第8話 解決した疑問と新たな疑問 ⭐︎
ダンジョンから出た俺は、母親に『ただいま、セロリとニンジンのほかにダイコンを拾ったよ』とメッセージを入れる。
すると母から『サケほぐし買ってきて』との返事が来た。少しくらい心配してもいいだろうに、今日は死にそうになったんだぞ……。
八百屋2階のリビングのソファで背中を伸ばしながら、さっそくスマホでダンジョンについて調べ始めた。
まず、与えるダメージによってドロップ品の質が変わるのかの謎。ネットに載っていた答えは、当てはまるダンジョンと当てはまらないダンジョンがある、って答えに落ち着いていた。
当てはまるのは日本でも三割ほど、大きな所だと福島の郡山、大阪の八尾がこの与ダメージとドロップが比例するダンジョンなのだという。
次はスキルを選べないダンジョンは他にあるのかを調べる。一覧を見ると、国内には3か所ほどある。
有名なところで、福岡の久留米ダンジョン。ここでも箸でカードをめくる技は広まっていて、有用だけれど必要のないカードが出た場合は、周りの人に声をかけるなんて文化があるらしい。
そして特筆すべきはこの種のダンジョンでは、スキルポイントが割高で貯まるという事である。1.5倍で貯まるらしいが、外に出ると割り増しの分は消えるという切ない仕様なのだそうだ。
俺はスマホから目を離し、自分のステータスを見てみる。相変わらずよくわからないアルファベットと数字が並んでいて、一番上のレベルと一番下の幽体離脱の使用時間だけしかわからない。
ちなみに時間は0:14:00である。
今日倒せたゴブリンが12匹、オークが1匹だからゴブリンが1分ならオークは2分なのだろう。
最後に、昼過ぎは一撃で倒せたゴブリンが夕方に倒せなかった謎については、全くわからなかった。
「ちょっと早いけど、カツナリ寄って帰ろう」
ダイコンが重いリュックを背負ってスーパーカツナリに向かう。
「おっ、少年どうした?」
カツナリの横の小道で万里華さんに見つかる。万里華さんの私服は黒いノースリーブで、柔らかそうな二の腕が眩しい。
「母親のお使いです。ってか俺の名前は翔吾って言います。丸森翔吾」
年上の女性に少年と呼ばれる嬉しさは捨てがたいが、できれば名前で呼ばれたい。
「そうだ、よかったら食べます?」
リュックからニンジンとセロリを取り出した。彼女はそれをまじまじと見て、
「隆晴さん所の契約農家さんの野菜じゃん。まだ契約してたんだ」
叔父は契約農家と説明してたのか。万里華さんはありがとうって言うと、ニンジンとセロリをショルダーバッグに収めた。
「ウチの娘がさぁ、隆晴さん所の野菜じゃないと美味しくないって野菜食べないんだ。体の調子が全然違うんだって。
だから、ホント助かるわ」
万里華さんの言葉に、娘?と驚く俺。まぁこれだけ綺麗なら結婚してるよな…。
「シングルマザーって、娘に拗ねられると大変なのよ…」
続く万里華さんの話にあたふたする俺である。まぁ俺と目の前の美人さんとの間に、何かが起こるわけではないのに……。
「じゃあ、僕はお使いがあるんで…」
と万里華さんに手を振ってカツナリに入った。冷房が効いた店内が火照った体に気持ち良かった。
家に帰って、キッチンに野菜と鮭ほぐしを届ける。母親に万里華さんに野菜を渡した事を話すと「まぁセロリって使いづらいしね」って返ってきた。
明日からはニンジンゴブリンだけを狙おうかな。
【だいこんサラダ】
① ダイコンを細く千切りにする。
② ①を5分ほど冷水に晒す。
③ キッチンペーパーなどを使い水気をよく切って皿に盛る。
④ 鮭ほぐしを更にほぐして③に載せる。
⑤ お好みのドレッシングで食べる。
*水菜、ニンジンを入れても美味しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます