上司に土下座をさせられ、好き放題言われた新入社員。パワハラ上司をざまぁする!~捕まりたくない? もう遅い!!!! お前は完全に包囲されている!~【短編】

琴珠

短編

「バァァァカァァァァヤロォォォォォォ!! お前ェェェ!! 何度ミスしてるんだぁぁぁ!! ふざけるなぁぁぁぁ!! 糞無能がぁぁぁぁぁ!! 仕事舐めてんだろぉぉぉぉぉぉぉ?」

「も、申し訳ございません!」

「土下座しろ!」


 都内のオフィスで、40代の男性が20代の後輩社員に土下座をさせている。


「お前さぁぁぁぁ!! なあああああんで駄目なんかな!! おい!」


 この40代上司、名は【獄炎ゴクエン 地獄ジゴク】。

 普段からパワハラをしている、とんでもない社員だ。


 対して、土下座をしている20代社員は、【鈴木スズキ 佐馬サマ】という名だ。

 失敗をしたことで怒られ、更にそれが原因で失敗を重ねている。


「顔をあげろ」

「え?」


 顔を上げた佐馬に、地獄は尻を向ける。

 そのまま佐馬の鼻にそれを密着させた。


「おらっ! 食らえっ! 俺の屁を!」

「ぐあっ! くせぇ!!」


 あまりの匂いに、気を失いそうになるが、なんとか耐える。


「ヒャハハハハハハ!! 俺からのプレゼントだ!」


 思わず「くせぇ!!」と言ってしまった佐馬であったが、地獄の耳には入らなかったようだ。


「おっと忘れてたぜ! ついでにこいつをやるよ!」


 地獄は佐馬に向けて、小瓶を投げた。


「これは……?」

「俺の屁を詰めた瓶だ! ありがたく思え!」



「ふぅ、いいストレス発散になったぜ!」


 地獄は自分の席へ戻ると、スマホを手に取る。

 仕事をサボってスマホゲームをやろうとしていたのだ。


 だが……


『お前、最低だな』

「スマホが喋っただと!?」

『ああ。あまりにもお前が酷いことをしていたんでな』

「なんだと!? 俺に逆らうのか!? 俺のスマホの分際で!! こうしてやる!!」


 地獄はスマホを尻の下に敷き、そこで叫びながら屁をぶっ放した。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 10秒間、爆音の屁をスマホに食らわせた地獄はニヤリと笑う。

 スマホを右手に持って、喋らないのを確認しようとする。


 が……


『残念だ。俺に匂いは効かない』

「なんだと!?」


 地獄は、スマホを思い切り地面に叩きつける。


「ぶっ壊れろおおおおおおおおお!!」

『残念だ。今は特殊なオーラを身にまとっているんでな』


「なぁにぃ!?」

『俺を壊すには特殊な手順を踏む必要がある』


「それを早く言え!」

『言う訳ないだろ。14時に都内の高校の校庭で全裸になった後、今季流行アニメのOPを大声で歌いながら1時間踊って、その後思い切り地面に叩きつければ壊れるなんて、言う訳ないだろ……あっ! しまった!』


「ヒャハハハ!! 間抜けの馬鹿が!!」

『ぐぬぬ……や、やめてくれ……』


「やめる訳ねぇだろ!! もう遅い!! こうしちゃおれん!!」

『や……や……やめて……ください……』


「バァァァァァカ!!」

『なんで……? なんでそんなヒドイことするの……? やめてよ!!』


 必死に命乞いをするスマホだったが、それを無視して地獄は会社を飛び出した。


「よっし! 丁度あと数分で時間の14時だな!!」


 高校へ到着すると、服を脱いで全裸になる。

 スマホで音源を流すと、大声で歌いながら踊るのであった。


「なんだあれ!?」

「やべぇ! 先生に知らせねぇと!」


 校舎の窓から、授業中の生徒が顔を覗かせていた。

 だが、それでも無視して踊り続ける。


 社会人経験の長い地獄は、このくらい恥ずかしくもなんともなかった。


(長年社会で揉まれて来た俺を舐めるなよ? 佐馬の奴ならきっとこんなことできないだろうがな! 全く、最近の若いもんは根性が足りない!)


 地獄は得意げにニヤリと笑い、大声で歌いながら、ダンスを続ける。



 地獄には聴こえていないが。


「SNSにアップだ!」

「消されるぞ!」

「生徒の皆さん! そろそろ警察が来ます! 窓から顔を出さないでください!」


 こういった会話が校舎内に響き渡っていた。



「〇○○〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇~♪ 〇○○〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇~♪ 〇○○〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇~♪ 〇○○〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇~♪」


