えて手を振って店内に戻ろうとする万里華さんは、
「その2年目の娘を探したりしちゃダメだからねー。
もし探そうとしてたら、あんたが夢精した事バラすから」
万里華さんは俺の目をじっと見ている。
じっと見返す俺と、遠くで製パン会社のトラックがバックする音。
「図星なんだww」
と万里華さんに笑われて、俺は耳まで赤くなった。
今日も俺は八百屋ダンジョンに向かう。
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