おしまい この関係性を家族と呼ぶらしい

 同日、食卓にて。

 俺は葉月と向かい合って夕飯を食べていた。

 テレビからアナウンサーの読み上げるニュース音声だけがリビングの空気を震わせる。

 いつもと変わらない無言の食卓を打ち破ったのは葉月だ。


「今日はありがと」

「……」


 ぼそりとした言葉に顔を上げると、ほんのりと頬を染めた葉月がこちらを向きつつも視線を明後日の方向に飛ばしていた。

 不覚にもかわいいと思った。


「こちらこそ看病ありがとう」

「……ん。どういたしまして」


 こくりと頷いた葉月は何事もなかったかのように夕飯を口に運び俺もそれにならう。

 食事を終えて、食器を洗うために葉月がシンクの前に立ち、コーヒーを煎れるために俺はその隣にぼんやりと立つ。

 葉月が油物とそれ以外を洗うために二つのスポンジを使い分け、自然乾燥棚にぬれた食器を並べていく。

 俺の口を言葉がついて出た。


「なんで看病してくれたんだ? 気まずかっただろ」


 きゅっと手を止めた葉月が振り向きぱちぱちと瞬く。

 そんなに見るな、恥ずかしいだろ……。

 早くも疑問を口にしたことを俺が後悔していると、葉月がうーんと悩み始めた。

 数秒後はたと気づいたように俺に視線を止めた葉月が言う。


「家族だから?」

「……ふーん」


 そのむず痒い答えへの返答が思いつかなくて適当に誤魔化すと葉月が水道を止めて身体ごと俺の方に向いた。


「慶太こそ何でクラス代表決めるとき私のこと助けてくれたの?」


 その疑問に数秒悩んだ俺は、思い浮かんだ答えを口にするか再度数秒悩んだ後に言った。


「……家族だから?」

「ふーん?」

「……なんだよ」

「べつに?」


 俺の回答に満足したのか、楽しげに再度食器を洗い始める葉月。

 まだ5月上旬とは言っても猛暑がすぐそこまで忍び寄ってきているのか、火照った顔を俺は手団扇で扇ぐ。

 どうやら俺と葉月の、知り合いでも友人でも親友でも、まして恋人でも夫婦でもないこの関係性を家族と呼ぶらしい。

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女子高生のきょうだいが唐突に出来たら当然起こること にょーん @hibachiirori

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