 地獄が歌って踊っていると……


「動くな!!」

「何っ!?」


 突然警察がやって来て、突然地獄を囲んだ。

 おかげで、ダンスをやめてしまい、本日はスマホを壊せなくなってしまった。


「け、警察の皆さん!? どうして!?」


 まるで危険人物を囲んでいるかのような反応に、地獄は焦りを感じていた。


「通報があって来た!」

「ちょっと待ってください! 俺が何をしたんですか!?」


 とここで……


「っらあっ!」


 地獄は尻内に隠しておいた爆竹を投げて、警察の動きを一瞬止めると、すぐに同じく尻内に隠しておいた煙玉で周囲の視界を奪った。


「なんだこれは!?」

「油断した!」

「どこだ!」


 この隙に地獄は警察から逃げ出し、鍵のかかっていない自転車を奪うと、そのまま高校をあとにした。

 下着やスーツは置いてきてしまったが、後で買えばいいだろう。


「くそっ!」

『大変そうだな』


「お前のせいでな! ……いや、まさかお前!! 俺をハメたのか!?」

『やっと気づいたか』


「このクズが!!」

『クズ……確かにそうかもな。だが、俺は電子機器に憑依する妖怪の一種でな。人間を困らせるのが仕事みたいなもんなんだ。人間からしたらクズだろうが、俺らからしたらクズじゃない。とは言っても、俺の仲間は皆最近はそういったことをしなくなったがな』


「だったらお前は、なぜ俺を困らせた!」

『お前と一緒だよ。時代について来れなかったのさ。昔は人間を困らせれば困らせる程偉かったが、今じゃそんなことをしている奴は上に消されるからな。俺も普段はもうそんなことはしていない。ただ今回は、あまりにも酷かったからな。つい見ていられなくなったのさ』


 とその時、地獄に新たな力が宿る。


「この力は……!?」

『まさか!? お前!!』


 【ダンジョン】というものをご存知だろうか?

 ゲームでよくあるモンスターが出てくるあれである。


 それがこの世界に1年くらい前から出現し、その影響で一部の人間は魔法使いに覚醒することができるようになっていた。


「ククク! 炎魔法か!!」


 地獄は炎魔法使いに覚醒した。


「負ける気がしねぇ!」


 地獄はスマホを右手に持ち、魔力をそこに込めると、スマホが燃え始めた。


『くっ! まさかこうなるとは! こうなっては、復活に一週間かかる!』


 スマホは爆発し、部品が辺りに砕け散った。


「ヒャハハハハハ!!」


 ご機嫌になった地獄は全裸のまま体に炎をまとい、その推進力で飛行をすると、人が寄り付かない廃工場にまでやって来た。


「遅かったな」

「なっ!」


 誰もいないと思っていたが、廃工場には1人の青年が立っていた。

 部下の佐馬である。


 なぜか一瞬、一歩後ろへ下がってしまった。

 あり得ないことだが、威圧感があったのだ。


「って、ビビるこたぁねぇか! 俺は炎使いに覚醒したんだからな!」

「だろうな。おかげでお前の居場所が分かった」

「どういうことだ!?」

「俺も覚醒したのさ、ついさっきな。多分、お前と共鳴覚醒したんだろうな」

「なんだと!? ガキがふざけやがって!!」

「終わりにしようぜ」

「舐めた口きいてんじゃんぇぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 地獄は両手を前に構える。

 佐馬も同じように構える。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 佐馬は両手に力を込めると、オレンジ色の炎が極太光線のように噴出される。


「ヒャッハアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 地獄の両手からも、同じように炎が噴出されるが、その色はドス黒かった。

 その2つの炎はぶつかり合い、佐馬は両足に力を込めて踏ん張る。


「くっ!」

「どうした!? 口ほどにもねぇな!!」


 佐馬の炎が押されている。

 認めたくはないが、地獄の方が強い炎を出せるようだ。


「いや……待てよ!?」


 佐馬は一瞬だけ片手の炎を止め、懐から小瓶を取り出した。

 小瓶を目の前に放り、その放った手も再び前に出し、炎を噴出させる。


 すると、小瓶が炎で燃え、中に入っていた屁……つまりはガスにより、佐馬の炎の威力は大幅にアップした。


「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? どういうことだ!?」

「簡単なことだ。お前がプレゼントしてくれた屁入りの小瓶で、攻撃力をアップさせただけだ」

「そ、そんなぁぁぁぁぁぁ!!」

「はああああああああああああああああああああっ!!」


 佐馬の炎が地獄の炎を押し切り、その衝撃で地獄は思い切り吹き飛び、壁に叩きつけられた。

 地獄はその衝撃で気を失ったようで、ぐったりとしている。


「終わったな」


 佐馬は全裸で気を失っている地獄を見つめると、どこか寂し気な表情で、つぶやいた。



 その後警察がやって来ると、地獄はわいせつ罪で逮捕された。

 パワハラ行為も他の社員からの告発でバレたようだ。


 パワハラとされる行為も、昔は日常的に行われていたらしい。

 しかし、今は犯罪行為であり、絶対に行ってはいけない行為だ。


「なぁ、今日一緒にゲームしないか? 狩りたいモンスターがいるんだ!」

「ゲーム?」


 仕事帰りのことである。

 同僚をゲームに誘った佐馬であったが、どこか困っていそうな表情を見て、少し考えた。


「いや、君にも予定はあるよな」

「悪いな」


 例えば、今は良しとされる行為でも、今後犯罪となる行為もあるかもしれない。

 佐馬は今回の件で、それを再認識したのだった。


【あとがき】

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上司に土下座をさせられ、好き放題言われた新入社員。パワハラ上司をざまぁする!~捕まりたくない? もう遅い!!!! お前は完全に包囲されている!~【短編】 琴珠 @kotodama22

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