第二十七話「宣戦布告」

 リーナからの宣戦布告から数日間、あたしはリーナの行動に警戒を怠らなかった。


 廊下ですれ違うものなら足をかけられても問題ないように躱せるように身構えたけどなんもなく、トイレに行こうものなら上から水をかぶせられると思って傘を持っていったけど杞憂で、教科書類がズタズタに引き裂かれてるどころかむしろ忘れた時は見せてもらい、訓練前の二人一組の柔軟ではぶられると思いきや一人あぶれそうなあたしと組んでくれて、授業の邪魔をされるかと思いきや分からないところを丁寧に教えてくれた。


 あたし達はズッ友。


「ってなんでやねん!!」


 授業終わり、リーナとメイリーが両隣で帰り支度をしている中、机を叩く勢いで立ち上がって叫んだ。

 

「いきなり何よ?」


「どうしたのサラちゃん?」


 あたしが突然声を上げたもんだから、メイリーは心配そうに、リーナは奇人を見るような目でこちらを見る。

 そんな視線なんぞ気にならないあたしはリーナを見返して続けた。


「あたしこの間喧嘩売られたよね!? なんか普通にクラスメイトやってない!?」


「何言ってんの? クラスメイトなんだから当たり前じゃない」


「いやそうなんだけど! あんな絶対排除してやるみたいな感じで言われたからてっきり陰湿な虐めでもされるのかと」


「はぁ? アンタ、ワタシに何されると思ってたわけ?」


「何って、取り巻きと一緒にあたしを周囲の笑いものにして『貴女には惨めな姿がお似合いですってよ、オーホッホッホ!』みたいな感じになるのかと」


「アンタの中のワタシのイメージってそんな感じなの?」


 リーナが不服そうにしている中、事情は分かっていないメイリーがフォローに入る。


「サラちゃん、リーナちゃんと何があったか分からないけど、リーナちゃんは人を虐めるような人じゃないよ?」


「虐めるどころか何度か助けてもらってるし。じゃあ結局、リーナはあたしをどうしたいわけ? このままだと気が気でないんだけど」


「どうしたいって、何度も言ってるじゃない。アリシア姉様の隣を取り返して見せるって。それは別にアンタをどうこうするんじゃなくて、真正面から正々堂々と実力で奪って見せるってだけよ」


 めっちゃ真面目じゃん。


「はぁ~この数日間何されるんだろうってヒヤヒヤしてたのに。……なんか疲れた」


 あたしは身体の力が抜けて机に突っ伏す。

 メイリーが優しく背中をさすってくれた。天使だ。


「大丈夫? 事情は分からないけど仲良くね?」


「今この瞬間から仲良く出来そうだから安心してメイリー。あ、そうだ。今日委員会オフなんだけど、帰り三人でどっか寄って行かない? あたし学園内の商店施設行ったことないから行ってみたくて」


「いいねー。リーナちゃんはどう?」


「ワタシ? 別にいいけど……」


 普通に三人で放課後遊んで帰りました。めでたしめでたし。



 と、思ったんだけど――――。


「サラ! 勝負よ! アリシア姉様の隣に相応しいのはどちらか証明してあげる!!」


 とあるイベントのおかげで、屋上で受けたような宣戦布告を再度叩きつけられた――――。

 

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婚約破棄されたあたしを助けてくれたのは白馬に乗ったお姫様でした 万千澗 @3870

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