ロマンチストの専制 (堕天使のための拘束具)

それは凍りついたはずのバラの花びら。


俺は何を欲しかったのだろう

お前はここを出て行って

暗い街の明かりの下で

笑顔を売っているのか

俺の前で頼むから

その悲しい夢を語らないでくれ


影はお前と俺を包んで

それでも俺は信じていたんだ

愛するということを

棺おけまで連れて行けると

でも

それはもうだめなんだな

なにか言ってくれ

獣のままでじっと見つめてばかりいないで


きっとお前はもう帰ってこない

それでいいのだろう

そのまま死んでくれ

いつか俺はお前の墓を見つけて

叩き壊してやる

それが、それしか

おれにはできない。


ああ、こんなに冷たい夜ははじめてだ

どこにいようと

お前はあの時のことを忘れないんだろう

ドアの向うでお前が流した涙を

今でも俺はここで掬い続けているんだ

それからその壁に凍りついたお前の影を見つめつづけている

誰も知らない

本当の抱擁

誰のものでもない俺だけのバラだ


それは凍りついたいつまでも赤いバラよ

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