泣いた朝陽がもう笑う⑤
そのまま半日ほど
穂を結ぶ前の
「やはり、水操術で水を流しているのですね」
しかし、
ちょうど真上に差し掛かったところで、
「「よーし、着いた着いた!」」
「だいじょうぶ? また、頭痛い?」
「僕らを撫でないからそうなるんだ」
「馬鹿を言わないでください。……ただの疲れです、お気になさらずに」
微笑みを浮かべて告げて、
(……けれど)
ここに育つ
「これはこれは、
振り向くと、穏やかな顔立ちの男性がひとり歩いてくる。白髪混じりの長髪を低い位置で結って、
「やっほー、
「元気してたー?」
「はい、おかげさまで。芳しい報告がなかなかできず、歯痒くはあるのですが」
「しょーがないしょーがない!」
「じっくりゆっくり根気よくー! 仕事とは百年かかるもの!」
「ははは、貴方たちの感覚で働くと、あっというまに寿命が来てしまいますね」
男性は苦笑ののち、歳華を見やる。
「はじめまして、私は
「ええと、私は泰青国の……」
そこまで口にしたところで、名乗っていいものかためらった。辰星の単身での侵攻が、この国でどう伝わっているか、分からなかったからだ。しかし、歳華の気遣いなど素知らぬ風で、
「ふふふん、聞いて驚け、見て笑うのだ」
「このかたはなんと、泰青国の神獣、
「はい? いま、なんと?」
長い耳をぴんと伸ばした
「聞こえないふりしないで!
「ちょっと前に、玄龍君がこのへんを通っていったでしょ? そのとき連れててきたの」
「それは……なんと……」
「はじめまして、名は歳華と申します。
「あっ、この捕虜、大きく出たぞ! 僕らと同列を望むとは何事か!」
「
「な、なるほど……肝に銘じます」
「
「はい。
「それは素晴らしい」
「めっそうもない。私のことなどより
「え、ええと……それはですね、その、なんというか」
あまりの情けなさに、視線が地面に行く。
「本来ならば、指さきひとつで森や草原を生み出せるのが、私の力です。しかしいまは、玄龍君から、力を使うなと厳命されておりまして……助言程度が精一杯です」
「……そうですか。むしろ、ありがたいぐらいです」
「え? ありがたい?」
落胆される覚悟で言えば、思いがけず晴れやかな声が返って、ぽかんとする。見上げたさきの
「神獣様からご助言いただけるとは、またとない機会。みな、大層喜びますよ」
「そう……ですか?」
ありがたがられるほどのこととは到底思えず、なんだか狐につままれたような気持ちで、
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