歯歯恥

@atdgm

第1話

人々の顔の中にいる私は、日々の生活を共にする一つのパーツ、そう、わたしは「左下の奥歯」。わたしの住んでいる口の中は菌が沢山住んでいてすぐわたしを溶かしてくる。

朝を迎えると、周囲の環境が一変している。主は口を開けて寝ているのだろうか。わたしは乾く。すごい乾く。そこにおなじみのミントがスースーする歯磨き粉をのけた歯ブラシが優しく近づいてくる。その感触は、少し冷たくて心地よい。磨かれるたびに爽快な感覚が広がり、わたしの表面はツルツルに磨き上げられていく、はずなのだが、、、。わたしの口の主は歯磨きが下手だ。そして苦手だ。多分。毎日毎日少しずつ歯石が積もっていく。そしてとうとうわたしは虫歯菌の住まいと化したのだ。ああ、主はいつ歯医者に行くのだろう、歯磨き指導されてほしい。そう切実に願っていたある日、幸運にも、主は学校で歯科検診に引っかかった。まあ幸運というか必然というか、、苦笑

そしてついにわたしが歯医者を訪れる日がやってきた。彼は冷静にわたしを診察し、専門的な治療を施してくれた。痛みが少しずつ和らぎ、虫歯菌が取り除かれていくのを感じた。治療が進むにつれ、再び健康な状態へと回復していくのがわかる。これはまさに再生の瞬間であり、希望の光が差し込んできたようだった。とても眩しかった。あの明るさと温度は一生忘れないだろう。

治療を終え、健康な状態を取り戻したわたしは、再び安心して毎日の生活を楽しむことができるようになった。磨かれるたびに感じる爽快感や、食事の際の快適さは以前にも増して心地よい。わたしは日々の平穏な時間を大切にし、健康な状態を維持することがどれほど重要かを学んだ。そして、これからも大切にされる存在であり続けるために、心から感謝しているのだ。

わたし、「左下の奥歯」は、一つの歯としての役割を果たしながら、日々の生活の中でのドラマと挑戦を経験してきた。私の物語は一つの歯の視点から見た小さな冒険かもしれないが、これが私にとっての大切な旅だった。毎日を大切にし、健康であり続けることが何よりも大切だと実感した。これからも、口の中の平和を守り続けるために、全力を尽くすつもりである。

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