二人ぼっち二人ぐらし
染谷市太郎
ぼっちぽっちぱっちっち
六畳一間、シングルベッドが部屋面積の半分を占めるその部屋は、二人がようやく手に入れた自由だった。
すりガラスの窓から差し込む朝日で
重い体を持ち上げて、タイマーで止まってしまったクーラーをようやく再起動した。リモコンの時刻表示を見ると、まだ朝の6時にもなっていない。
普段なら寝ているが、朝日を遮るカーテンがないため健康的に目覚めてしまった。
「そうか、ようやく出れたのか」
佳太は見慣れない白い壁紙の天井に目を凝らした。実家の自室の、やたらと凝った模様の壁紙も、幼いころに親が勝手に貼った蓄光ステッカーもない。まっさらな賃貸物件の天井だ。
たった六畳一間のワンルーム。それだけだが手に入れるとこんなにもうれしいものか。
内見のときも楽しかったが、昨日自ら鍵を開けて入ったときは胸が高鳴った。誰も住んでいない、誰の痕跡もない、誰のものもおかれていない、家具も家電もカーテンも、これから全部自分で購入し自分で決めていい部屋であり、自分の家だ。
寝転がったまま、ぐるりと見渡す。本当に何もない。あるのは数本の飲みかけのペットボトルとお菓子の空き袋、そして寝れるためだけに持ち込んだマットレスだ。
しかし、六畳一間だからとシングルは狭すぎたか。佳太は自分の体の上に乗っかったものを起こさないようにひっぺがした。
「むぅ……」
若干眉間にしわを寄せ、それでも起きる気配はない。その、同居人の顔を佳太はじっとみつめた。
この部屋は二人でもぎりぎり住める。だから佳太はこの同居人、幼馴染の
カーテンのない窓をみやる。まだ朝は早い。
佳太は飲みかけのペットボトルを煽り、ぬるい味を噛み締める。
クーラーの冷えた空気が六畳一間の狭さによく行き届く。汗が冷えたのか、もぞもぞと掛け布団を探す真理のそばで佳太は再び横になった。
二人では狭いシングルのマットレスの上で、落ちないように抱き寄せる。かけ太などは持ち込んではいない。代わりにそばにいる佳太に、真理は安心してむずがるのをやめた。
佳太の胸板ですっぽり真理はおさまりよく安眠している。真理のまだ汗が乾ききっていない湿った髪に佳太は鼻をくすぐられた。よく知った匂いに佳太は瞼を落とした。
二人ぼっち二人ぐらし 染谷市太郎 @someyaititarou
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