街の灯

流されて

破れて落ちたポスターを見ながら

今日の悪事を

数えた

顔を洗う酸性雨に口づけ

ポケットのコインを探り

うまく覚えられない番号を

ダイヤルした


ああ

この足は

求める女の浅黒い肌をみつけられない

地下の棲む

猥雑な器具を手に入れても

苛む夢が届かない

そして

この体は

ショートした光の密室の中で

行き場のない欲望を

柔らかな壁にこすりつけている


この唇には

赤いネオンが灯るだろう

このてのひらは

女の零した声で濡れている

ただ不安なのは

汗で光るお前の背中に描いた

おれの虹が

誰かに貪られることだけだ


呼び出しの音は続く

愛はビロードの衣装に抱きしめられて

白いお前の滑らかな腹を

滑るように撫でる

おれの手は

夕陽への生贄

窓に縛られたお前と恋人の

蛇のような戯れと嘔吐をまさぐる


夜風はおれとおれの鋼鉄色のコートを煽る

夢の速度を計る間だけ

狭く無限に凍りつく

街の灯と

おれの艶やかな欲望の徴は

だらしない抱擁と行為を

果てしなく繰り返す。                     

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