第15話 水魔法lv1 ⭐︎

 何匹くらい蟻を倒したのだろうか?

 どうやらマジックバッグは、中にらっきょうがいくつ入っているかは数えてくれないみたいだ。

 どうせこれだけちっぽけな野菜なんだ、幽体離脱の時間は短いんだろうな。左手の懐中電灯を振りながら、地下迷宮の周囲をぶらついてみた。


 やはり、暗闇は恐ろしい。ちょっとカツナリに寄って大きめのランタンみたいな電灯を買ったほうがいいかもしれない。

 こんな穴倉みたいなところで出口が見つからないのは怖すぎる。


 ふと足元を見ると、例のカードが落ちていた。リュックから割り箸を取り出して、ペロリとめくる。


【水魔法lv1】


 と書いてある。外れでは無さそうなので触ってみた。


『おめでとうございます。【水魔法lv1】取得しました』


 頭の中に声がする。

「試すにしても明るいところだな」


 不親切な機械女の声。しかし、謎が謎を呼ぶ今の展開を楽しんでいる自分がいる。進まねえな、ダンジョン攻略。


 階段を登り1層目に戻った。

 まずは定番


「ウォーターカッター!」


 伸ばした右手からは何も出ない。

 失敗してもめげない。誰もいないんだから……。じゃあ


「ウォーター!」


 右手のひらをぐっと広げて前に出す。動きはさっきと同じだ。

 すると、少し先、5メートル位の円形の範囲で小雨が降り出した。


「おおっ」と驚いて手を左右に動かすと、雨の範囲も左右に揺れる。オーケストラの指揮者になったみたいに肘を曲げると雨が近づいてきて、広げた手を狭めると雨の範囲が狭まる。試しに握り拳を握ると打たせ湯ぐらいの水になった。


「これは使えるんだろうか?」


 最後に打たせ湯の下に行き、水を飲んでみる。

 冷たくて美味い。


「これは使える」


 と手のひらを返してひとしきり試した後で、その辺のセロリとニンジンのゴブリンを刈った。女バスへのお土産が充分にできたところで、俺はダンジョンから上がることにした。


 さぁ今夜もちゃんと眠るぞ、と決心しながら、母親へ『ただいま、今日は【らっきょう】をゲットしました』とメッセージを送った。


『鷹の爪を買ってきて』


 との奇妙な返事が来る。

 なので『そんな珍味どこで売ってるの?』と俺は返した。


『馬鹿wwタカノツメは乾燥した唐辛子のことww』『マリカさんに聞けばわかる』


 と返事がきた。母親にwwをつけられるのは、ダメージがデカい。




【酢らっきょう】

①らっきょうを塩水に一晩漬ける。

②らっきょうの先端と根を切り取り、薄皮を一枚剥く。

③水分を拭き取り、瓶に入れる。少量の鷹の爪もこの時入れる。

④酢1.8ℓに対しざらめ1.2kgを混ぜ、熱して溶かす。

⑤らっきょうの瓶に注ぎ入れて漬かるのを待つ。


*最初の塩水の濃さや、酢とざらめの割合、瓶詰めした後の食べ始めの日数などは好みです。

 翔吾のダンジョン探索と同じく、試行錯誤を繰り返してみてください。

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