第2話 リア充の記憶力
それぞれの教室に着き、亮に「また」と一言交わして教室の扉を開く。
1年生時の教室とは少しばかりロッカーやその他小物のレイアウトの違う教室が、目の前の女子生徒の後ろに広がっていた。
「カオルおひおはー!」
端正な顔立ちと腰まで伸ばされたゆるふわブロンドヘアが印象的で、天真爛漫という言葉がそのまま彼女を表すにふさわしいであろう美少女が意味不明な言葉と共に俺を呼ぶ。
「全然お久しぶりじゃないけど美紀もおはよう」
俺の言葉にニコッと笑いそのまま横に並んだ彼女の名前は紀田 美紀(きだ みき)といい、先に述べた容姿やその周りの人まで幸せにするような雰囲気から校内でも憧れる男子生徒が多いそうだ。
「3日も会ってなかったじゃん!」
「たった3日じゃんかw」
そんな会話をしながら座席表が貼ってある黒板まで歩みを進める。
「カオルが前にいたからいいけど、また私、前から2席目なんだよねー」
次の席替えまでの運命を握る座席表を見るべく一呼吸おいていたら、横からとんだネタバレをくらってしまった。
何となく予想はついてたが、ドキドキくらいはしたかったな……
内心がっくしと肩を落としたが、隣りある満面の笑みを見たらなんかどうでもよくなってしまう。
「まあ、次の席替えまでだからお互い我慢だな」
「カオルと近くだし、私はずっとこのままでいいのに……」
なにかゴニョゴニョと言っている美紀には触れず、もう一度座席表に目をやると見知らぬ名前があることに気付く。
瀬戸崎 由姫(せとざき ゆき)って子なんていたか?
記憶力には自信もあるし、誰とでもスムーズに会話ができるようにと昨年の今頃に頑張って同級生160人の顔と名前くらいは一致させたはずなんだが……
瀬戸崎さんの名が示されている席には、もうすぐチャイムが鳴るというのに誰もまだ来ている様子がない。
うーんと考えているうちに始業チャイムが鳴り響く。
「カオル行こ!」
いつの間にか通常運転に戻った美紀に呼ばれ、後でわかる事だしいいかと思考を放棄した俺は、美紀に返事をしてすぐ目の前の自分の席に戻るのだった。
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僕のリア充計画が破綻しそうになっている話 @ashinaga
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