新しい傘
「まさかちゃんと帰ってくるとはねぇ。」
目を開けるとフクロウが全てを知り尽くしたような顔で笑っていた。
「あんた、私の話聞いてなかっただろう。飲む前に聞けと言ったのに。」
口調は強いが、これは心配してくれている。ふっと微笑むと体の緊張が抜けた。
「まあ、あんたはラッキーだったよ。あの世界では会いたい者がお互いに願わないと出会えないのさ。出会えた時、夜明けとともに帰って来れるんだよ。」
光の消えた、残りのコーンポタージュを口に流し込む。
「素敵な魔法をありがとう。また来るね、おばあさん。」
そう言うと、フクロウは驚いたように目を見張って、それからカッカッカッと笑った。
「今度からあんたみたいな招かれてない人は入れないよう魔法を強くしておくよ。」
店を出てからお代は、と叫ぶと何も返ってこなかった。ドアももう開かない。
コーンポタージュはほんのり温かかった。
細路地は、雨が降っていた。新しい傘を買いに行こう。悲痛な運命のもとに存在しているあの子が、自力で幸せを掴めるように、願った。
次の日、いつものランチの時間に細路地へ入ると、花が沢山咲いていた。もう、大丈夫だ。あの日降ってた雨も、花や木を育てるために必要で、晴ればかりじゃ未来へ続いていかない。全ては、きっと誰かが必要としていて、必要とされている。だからまず、自分が自分を必要としよう。
「いらっしゃい。」
私も、ありのままの自分を愛そう。
仮面食堂 @Sumomo13
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