第3話 新たな生活
外は明るくなり、夜が明けたようだ。
部屋に居ても退屈なので、職員室へ向かった。
(おかしいな…)
この学園の校舎は造りが複雑で、俺は今迷子になっているようだ。
立ち止まっていると、足音が聞こえてくる。
「見ない顔だな!例の新入りか!」
力強い声が聞こえ、その方向を見ると威圧感のある筋骨隆々な大男が立っていた。
身長は2メートルはあるだろう。
俺は迷子になっている事を話した。
「ガハハハッ!迷子か!」
「間に合います?」
「もちろん!余裕で間に合うぞ!」
案内してもらい、いい感じの時間に職員室に着いた。
中は広く、中心に大きな円卓がある。
既に他の教師は円卓を囲うように座っていた。
「新入り!遅くなったが、自己紹介だな!俺はガリアだ!よろしくな!」
ガリアはそう言うと、空いている席に座った。
「僕はサハト、一応教員の取りまとめをしているね。君のことを学園長から聞かされているから、自己紹介は必要ないよ」
「次は私だな、サイロンだ。剣術を担当している。機会があれば手合わせ願えるかな?」
「あたしの番だな?あたしはエルダ、魔法の事なら何でも相談してくれ!」
それから、何人かの自己紹介が終わり。
俺が席に着くと会議が始まった。
「オアシスには申し訳ないのだか…今日の始業式で君は、とある生徒と決闘をする事になってしまってね」
「決闘ですか……ハンデはどの程度ですか?」
「その場から一歩も動かないと言われたな。戦う事は余裕だろうが、その生徒は隣国の王子で、圧力が凄くて面倒なんだよ」
サハトは疲れた様子で俺に伝えた。
会議が終わり、闘技場に向かうことになったので、俺は向かった。
闘技場に入ると、大量の生徒で賑わっている。
どうやら生徒が司会もしているようだ。
中央で待っていると、例の生徒が見えてきた。
「ついに来たようです!教師すら倒して最強となる男!アイズ・ギルバート!」
彼は歓声と共に俺に向かって歩いてきている。
「ルールは簡単!どちらかが戦闘不能になるかで勝敗をつける、ただそれだけです!それと、教師側には一歩も動かないと言うハンデが与えられています!……それでは、試合開始!」
アイズは、余裕な様子で剣を構え、炎を纏う。
俺は斧を使うか迷ったが、素手で戦うことにした。
「高貴な私と戦えることを光栄に思え」
彼は、傲慢な態度で俺に言った。
「純粋なる炎よ、敵を焼き尽くせ!フレイム!」
彼が詠唱を終えると左右から炎の柱を俺に向けて放った。
それと同時に、彼は距離を詰めて纏った炎で視界を塞ぎ、俺を剣で斬る。
「なんだ…?何が起こっている?」
彼の態度が俺は気に入らなかったので、まるで戦っているような幻覚を見せた。
最初から彼はただ剣を構えて立っているだけだったのだ。
会場からは、笑いを堪える様子や混乱する様子が見える。
面倒になってきたので終わらせることにした。
「くそっ!この私を笑い物にするなんて!」
「君の前に立って居るのは教師ではない。暗く深い闇だ。逃げ場は無く、君は飲み込まれてしまうだろう」
「いきなり何を…ひぇっ、誰か助け……」
彼はあまりの恐怖によって気絶した。
会場は、なぜか大盛り上がりだった。
それから数日経ち、俺は学園長に呼び出されていた。
「あなたに残念なお知らせがあるわ。ギルバート帝国から手紙が届いてね、あなたが帝国に来なければ、国際問題にするそうよ。きっとアイズくんが言いつけたのね」
「授業は、どうなるんだ?」
「問題が解決するで延期に決まってるじゃない!」
「そうか…じゃあ早いうちに行く事にするよ」
俺はそう言って、扉を帝国と繋げた。
帝国には昔行った事があったので時間がかからずに着くことが出来た。
街は、栄えていて中心に黒い王城がある。
城へ向かって歩いていると、見覚えのある人を見つけた。
「シャルロスか?」
「ん?オアシスじゃないか!まさか生きて会えるとは!」
「お前だってちょうど100くらいだろ?死んでるか、ボケたジジイになってると思ったんだが、ジジイにしては若く見えるな!」
「はははっ!ところでオアシスは、この国に遊びにでも来たのか?」
「お前の息子に呼び出されたから来たんだよ。俺は今ポラリスの学園で働いているんだが、お前の孫に決闘を挑まれて返り討ちにしたら、こうなったってわけさ」
「それは失礼なことをしたな。俺がなんとかしてやるよ」
彼は、呆れた様子で俺に言った。
思い出話をしながら俺たちは城に向かった。
彼のおかげで、王の間まで簡単に行くことが出来た。
なんだか彼からは怒りのオーラが出ているような気がする。
「アズノール!」
シャルロスは王の名を叫び、勢いよく扉を開けた。
王の間は、混乱が起きていた。
「父上!?な、なぜその者と一緒にいるのですか?」
「そんな事はどうでも良い、お前はこの者を呼び出して何をする気だった?」
「少し罰を与えようと…」
「お前の性根を叩き直す必要があるな」
シャルロスによる説教は数時間続き、王は魂が抜けたようになっていた。
「時間を取らせて悪かったな、魔術で送ってやるよ」
彼はそう言い、空間魔術で学園と繋げた。
魔術や魔法は便利だと思ってしまって少し悔しい。
学園に着き、俺たちは一度手合わせする事にした。
「オアシス、身体鈍ってないだろうな」
「残念ながら少し鈍っているかな」
俺は、リングを大斧に変化させた。
「強大な稲妻よ、この身に宿れ、ライトニングブースト」
彼は、魔術を使い周囲を高速で移動しながら様子を見ている。
俺は、
彼の肉体が反応できない速さで攻撃をすると、大斧が逸れて擦りもしなかった。
彼の左目には赤く光る方陣が浮かんでいる。
「俺の負けだ、悪いイメージしか湧かなくなった。やっぱり甘くなったなぁ」
「勝った褒美として、一つ頼みを聞いてくれないか?」
「もちろんだ、何でも言っていいぞ」
彼は真剣な顔で俺に言った。
「ギルバート家は、魔眼が邪魔をして
「あいつは、子供の頃のお前にそっくりだからな、扱いは簡単さ」
「さすがオアシス、頼もしいな」
「良い機会だ、助言をしてやろう。人の子である限り限界はある、負けて死ぬ時には爪痕を残せ」
「なんだか、らしくないな」
俺たちはしばらく雑談を続けて、シャルロスは帝国へ帰った。
また一日が終わってしまう。
明日こそ、教師生活が始まるだろう。
最強の神になったが、退屈なので下界で無双します。 イナイ @inai_dokonimo
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