希望

私の行く道にあるのは

一色の夢

それをいつか誰かが拾うかもしれない

ただ、このまま朽ち果ててしまうかもしれない

ああ

この灰色の秤の片側には

憂鬱の貨幣があり

もう一方には

悲しい糧があるのだろう

それをどうして僕は見ず知らずの誰かに告げたら良いのか


その流れには赤い恋の欠片が浮かんでいて

緩やかに僕の元にやってくる

けれど

僕にはそれを呼ぶ叫び声が足らなかったのだ

どうしても

どうしても

それを忘れられずに

毎夜

遠くで鳴る瑠璃色の鐘の音に目覚める


君は

今も生きて僕の行く手で自由をつかさどる

白い衣を無色の風にはためかせて

静かに微笑む

あの時

それが深い眠りの底から響く口笛にさえぎられなければ

僕には見えたのに


明日はきっと

僕を裏切りの崖に立たせるだろう

自分を追い立てた若い日の影を罵倒で包みながら

そして

高らかに笑うだろう

人生は徒労と快楽の都だと

その住人はみな漆黒のシルクハットを被り

雪のように白い絹の手袋をしている

僕は静かに逃亡を企て続けている

それは

いつか成功すると信じている


おお

僕の行く道は何もかもによって埋められていく

ため息の風が僕の周りで渦巻く時

気味の悪い美貌の神が

誘うのだ

欺瞞と惨めな慰めの言葉を歌い

窓辺で

僕はそれを聴きながら

最後の旅に出るための

空の色の背広を着て

希望と言う業火に向かって歩くだろう。

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