第24話 オス猫との激しい縄張り争い
「さてと、じゃあそろそろ飯でも食いに行くか?」
「はい! 喜んで、お供させていただきます!」
ちょうど小腹が減ってきたこともあり、オレは喜び勇んでクロさんの後をついていった。
階段を駆け下りた後、道なりに歩いていくクロさんの後を追っていると、少し先に割と大き目な公園が見えてきた。
「いつもなら、もう来てる頃なんだけどな。あっ、いた、いた」
そう言うと、クロさんは公園に向かって駆け出していった。
「ちょっと待ってくださいよ!」
オレは懸命にクロさんの後を追い、公園の中に入ると、ベンチに座ったおばさんが、クロさんに食料を与えているのが見えた。
「ニャン吉、こっち来いよ」
「はい!」
クロさんに呼ばれるがまま、オレはそこに向かって駆け出した。
「今日は二匹で来たのかい。あんた後輩だからって遠慮せず、たくさん食べな」
『にゃん!』
オレはおばさんが与えてくれたチョール等のお菓子類にかぶりついた。
「あんた、凄い食欲だね。見たところ飼い猫のようだけど、あんたもしかして、飼い主からエサをもらってないのかい?」
『……にゃーん』
「どうやらそのようだね。ほんと、あんたの飼い主はどうしようもないやつだね。飼い猫にエサも与えないなんてさ」
『…………』
「そんなろくでなしに飼われてるなんて、あんたもかわいそうだね。どうだい? 今日からウチの子にならないかい?」
おばさんはオレを抱っこしようとして手を伸ばしてきたけど、オレはその手を全力で振り払った。
「いたっ! あんた、なんてことするんだい!」
『にゃん!』
おばさんは鬼のような顔でオレを足蹴にし、さらに攻撃を加えようとしたところ、クロさんがおばさんの前に立ちはだかった。
「なんだい、あんた私のジャマをする気かい。今までエサを与えてやった恩も忘れて、この恩知らずが!」
おばさんはそう言うと、そのまま自転車に乗って、オレたちの前から去っていった。
「お前、なんであんなことしたんだ?」
クロさんが睨みながら聞いてくる。
「おばさんが飼い主のことを悪く言ったのが許せなくて、つい……」
「そうか。やはりお前は、まだ前の家に未練があるようだな」
「いえ、そんなことはないんですけど……それより、大事な提供者を怒らせてしまって、すみません」
「あのおばさん、もうここには来ないだろうな。まあ仕方ない。とりあえず、明日からまた新たな提供者を探そう」
そう言うと、クロさんは公園の外に向かって歩き出した。
オレは重い足を引きずりながら、その後をついていった。
そのままずっとクロさんの後を追っていると、向こうからオス猫が一匹歩いてくるのが見えた。
「おい、お前こんなところで何をしてるんだ?」
すれ違いざまに、クロさんがドスの利いた声で凄む。すると、オス猫は怯むどころか、クロさんにいきなり殴りかかった。
多分、予測していなかったのだろう。クロさんはオス猫の攻撃をよけ切れず、パンチをまともに食らってしまった。
倒れ込んだクロさんに、オス猫は馬乗りになって更に攻撃を加える。
見る見る顔が腫れあがっていくクロさんを見て居たたまれなくなったオレは、オス猫の背後に回りパンチを食らわせた。
「いてっ! お前、何するんだよ!」
「もう勝負はついてるじゃないか。これ以上痛めつけても、しょうがないだろ」
「うるせえ! 俺のジャマをするやつはこうだ!」
そう言って、オス猫はオレにパンチを浴びせた。
その一撃で戦意喪失したオレは、その後ずっとオス猫の攻撃を無抵抗で受け続けた。
「おい、ニャン吉。しっかりしろ」
意識が
「……クロさん、オレあれからどうなったんですか?」
「オス猫の攻撃を受けて気を失ってたんだよ」
「そうですか。返り討ちに遭うなんて、まったく情けない話ですよね」
「そんなことはない。お前が助けに入らなかったら、俺は殴り殺されていたかもしれないからな」
「で、オス猫はどこに行ったんですか?」
「多分、食料でも探しに行ったんだろ。それより、俺はここから出て行かなければいけなくなった」
「えっ……それは縄張り争いに負けたからですか?」
「ああ。それが決まりだからな。明日の朝、ここを出て行くよ」
「じゃあ、オレも連れていってください」
「ダメだ。ケガをしてるお前を連れていくわけにはいかない。お前はもう飼い主のところに戻れ」
「クロさんだって、ケガしてるじゃないですか。そんな体でよその土地に行ったりしたら、またやられちゃいますよ」
「さっきはちょっと油断してたから、やられただけだ。油断さえしなければ、俺が負けることはない」
「また強がっちゃって。もう年なんですから、あまり無理しないでくださいよ」
「俺を年寄り扱いするな!」
クロさんは一喝すると、そのまま神社に向かって歩き出した。
オレは体の痛みを堪えながら、クロさんの後を追いかけていった。
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