ネコのわたし

@argiu

ネコのわたし

高校2年生の彩花は、いつものように友達と学校から帰り、友達と途中で別れ、一人で家に向かっていた。この頃、家族が上手くいかず、両親の仲が悪化していた。家に自分の居場所がなく、1人で苦しんでいた。夕暮れの街は静かで、彼女は余計に自分の家族について重く考えていた。そんなとき、背後から突然車のクラクションが響き、振り返った瞬間、彩花は強烈な衝撃を受け、視界が真っ暗になった。

目を覚ますと、彩花の視界には見慣れたはずの町がとても巨大に映っていた。驚いて自分の体を見てみると、彼女の手は柔らかい毛で覆われた猫の前足になっていた。「私、猫になっちゃったの!?」混乱する彩花は、すぐに自分が猫に変わってしまったことを理解し、困惑した。

最初はどうしていいか分からなかった彩花だったが、猫として生活するようになった。木や高いところに簡単に登れるようになったり、狩りのやり方を覚えたりした。すると次第にその世界の魅力を感じるようになった。野良猫のグループと出会い、彼らから猫としてのルールや生き方を教わりながら、彩花は街の裏側を探検することに。猫だけが知る秘密の場所や、今まで知らなかった楽しい場所を発見していく中で、自分の悩みから解放され、彼女は猫の生活に魅了されていく。

ある日、彩花はクラスメートで親友の美咲が一人で泣いているのを見つける。彼女は、事故で彩花がいなくなったことを悲しんでいた。彩花はその美咲の姿に胸が痛くなり、人間時代を恋しく思った。猫の生活を充実させていたが、親友を悲しませてしまっていたことに気が付き、なんとか美咲を慰めたいと思った。言葉が使えない代わりに、猫の姿で美咲に寄り添い、彼女を慰めるために精一杯尻尾を振ったり、優しく擦り寄ったりした。美咲はもちろんその猫が彩花だとは気づかないが、その優しさに少しずつ心を開き、泣き止み、彩花にそっと寄り添った。彩花はその光景を見て、友達や人間関係の大切さを再認識し、猫の姿のままではいけないと感じた。そして、猫としての生活に楽しさを感じつつも、元の姿に戻る方法を見つけなければならないという焦りを感じるようになる。ある日、年寄りの猫から「自分の心の中の問題を解決し、自分と向き合うことで、元に戻れるかもしれない。」という助言を受ける。彩花は、猫になって、これまで避けてきた自分の悩みや問題に真剣に向き合うことを決意した。

彩花はついに今まで見ることを避けていた、両親を見るために自分の家に行くことにした。懐かしい自分の家に戻って窓からリビングを覗き見てみれば、不仲だった両親が2人とも揃ってソファに座っている。両親は何か話し合っており、彩花はその声に耳をすませた。母親が、「あの子がいなくなったのは私のせいだわ。」と言った。父親はそれに「それは違う。むしろ僕の方だ。」と言った。両親は自分がいなくなったことに本当に苦しみ、悲しんでくれていた。彩花は、猫としての生活を通して初めて両親が自分を見てくれていることを知り、安心することが出来た。そして自分の心に向き合い、何としてでも人間に戻らなければならない、両親、美咲に会って自分の素直な気持ちを伝えたいと思った。

ある夜、彩花が自分の家の前で両親を見守っていると、突然眩しい光に包まれ、気がつけば元の人間の姿に戻っていた。彩花は、驚いたが、すぐに自分の家のドアを開け、両親に元気な声で、「ただいま!」と言った。両親は突然帰ってきた自分にビックリしていたが、大粒の涙を流して喜んでくれた。両親の仲も良くなり、家族3人の明るい生活を取り戻した。その後美咲にも再会し、お互いの友情を深めることが出来た。

元の姿に戻った彩花は、普通の生活に戻ったように見えるが、心の中では確実に成長していた。彼女は自分がいなくなったことで自分の事を想ってくれる人がいること、そういう人たちの大切さ、気持ちを伝える素直さの重要性に気づくことが出来た。彼女はこれらの気持ちを胸に、今日も明るく生活している。

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