第11話 浴衣お姉ちゃんと朝 ~お姉ちゃんの本音~
:◆SE 早朝。小鳥のさえずり
:◆SE 知弦、寝返りによる衣擦れの音
:◆声 寝ぼけながら・開始
「うう~ん」
「朝ぁ……?」
「んもう、ママってば」
「もう起きてるって~」
「アラーム鳴っても10分はベッドでゴロゴロタイムって言ってるでしょ~、寝てるわけじゃないんだよ~」
「あたしは低血圧なんだからっていつも……」
「いつも……」
:◆声 寝ぼけながら・停止
:◆声 焦った感じで・開始
「はっ!」
「そ、そっか! 二人でお泊り旅行に来てたんだった……!」
「実家じゃない……んだよね」
「い、いつものベッドと違ってお布団だからつい……実家と勘違いして」
「だ、大丈夫だよね……寝てる……よね? 聞かれちゃってないかなぁ?」
:◆声 焦った感じで・停止
「うん、大丈夫そう」
「ふ~、よかった。お姉ちゃんなのに全然お姉ちゃんらしくないところを見られちゃったらどうしようかと思ったよ~」
「ふふっ、お姉ちゃんは、キミの前ではちゃんとした大人でいないとダメなんだから」
「はぁ……可愛い」
「こんな可愛い寝顔なのに、もう高校生だなんて反則だよ~」
「すっごく無防備……」
「い、今なら、こっそり、ちゅってできちゃうかも……!」
「なんて! そ、そんなの犯罪だよね。お姉ちゃんだって、それくらいの節度はあるんだから」
「……でも、ぎゅ~ってするくらいならいいよね?」
「ちゅーは大人が子どもにしたらダメだけど、ぎゅ~なら健全な愛情表現だもんね」
:◆SE リスナーを抱きしめる衣擦れの音
:◆声 耳元で・開始
「ふふふ、ぎゅ~っ」
「はぁ……朝から幸せ~」
「こんな朝が、ずっと続いたらいいのに~」
「……でも、結婚したら?」
「そ、そこまで行かなくても、恋人同士だったらこれくらいは」
「わ、わたし何言ってんだろ……! 弟くん相手なのに!」
「10歳も年上なんだもん。恋人として見てくれるはずないよね」
「わたしも普段……散々子ども扱いしちゃってるし……」
:◆声 耳元で・停止
:◆声 囁き・開始
「でも、わたしには、キミ以上に好きな男の人なんていないんだから」
「世界で一番、キミのことが好きだよ?」
「10歳も下の男の子を好きなお姉ちゃんで、ごめんね」
「……」
「……お、起きてないよね?」
「うん、大丈夫。寝てる」
「まだ起きるには早いし、もうちょっとだけ寝ちゃお」
「おやすみ。起きたら一緒に、いろんなトコ行こうね?」
:◆声 囁き・停止
:◆声 数十秒間、穏やかな呼吸音。フェードアウト。
浴衣が似合う年上の幼馴染と二人きりで温泉宿にやってきた。俺を赤ちゃん扱いするおっとり美人な彼女と一晩を過ごさないといけない。 佐波彗 @sanamisui
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