すべての愚かな恋のために

各駅停車が

去ってゆこうとしていた

背を向けることもしないで

さよならの声もきかないで涙も流さずに

だから

たった一人の長い旅に出たのだ


たとえ女たちが下らないささやきで

このからだをがんじがらめにしても

俺は自由だ

恋を捨ててしまったから

何を着ようと

どこで眠ろうと

笑って済ませられる

くわえタバコでかわいい子を口説いても

誰に文句が言えるものか


どこにいるのかは

俺が一番よく知っている

この胸の奥に

今もしっかり俺をつかんで放さない。

バカ野郎

ろくでなし

俺は笑ってきくだけだ

かわいいやつ

ああ、そんな女はここにはいないんだな


ぶらぶら街を歩いていても

もういない

あの時、

俺はなんで「さよなら」を

言えなかったのだろう。

それが

今はいちばん

この胸にこたえるんだ。

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